評価点:73点/2015年/イギリス・アメリカ/148分
監督:サム・メンデス
英国版「ミッション・インポッシブル」。
スカイフォールのあと、ボンド(ダニエル・クレイグ)はMの遺言に従ってスキアラというメキシコで男を殺す。
大きな騒ぎになったが、MI6本部にその真意を話すことはなかった。
新しくMとなった上司は、組織改編が行われることを告げ、Cことマックスが新たな上官になる可能性を示唆した。
Cは諜報部が集めてきた情報を、すべて世界で共有することを構想していた。
一方、体内にナノマシンを打ち込まれたボンドは、技術部のQに頼み込み、48時間だけ猶予をもらう。
スキアラは世界で暗躍する組織に関わっていたことをつかみ、その会合に出席するが……。
食わず嫌いになっていた「007」シリーズの最新作が今年ようやく公開されることになりそうだ。
観ようとは思っていたが、ずっとそのままになっていて、「ノー・タイム・トゥ・ダイ」は見に行きたいと思い、レンタルした。
サム・メンデスが撮っているということもある。
どこから見ていいの分からなかったので、「スカイフォール」と「スペクター」だけ借りた。
当然順番に観ようと思っていたが、余裕がなく、とりあえず放り込んだのが「スペクター」だった。
だから、ちんぷんかんぷんなかんじで進んでいるところもあったが、とりあえず自律性はありそうなので、「スカイフォール」を見ないままに、この批評も書いてみる。
的外れなところはご勘弁ください。
▼以下はネタバレあり▼
「カジノ・ロワイアル」から見ていないので、なんとも言いがたい。
だが、映像作家(と私は思っている)サム・メンデスだけあって、非常に美しい映画になっている。
話の展開も、スリリングで無理がない。(いや、あり得ない事件だけれど)
クールでニヒル、心内を全く見せない男、007が、生い立ちに関わる事件を扱うことで立体的に、人間的に描くこともできている。
スパイアクションという非日常的な世界観を、日常にすりあわせようとする舞台装置は、とても好感が持てる。
ファンにとっても、前作との連動性が強い点は「熱い」展開だろう。
前作直後から始まる(と思う)展開で、いきなりメキシコの祭りの最中にヘリを落とすところから始まる。
どこまでがCGで、どこまでがリアルなのかわからないようなアクションだ。
テレビで解像度が余りよろしくない(最新のテレビではない)環境で見たので、確かに違和感があるが、許容の範囲内だ。
スパイという世界を、民衆の世界に巻き込もうとする展開は非常に重要だった。
だからこそ、逆にこの後のカーチェイス以降限られた舞台設定でしかアクションがなかったのはちょっと物足りない印象を受ける。
とはいえ、サム・メンデスが大好きな長回しの冒頭から、物語に一気に引き込む手腕はなかなかのものだ。
ド派手な冒頭に対して、物語は情報を一括管理するというシリアスかつ現代的なモティーフも扱う。
情報を扱う、という点で少し浮世離れしてしまった点は先ほど指摘したとおりだ。
だが、その黒幕はかつて自分を育ててくれた義父の実の息子、すなわちその義兄であった。
ほとんど感情を表そうとしないボンドがいかに心揺れているかというのを、うまく引き出す展開だった。
娘を託されたボンドが、その娘に固執するのはかつて自分を育ててくれた義父の無念を晴らしたい、という志向と同一のものだろう。
毎回恒例(?)の拷問のシーンもよかった。
ヴィジュアル的にも非常に痛々しく、だからこそフランツ・オーベルハウザーを倒すところにカタルシスが生まれる。
冒頭のヘリと、終幕のヘリが呼応しているのも、監督らしい美しさがある。
ボンドガールであるフランス人女優レア・セドゥは「ゴーストプロトコル」にも出ている女優。
カットによって非常に美しいと感じたり、そうでもないとがっかりさせられたり、ちょっと不思議な女優だった。
ボンドに簡単になびかない、という展開も物語に深みを与える。
だが、私はこういう物語展開が非常に「ミッションインポッシブル」に酷似していると感じた。
主人公がピンチになるのを少数の仲間が助ける、組織からも睨まれる、主人公の生い立ちやプライベートに関わる事件を追う……。
トムが20年ほどかけて確立してきた手法に酷似している。
どちらが先だったのかは私は知らない。
だが、「カジノ・ロワイアル」とは趣が随分ちがってきた印象がある。
それが良いのか悪いのかそれもわからない。
この映画はシリーズの中でも非常に高い評価を得たらしいから。
確かにおもしろい。
良い映画だとは思う。
ダニエル・クレイグは今年公開される最新作で降板することを表明している。
次のボンドの噂もある。
シリーズを英国として大切にしたいなら、新しい路線を模索する必要があるだろう。
それが原点回帰なのかどうなのかは私にとってさして問題ではない。
ただ、この時代にあった、おもしろいと思える作品を出すことが、シリーズに対するリスペクトとなるだろう。
監督:サム・メンデス
英国版「ミッション・インポッシブル」。
スカイフォールのあと、ボンド(ダニエル・クレイグ)はMの遺言に従ってスキアラというメキシコで男を殺す。
大きな騒ぎになったが、MI6本部にその真意を話すことはなかった。
新しくMとなった上司は、組織改編が行われることを告げ、Cことマックスが新たな上官になる可能性を示唆した。
Cは諜報部が集めてきた情報を、すべて世界で共有することを構想していた。
一方、体内にナノマシンを打ち込まれたボンドは、技術部のQに頼み込み、48時間だけ猶予をもらう。
スキアラは世界で暗躍する組織に関わっていたことをつかみ、その会合に出席するが……。
食わず嫌いになっていた「007」シリーズの最新作が今年ようやく公開されることになりそうだ。
観ようとは思っていたが、ずっとそのままになっていて、「ノー・タイム・トゥ・ダイ」は見に行きたいと思い、レンタルした。
サム・メンデスが撮っているということもある。
どこから見ていいの分からなかったので、「スカイフォール」と「スペクター」だけ借りた。
当然順番に観ようと思っていたが、余裕がなく、とりあえず放り込んだのが「スペクター」だった。
だから、ちんぷんかんぷんなかんじで進んでいるところもあったが、とりあえず自律性はありそうなので、「スカイフォール」を見ないままに、この批評も書いてみる。
的外れなところはご勘弁ください。
▼以下はネタバレあり▼
「カジノ・ロワイアル」から見ていないので、なんとも言いがたい。
だが、映像作家(と私は思っている)サム・メンデスだけあって、非常に美しい映画になっている。
話の展開も、スリリングで無理がない。(いや、あり得ない事件だけれど)
クールでニヒル、心内を全く見せない男、007が、生い立ちに関わる事件を扱うことで立体的に、人間的に描くこともできている。
スパイアクションという非日常的な世界観を、日常にすりあわせようとする舞台装置は、とても好感が持てる。
ファンにとっても、前作との連動性が強い点は「熱い」展開だろう。
前作直後から始まる(と思う)展開で、いきなりメキシコの祭りの最中にヘリを落とすところから始まる。
どこまでがCGで、どこまでがリアルなのかわからないようなアクションだ。
テレビで解像度が余りよろしくない(最新のテレビではない)環境で見たので、確かに違和感があるが、許容の範囲内だ。
スパイという世界を、民衆の世界に巻き込もうとする展開は非常に重要だった。
だからこそ、逆にこの後のカーチェイス以降限られた舞台設定でしかアクションがなかったのはちょっと物足りない印象を受ける。
とはいえ、サム・メンデスが大好きな長回しの冒頭から、物語に一気に引き込む手腕はなかなかのものだ。
ド派手な冒頭に対して、物語は情報を一括管理するというシリアスかつ現代的なモティーフも扱う。
情報を扱う、という点で少し浮世離れしてしまった点は先ほど指摘したとおりだ。
だが、その黒幕はかつて自分を育ててくれた義父の実の息子、すなわちその義兄であった。
ほとんど感情を表そうとしないボンドがいかに心揺れているかというのを、うまく引き出す展開だった。
娘を託されたボンドが、その娘に固執するのはかつて自分を育ててくれた義父の無念を晴らしたい、という志向と同一のものだろう。
毎回恒例(?)の拷問のシーンもよかった。
ヴィジュアル的にも非常に痛々しく、だからこそフランツ・オーベルハウザーを倒すところにカタルシスが生まれる。
冒頭のヘリと、終幕のヘリが呼応しているのも、監督らしい美しさがある。
ボンドガールであるフランス人女優レア・セドゥは「ゴーストプロトコル」にも出ている女優。
カットによって非常に美しいと感じたり、そうでもないとがっかりさせられたり、ちょっと不思議な女優だった。
ボンドに簡単になびかない、という展開も物語に深みを与える。
だが、私はこういう物語展開が非常に「ミッションインポッシブル」に酷似していると感じた。
主人公がピンチになるのを少数の仲間が助ける、組織からも睨まれる、主人公の生い立ちやプライベートに関わる事件を追う……。
トムが20年ほどかけて確立してきた手法に酷似している。
どちらが先だったのかは私は知らない。
だが、「カジノ・ロワイアル」とは趣が随分ちがってきた印象がある。
それが良いのか悪いのかそれもわからない。
この映画はシリーズの中でも非常に高い評価を得たらしいから。
確かにおもしろい。
良い映画だとは思う。
ダニエル・クレイグは今年公開される最新作で降板することを表明している。
次のボンドの噂もある。
シリーズを英国として大切にしたいなら、新しい路線を模索する必要があるだろう。
それが原点回帰なのかどうなのかは私にとってさして問題ではない。
ただ、この時代にあった、おもしろいと思える作品を出すことが、シリーズに対するリスペクトとなるだろう。
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