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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

コンテイジョン

2011-12-19 21:29:55 | 映画(か)

評価点:64点/2011年/アメリカ/105分

監督:スティーブン・ソダーバーグ

キャストとシチュエーションだけで見に行くとたまげるかも。

感染発生から二日目、香港から帰ってきたベス(グウィネス・パルトロー)は、突然自宅で卒倒する。
夫のミッチ・エンホフ(マット・デイモン)は救急車で病院に搬送する。
治療の甲斐もむなしく妻はあっけなく死んでしまう。
さらに自宅から連絡があり、幼い息子もまたベッドで変死していた。
同じ時期、香港とシカゴでも同様の事例が発生する。
WHO世界保健機構はこの発生が新種のウィルスによるものだと断定、深刻な事態であると認識する。
ワクチンも血清もなにもない新種のウィルスは世界を瞬く間に覆っていく。

豪華俳優陣で固めた「オーシャンズ・イレブン」のソダーバーグ監督が撮ったパニックサスペンス。
ゾンビ映画やディザスター映画のようにフィクション性がつよいものではない。
本気でシミュレーションしているところに、この映画のすごさがある。

キャストの豪華さよりも、物語にひきこまれるシナリオを楽しむ映画である。

同時期に公開していた「マネーボール」とこちらで迷った挙句、キャスティングのすごさでこちらを見ることにした。
例によって「M4」会である。

▼以下はネタバレあり▼

映画のラストで「この物語はフィクションです」というテロップがうざったいほど、リアルな映画である。
映画的な、物語的なシナリオの「歪曲」はほとんどない、と思わせる脚本である。
もちろん、それすらも映画的だが、観ているものはこれがよくできたシュミレーションであることは気付いたはずだ。

パンフレットにもあったが、徹底的な取材と分析がなければ、ここまでリアルなシュミレーションは建てられなかっただろう。
ディザスター映画が大好きなアメリカにあって、これほどまで社会的なあるいは科学的な面からアプローチした作品は珍しい。
よって、この映画をお涙頂戴、ドラマチックな物語だと思って映画館に向かった人は、ちょっと期待はずれ、面を食らったかもしれない。

全体的なバランスがとれている映画という印象を受ける。
徹底したシュミレーションであるものの、おもしろい。
物語にのめりこむことができるほど、計算されている。
出てくるキャストが有名どころではあるものの、そして群像劇であるものの、一人一人のキャラクターが立っている。
だからこそ、この映画が「科学を題材にしながら人間味に溢れる」と感じることになる。
この映画の成功はとにもかくにも、キャラクター造形である。

「DAY2」から始まる映画はいきなり人間関係の複雑さを露呈する。
不倫するベス、妻を懸命に見守るミッチ、不倫相手も卒倒し、政府各機関がめまぐるしく動く。
けれども、そこにある人間性が一切ぶれない。
リアルなシュミレーションに、リアルな人間模様が合わさり、説得力が生まれている。

人間くさいジュウド・ロウのフリー記者(役名:アラン・クラムウィード)の動きも秀逸だ。
「リンギョウが効く」のだとウソのふれこみをブログにまわし、人々はマス・メディアよりも信じ込んでしまう。
こういうときに頼りになるのは、インターネットか、権威にまみれたマスメディアか。
科学者たちの悪戦苦闘を知っている観客は「なにをバカなことを信じているのだ」と冷静に見つめることができる。
この爆発的な感染は、ウィルス感染そのものよりも、情報の感染のほうが恐ろしいと教えてくれる。
だが、果たしてそれをどちらが正しいかと見抜くことが僕たちに可能かどうか。
疑わしい限りだ。

科学的な数値もリアルだった。
こういう映画で出てくるウィルスは致死率が90%を超えるものばかりだ。
けれども、この映画ではせいぜい30%程度。
その数字は90%よりも格段に低いはずなのに、パニックに陥ってしまう。
かかれば三割が死ぬウィルスは、僕たち素人にしてみれば「確実に死ぬ」に等しいのだということを改めて実感させる。

社会が麻痺し、交通や流通も麻痺する。
咳をすれば不安になり、食料が町から消える。
死体袋が足りなくなり、死者や感染者数の正確な数を割り出すこともできない。
その一方で、命がけでウィルスに立ち向かう人間たちがいる。
政府要人はどこに逃げたかも分からない隔離施設で守られ、悪知恵が働く者が荒稼ぎをする。

だが、それで人類が絶滅しないところもまたリアルだ。
スペイン風邪だって、人口を激減させても、ウィルスで人口が絶滅することはありえない。
(宿主を絶滅させるウィルスがいたら、自己矛盾に陥る)
間違えて核ミサイルを撃つほうがよほど絶滅するだろう。
佐々木中ではないけれども、人類はそんなにヤワではない。

「物語」はそれでもフィクション性を保つ為に、収束していく。
その収束点が「DAY1」である。
僕はその点が不満だ。
途上国(なのかどうなのかは議論が必要かな)の開発によるコウモリとブタの邂逅が、ウィルスの発祥だとされる。
この描き方だと、大企業=悪、科学者=善という、極めて「リアル」で安直な構図が出来上がる。
アメリカが大好きな構図だけに、安直でないだろうか。
それもリアルで、ありがちな真相だけれども、ここまでリアルに描きつくした挙句、企業にその原因を落ち着かせるのは、ちょっと無責任な気がする。

監督がソダーバーグなので、それも意図したことかもしれない。

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2 コメント

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はじめまして。 (aj)
2011-12-27 15:55:42
はじめまして!
記事に関係のないコメントで恐縮です。
もし宜しければ相互リンクして頂けますと幸いです。

突然の申請で申し訳ございませんが、是非ご検討下さい。
当方、主に映画やアニメブログになります。

タイトル
【ジャンル別映画・時々深夜アニメ】30歳A型独男の「今日はな~に観よっかなぁ~」

URL
http://ajfour.blog.fc2.com/

宜しくお願い申し上げます。
返信する
完全に自堕落な年末年始。 (menfith)
2012-01-01 22:46:08
管理人のmenfithです。
昨年祖母を亡くしたこともあり、今年は喪中です。
だから年賀状を出すこともせず、一年間の忙しない状況からの反動で完全に自堕落な日々を過ごしております。
この50時間くらいは一歩も外に出ませんでした。
頭が腐りそうです。いや、腐っています。
やっていることはただ二つ。
DSの「メタルマックス2リローデッド」と、小説「ドラゴン・タトゥーの女」を読んでいること。
映画の批評も止まったままでした。とほほ。

そろそろ仕事も再会させないと、年始偉いことになってしまう。
昨年のまとめは、また後日に行いましょう。

>ajさん
書き込みありがとうございます。
相互リンクの件、承知しました。

近日中にアップします。
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