11月15日 国際報道2018
経済成長進む南米ペルー。
一方で格差が広がり貧困層と富裕層の分断が進んでいる。
その貧困層から根強い支持を集めるのが
フジモリ元大統領と最大政党の党首である長女のケイコ氏などフジモリファミリーである。
これに対し中間層や富裕層を中心に支持を集める政権側は攻勢に出ている。
ペルーで今も大きな力を持っていると言われるフジモリ元大統領を中心とするフジモリファミリー。
アルベルト・フジモリ元大統領の子どもたちも有力な政治家へと成長している。
長女のケイコ氏は
これまで2度大統領選挙に立候補し
格差の是正を訴え貧困層を中心に支持を得た。
今も最大政党の党首で次期大統領の有力候補となっている。
次男のケンジ氏も前回の選挙で議員最多の得票で当選。
ペルーでいま最も人気のある政治家と言われている。
一方 現職のビスカラ大統領。
景気の回復や雇用の改善など経済政策を積極的に打ち出し
富裕層や知識層から支持を得ている。
ビスカラ大統領は定数130のペルー議会で10議席ほどの少数派の政党に属していて
議会で61議席を占めるケイコ氏の政党に圧倒されている。
現政権にとってはフジモリファミリーはいわば“目の上のたんこぶ”のような存在である。
首都リマの貧困層が多く住む地域。
トタン屋根の家が密集し電気や水道も十分に整備されていない。
この地区を取り囲むように築かれた全長10㎞の壁。
隣接する富裕層の住民が貧しい人が入り込むのを防ぐために作ったのである。
社会から隔絶され貧困に苦しむ人たち。
彼らの多くがフジモリ元大統領の再来を望んでいる。
その理由はフジモリ元大統領が力を注いだ貧困層の救済にある。
その政策を象徴するのが首都リマの郊外にある町
その名も「アルベルト・フジモリ」である。
20年前にフジモリ元大統領が支援して作られた。
町には長女のケイコ氏が父親の支持者を集めて起ち上げた政党の旗が掲げられている。
フジモリ氏は貧困層の生活改善のため
都市と地方の間にインフラを整備。
何も無かった砂漠に建設されたこの町はいまでは人口3万の町に成長している。
バラックのような建物に家族と共に暮らしていた女性はこの町の誕生とともに移り住んだ。
「フジモリ氏にはとても感謝しています。」
フジモリ氏の政策がなければ路頭に迷っていたという。
これからのこの町でフジモリ氏を支持し続けるという。
「人格者であるフジモリ氏なら
私たちのような貧しい人たちも救ってくれると確信しました。
だからずっと支持してきたし
今は彼の子どもたちも応援しています。」
貧困層の人々は長女のケイコ・フジモリ氏などフジモリファミリーにも期待を寄せている。
定数130のペルー議会での最大勢力は61議席を占めるケイコ氏の政党。
ビスカラ大統領が所属する政党を圧倒している。
しかしいまペルーの政治に変化が生じ始めている。
都市部など一部の地域や知事や市長の選挙で富裕層が支持する候補が当選するなど
政権側が勢いを増しつつある。
その要因の1つが経済成長である。
海外からの投資を積極的に呼び込み
2018年の経済成長率は10%近くに達するという見方もある。
政権側はこのタイミングを絶好のチャンスととらえ攻勢に出ている。
10月 大手ゼネコンから違法な金を受け取ったとして逮捕されたケイコ氏。
裁判所はケイコ氏が海外に逃亡する恐れがあるとし
3年間拘束することを認めた。
裁判が行われている建物の前では
フジモリファミリーを支持する市民と反発する市民と衝突が起き混乱が拡大。
深刻な対立によって国民の分断が広がっている。
「こんなの茶番だ。
反フジモリ派の仕業だ。」
「フジモリファミリーは犯罪者集団だ。」
10月にペルーで行われた統一地方選挙でケイコ氏の政党は思うように指示を伸ばせなかった。
ケイコ氏の政党はこれまで知事や市長のポストをほぼ独占してきたが
経済が好調な都市部を中心に多くの候補が落選した。
ケイコ氏の捜査を進める検察官のなかには
父親のアルベルト・フジモリ氏が大統領だった時代に
テロリストだとして弾圧された学生運動の元メンバーも多数含まれていると言われ
父親への恨みをいわば“娘で返している”という見方もある。
今後フジモリファミリーを支持する貧困層と
現政権側の富裕層・知識層との分断は一層深まりそうである。
政権側はケイコ氏に狙いを定めて捜査を継続する構えで
3年後の大統領選挙に立候補できるかどうかは微妙な情勢である。
そこでいま注目されているのがケイコ氏の弟のケンジ氏である。
地元メディアの多くは
ケイコ氏が厳しい状況に置かれている今
次にフジモリファミリーを率いていくのはケンジ氏になるとみている。
追い詰められるフジモリファミリーだが
支持者である貧困層の結束はむしろ強まっているようにも感じる。
ペルーの政治的な対立が終息するかどうかは
フジモリファミリーが引き続きカギを握ることになりそうである。