私が教師になったは1983年で、その頃の中学校では全国的に校内暴力の嵐が吹き荒れ、そのピークを過ぎた頃でした。
ピークが過ぎたとはいえ、中学校では非行や問題行動のオンパレードでした。
ガラスを割る男子、家出を繰り返す女子がいました。
生徒間暴力、対教師暴力、校内での喫煙、バイク窃盗、バイクの二人乗りなどの非行はしょっちゅうのようにありました。
それらが何年も続き、学校の生徒指導といえば非行・問題行動への指導が中心でした。
しかし、2010年代頃からは状況が大きく変わってきました。
そのようなやんちゃな生徒は皆無と言っていいほどいなくなりました。
かわりに、いじめや不登校、学校への不適応を示す子が増えてきました。リストカットなどの自傷行為に走る子も珍しくなく、現在に至っています。
このあたりから、生徒指導といえば非行・問題行動対策から、「救育相談」へ移行してきたのです。
その変化の理由は、時代の流れもありますし、社会の変化もありますが、それらを受けて子どもにも変化が起きできたのです。
今までは器物破損、ケンカ・暴力などの「反社会的行動」であり、人や物を傷つけることで、自分の存在を示していたと考えることができます。
しかし、今は不登校・ひきこもり、自殺、自傷行為などの「非社会的行動」にかわり、自分を傷つけることで自分の存在を消そうとする方向に向きがちであると言えます。自殺が増えているのも、この延長上にあります。
私はこの変遷を、「以前は子どものエネルギーが『外向き』にでいた。でもいまは『内向き』に出ている」という言葉でよく説明します。
そもそも、子どもの世界はおとな世界の反映であり、社会状況の反映です。
「消えてしまいたい」という思いを吐露するおとなもいます。
子どものすがたは社会のようすを凝縮したものです。
非社会的行動に走る生徒を責めるのではなく、その心の内を深く理解して、自分自身の存在を認める子どもになってほしいと願い、あたたかく支えていくのが、教師やおとなの今日的な任務です。
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