詩「だまっているだけ」
だれにだってあるんだよ
ひとにはいえないくるしみが
だれにだってあるんだよ
ひとにはいえないかなしみが
ただだまっているだけなんだよ
いえば ぐちになるから
(相田みつを)
悩みや苦しみは、人に聞いてもらいたい。
こう思うことは多いものです。
カウンセラーは、聴くのが仕事です。
わたしは臨床心理を否定するのではありません。
たしかに聴いてもらえることで、心が軽くなり、前を向いて歩き出すことができます。
そういことが、実際にあると私は教職を通して経験しました。
しかし、その一方で、どんな人にも他人に言えない悩みや苦しさをもっています。
その人がそれを抱えて生きていると思うと、どことなくその相手に対する思いが深まります。
私はある生徒の厳しい家庭環境を知っていました。
ふつう、学校の先生で心ある人は子どもをみるとき、学校の場面だけでなく、その子の家庭での生活状況という「背景」に目を向けます。
でも、その生徒は厳しい家庭状況にもかかわらず、前向きな態度で学校生活を送っていました。
自分の中に悩みや苦しみを納めていることを知っていると、その人を支えたいと思う気持ちは高ぶるものです。
生徒を理解するのは、聴くことから始まるといわれます。
でも、話さない苦しみを知っていることも理解することです。