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前回の緊急事態宣言のときは、増加する感染者数の情報などに接し、多くの人びとは「自分も感染するかも」という恐れから外出を控えていました。
でも、その恐れは去年の夏以降弱まっています。
感染しても重症化しにくいと知った若い人をはじめとして、既往症を持つ人と高齢者を除く多くの人から、「得体の知れない」ウイルスへの恐れが薄れてきたのかもしれません。
この現状では、私は人びとに意識の変化をもたらす対策が、いま必要だと思います。
意識の変化とは、感染の問題を自分を軸にとらえるのでなく、周囲に感染させないようにしようとする「利他の態度」をもつことだと思います。
そもそも今の時代は、一般的に、ものごとへの関心が自分に向きやすい傾向があります。
社会学では「プライバタイゼーション」(=privatization)と呼ばれています。
私のことをわかってほしい。
私はこんなに傷ついているの。
私のたいへんさを知ってほしい。
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心が傷つきやすい現代には、他者よりも「わたしが、わたしが、わたしの、わたしの」というように、自分に関心が向きやすいのです。
だから、新型コロナウイルスに関して、前回の緊急事態宣言のときは、「私が」感染したらどうしようという恐れが生まれ、外出を控える人が多かったのでしょう。
そこで、今回の緊急事態宣言では、周りの人に関心が向き、その人たちに感染させないようにしようという意識変化で外出するという行動を食い止めるのです。
意識を変化させ、「利他の態度」を呼び起こすのは、それほど簡単ではありません。
こんな時こそ、国のリーダーが、国民の心に響くような、人間を大切に思う熱い呼びかけをするべきです。
これは、私が校長で生徒たちにそのような語りかけをしてきたから、よけいにその必要性を思うのかもしれません。
でも、ドイツのメルケル首相は、人間味のある温かい演説をして、ドイツ国民の共感を呼び起こしました。
リーダーとは、そのような役割です。
わが国でも、「厳しい状況だけれども、今こそお互いに守りあいましょう。日本とはそれを実現する国です」などと訴えるメッセージを政府が出すべきです。
それを聴いた人は、「そうだ、私たちはこの国、日本で生きているのだ。みんなでがんばろう」という連帯感をもちます。
連帯を呼び起こすメッセージは、「利他の態度」がキーになります。
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