評価点:63点/2016年/アメリカ/122分
監督:ジャスティン・リン
そうじゃない。そういうことじゃないんだ。
U.S.S.エンタープライズ号のキャプテン、カーク船長(クリス・パイン)は長い探索期間で疲れていた。
自分に自信をなくし、船を下りて基地の副提督のポストを立候補していた。
その基地、ヨークタウンにエンタープライズ号が到着したとき、後から所属不明の船が不時着する。
どうやらちかくの星雲に不時着して仲間の到着を待っているという。
装備が充実しているカーク船長が救出を申し出て、一行はその星雲に向かうことにする。
しかし、そこで待ち受けていたのは……。
新スター・トレックの第三弾である。
J・Jエイブラムスが制作指揮し、その評判が上々のシリーズだ。
前作で禁じ手とも言える、ベネディクト・カンバーバッチを出してその次なので、期待が嫌でも高まるというものだ。
その一方で、やりたくもなさそうな(?)「スター・ウォーズ」のEP7を手がけることになり、引っ張りだこのエイブラムスが、どれだけこの作品に時間を割けたのかが疑問だ。
これも見にいきたかった作品の一つだったが、けっきょくAmazonでの鑑賞になった。
▼以下はネタバレあり▼
新シリーズのスター・トレック以前の作品群はまったく見たことがないので、シリーズへの思い入れはない。
この新シリーズになって、話題になっていたことから見始めた。
だから新しいファンの感想だと思って読んでいただきたい。
物語の切り取り型が上手い。
それがこの新シリーズが人気を博している理由だと思う。
あまりにも壮大な世界観で、しかも人気シリーズ。
どのようなストーリーでも、描けるようで、実は制約が大きい。
その中で、新しいファンでも古いファンでも楽しませるには、物語の切り取り型にかかっている。
そして、その意味で今作は失敗している。
長い探索の度によってカークは疲れている。
クルーを信用はしているが、何をすべきなのか使命感をもてなくなっている。
そこに、難破船の救出という依頼が来る。
しかし待ち受けていたのは難破船ではなく、バリアも貫通する戦闘機の群れだった。
細かい話はよそう。
カークは事件を解決することで、再び使命感をもち、探索に意欲をわかせるという結構だ。
だが、なぜ解決したのかいまいちよく分からない。
あるいは、そもそもの課題がどういうものだったのか、いまいち見えてこない。
課題の見せ方も、解決のしかたも、今回はまずかったように思う。
そして、何より、解決につながる「敵」の思考が弱すぎる。
むしろ、カーク自身が気づかない課題であっても、敵がそれをあぶり出してくれるような構造が望ましい。
けれども、今作はそれがない。
敵の設定は非常に面白いものの、彼の怒り、悲哀、無念さがちっとも伝わらないのだ。
敵の親分となるクラール(イドリス・エルバ)は、もともと探索船のU.S.Sフランクリンの乗組員だった。
連邦に見捨てられたと感じた彼は、もともとこの惑星にあった技術で異星人たちのエネルギーを奪い、生きながらえていたのだ。
そして、その反撃として古代兵器を蘇らせ、惑星基地のヨークタウンへテロを起こそうとしていたのだった。
このキャラクター自体はとてもよい素材なのに、それを生かし切れていない。
もっと彼に語らせてよかったし、それをもっとカークが否定すれば良かった。
そのカークの語りが、そのままカーク自身の答えになったはずだからだ。
だが、彼がヨークタウンへの攻撃を考えた動機も、悲哀も、弱すぎる。
クルーを信じていたはずの彼が、そのまま「戦争のあった時代を取り戻す」という理論に至るにはちょっと飛躍がある。
クラールが何を大事に、何を棄てようとしていたのかをもっと知りたかった。
だから物語としてのまとまりが弱く、とにかく見せ場が連続するだけの、映像だけの映画になってしまった。
宇宙を旅するという夢が見られなかった。
物語に起因するところが大きいが、その見せ場もカタルシスを得がたい。
物語の見せ場になるのが、大きすぎるCGによる闘いか、もしくは遅すぎる肉弾戦しかないからだ。
だから究極的な窮地に陥り、エンタープライズ号がすっかり破壊されているのに、はらはらドキドキは足りないし、緊迫感がない。
マクロとミクロの闘いしかなければ、どうしても感情移入しにくくなる。
CGの映像美だけで、映画が完成するほど今の観客や視聴者はあまくない。
私としては、エンタープライズ号がこうもあっさり壊されて、そしてまた作り直されることもちょっとがっかりだ。
もっとも大切な家であるはずの船を、簡単に作り直してほしくはない。
(「ワンピース」の船でももうちょっと扱いがいいだろうに)
やっぱり「スター・ウォーズ」なんか作らないで、こちらに専念した方がいい気がしますけどね。
監督:ジャスティン・リン
そうじゃない。そういうことじゃないんだ。
U.S.S.エンタープライズ号のキャプテン、カーク船長(クリス・パイン)は長い探索期間で疲れていた。
自分に自信をなくし、船を下りて基地の副提督のポストを立候補していた。
その基地、ヨークタウンにエンタープライズ号が到着したとき、後から所属不明の船が不時着する。
どうやらちかくの星雲に不時着して仲間の到着を待っているという。
装備が充実しているカーク船長が救出を申し出て、一行はその星雲に向かうことにする。
しかし、そこで待ち受けていたのは……。
新スター・トレックの第三弾である。
J・Jエイブラムスが制作指揮し、その評判が上々のシリーズだ。
前作で禁じ手とも言える、ベネディクト・カンバーバッチを出してその次なので、期待が嫌でも高まるというものだ。
その一方で、やりたくもなさそうな(?)「スター・ウォーズ」のEP7を手がけることになり、引っ張りだこのエイブラムスが、どれだけこの作品に時間を割けたのかが疑問だ。
これも見にいきたかった作品の一つだったが、けっきょくAmazonでの鑑賞になった。
▼以下はネタバレあり▼
新シリーズのスター・トレック以前の作品群はまったく見たことがないので、シリーズへの思い入れはない。
この新シリーズになって、話題になっていたことから見始めた。
だから新しいファンの感想だと思って読んでいただきたい。
物語の切り取り型が上手い。
それがこの新シリーズが人気を博している理由だと思う。
あまりにも壮大な世界観で、しかも人気シリーズ。
どのようなストーリーでも、描けるようで、実は制約が大きい。
その中で、新しいファンでも古いファンでも楽しませるには、物語の切り取り型にかかっている。
そして、その意味で今作は失敗している。
長い探索の度によってカークは疲れている。
クルーを信用はしているが、何をすべきなのか使命感をもてなくなっている。
そこに、難破船の救出という依頼が来る。
しかし待ち受けていたのは難破船ではなく、バリアも貫通する戦闘機の群れだった。
細かい話はよそう。
カークは事件を解決することで、再び使命感をもち、探索に意欲をわかせるという結構だ。
だが、なぜ解決したのかいまいちよく分からない。
あるいは、そもそもの課題がどういうものだったのか、いまいち見えてこない。
課題の見せ方も、解決のしかたも、今回はまずかったように思う。
そして、何より、解決につながる「敵」の思考が弱すぎる。
むしろ、カーク自身が気づかない課題であっても、敵がそれをあぶり出してくれるような構造が望ましい。
けれども、今作はそれがない。
敵の設定は非常に面白いものの、彼の怒り、悲哀、無念さがちっとも伝わらないのだ。
敵の親分となるクラール(イドリス・エルバ)は、もともと探索船のU.S.Sフランクリンの乗組員だった。
連邦に見捨てられたと感じた彼は、もともとこの惑星にあった技術で異星人たちのエネルギーを奪い、生きながらえていたのだ。
そして、その反撃として古代兵器を蘇らせ、惑星基地のヨークタウンへテロを起こそうとしていたのだった。
このキャラクター自体はとてもよい素材なのに、それを生かし切れていない。
もっと彼に語らせてよかったし、それをもっとカークが否定すれば良かった。
そのカークの語りが、そのままカーク自身の答えになったはずだからだ。
だが、彼がヨークタウンへの攻撃を考えた動機も、悲哀も、弱すぎる。
クルーを信じていたはずの彼が、そのまま「戦争のあった時代を取り戻す」という理論に至るにはちょっと飛躍がある。
クラールが何を大事に、何を棄てようとしていたのかをもっと知りたかった。
だから物語としてのまとまりが弱く、とにかく見せ場が連続するだけの、映像だけの映画になってしまった。
宇宙を旅するという夢が見られなかった。
物語に起因するところが大きいが、その見せ場もカタルシスを得がたい。
物語の見せ場になるのが、大きすぎるCGによる闘いか、もしくは遅すぎる肉弾戦しかないからだ。
だから究極的な窮地に陥り、エンタープライズ号がすっかり破壊されているのに、はらはらドキドキは足りないし、緊迫感がない。
マクロとミクロの闘いしかなければ、どうしても感情移入しにくくなる。
CGの映像美だけで、映画が完成するほど今の観客や視聴者はあまくない。
私としては、エンタープライズ号がこうもあっさり壊されて、そしてまた作り直されることもちょっとがっかりだ。
もっとも大切な家であるはずの船を、簡単に作り直してほしくはない。
(「ワンピース」の船でももうちょっと扱いがいいだろうに)
やっぱり「スター・ウォーズ」なんか作らないで、こちらに専念した方がいい気がしますけどね。
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