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ネタバレ必至で読み解く主観的映画批評の日々!

マイティ・ソー

2011-08-02 21:04:32 | 映画(ま)
評価点:44点/2011年/アメリカ/114分

監督:ケネス・ブラナー

あまりの展開に唖然。

かつて神話に登場したオーディーン(アンソニー・ホプキンス)はユグドラシル(世界樹)の幹にあるアスガルドに住んでいる神々の王であった。
ミッドガルド(地球)を侵略しようとしたヨトゥンヘイムの攻撃を防ぎ、今も尚王として君臨していた。
オーディーンも年老い、その後継ぎを二人の息子から選ぶ時期が迫ってきた。
ソー(クリス・ヘムズワース)は勇敢な戦士としてその指名を受ける矢先、武器庫に何者かが侵入し、その危険性をオーディーンにうったえるが取り合ってもらえない。
王の命に背き、ソーは仲間を引き連れてラウフェイに真相を聞き出そうと、騒ぎを起こしてしまう。
王に追放の処分を受け、ミッドガルドに堕とされてしまう。
能力を失ったソーと出会ったのが、ニューメキシコ州で天文学の研究をしていたジューン(ナタリー・ポートマン)だった。

ご存知「アイアンマン」と同系列に位置されているマーヴル・コミックのアメリカン・ヒーローの映画化である。
他にも「キャプテン・アメリカ」「ハルク」といった作品と同じ世界観をもっている。
最近小さいニュースにもなっていたが、「アベンジャーズ」というヒーローオールスター総出演の映画に向けて、製作された。

僕の大好きなスカーレット・ヨハンソンが「アベンジャーズ」に登場するので、どうしても観に行かざるを得なかった。
アイアンマン」も見ているし、仕方あるまい。
ほとんど設定も原作も前評判も知らずに行った。
時間がたまたま取れたから、ということもあったが、公開されて時間が経っていたために結局2Dで見た。

残念なことは、直前に親子丼を食べたせいか、途中で腹痛に見舞われた。
ソーが地球でロキと再会する直前のあたりを、う○こで見ていない。
3D映画を2Dでみると、どうやら僕は腹痛に見舞われるらしい。
アバター」の二の舞になってしまった。
まあ、鑑賞には特に問題なさそうですけどね。

▼以下はネタバレあり▼

とにもかくにも、「アベンジャー」を成功させたい。
その思惑がありありと見えて、結局映画としては残念な出来になりさがってしまった。
十分1本の映画として成り立つほどのアイデアに満ちていたとは思うが、脚本があまりにも下手だった。
ゴーストライダー」(ニコラス・ケイジ代表作)くらいぶっとんでしまえばよかったのに。

物語はこれでもか、というくらい典型的な展開を見せる。
世界観はこれ以上ないくらい壮大でも、戸惑うほどの設定もない。
父親がすべての宇宙を統べるオーディーンであり、その世代交代が一つの軸になっている。
要するにエディプス・コンプレックスであり、父殺しの物語である。
血を争う相手は兄弟として育てられたロキ。
しかし、このロキは敵対国のヨトゥンヘイムの息子であることが物語中盤で明かされる。
よって実態としては兄弟げんかではなかったのだ。

追放されたソーは地球に堕とされる。
物語構造としては、異世界からきた者が、また異世界に帰っていくという往来の物語となっている。
これも「竹取物語」と同じ古典的な構造である。
地球に堕とされることで、成長するという意味では成長譚ということもできる。
どこまでもオーソドックスな物語である。

その意味では大作になりえた作品ではある。
けれども、全く面白くない。
その理由の一つが、途方もない世界観だ。
実は神々がはるか宇宙のかなたに住んでいて今も見守ってくれている。
その設定に説得力を持たせるには、もっと説明が必要だっただろう。
結局オーディーンは王らしからぬ行動を幾度としている。
一つはなぜ死期が近付いているのかということだ。
世界が生まれて以来、ずっと王として君臨し続けていたのに、なぜ跡取りが必要なのか。
その死期はどのように決まっているのか。

また、ヨトゥンヘイムが敵対国とはいえ、その息子を人質として利用しようとしていたことは、王としてあるまじき行為ではないのだろうか。
いくらなんでも、利己的すぎる。
その状況を良しとして物語をすすめるのは無理がある。
神々の王という設定が必要だったのだろうか。
どこかの宇宙人でも十分良かったのではないだろうか。
やっていることは人間となんら変わらないのだから、説得力ない設定をもたせた理由がイマイチよくわからない。
ロキが怒るのは無理もないし、信用できなくなるのもうなずける。

また、アスガルドの外観もセンスがない。
ヨトゥンヘイムもまた同じ。
かなしいくらいにひどい出来だ。
どこか東洋の国ジパングをイメージさせるようなアスガルドは、ムダに金を多用してまぶしい。
けれども、その薄っぺらさが余計に世界観の薄っぺらさを象徴する。
潰されるだけ潰されて、殴られるだけ殴られるヨトゥンヘイムに至っては、同情以外にことばが思い浮かばない。
勧善懲悪の世界を脱却したかったのはわかるが、これで戦う動機を見つけるのは至難の業だろう。

それでもこの映画がなんとか映画としての体裁をたもてたのは、ひとえに主人公のソーのキャラクターだ。
底抜けに明るく、無邪気な男。
マッチョでにこっと笑うと、もうなんでもいいかな、と思えてしまう。
よい役者を見つけてきたものだ。

こんなむちゃくちゃな映画でも一つだけ目的がある。
ソー、その通り、「アベンジャーズ」への伏線である。
トニー・スタークの名前を意図的に出したり、シールドが印象的にかかわってきたり、伏線に満ちあふれている。
アイアンマンも、キャプテンアメリカも、ソーもハルクもいるのに、どうやって敵は戦うのだろうか。
とくに、ソーは神々の王(の候補)である。
それに勝てるのは、人間の枠を越えていなければならない。
いくらロキでも厳しいような気がするし、他のメンバーがその敵と対峙できるのかも、考えるだけで恐ろしい。
きっとオールスター総出演で、全く映画として面白くない作品になるのだろう。

Xメン」のように、オールスターを出してから、個々の物語を描く方が良いのか。
それとも、個々の物語を描いてからオールスターのほうがいいのか。
全く気にならない、どうでもよい命題である。

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