キッチン・トランスレーターつれづれ日記

つれづれなるままに日々のよしなしごとを綴ります。本、風景や花や料理、愛犬の写真などをご紹介。

舟にまつわる絵本-にしひがし

2011-08-30 11:47:14 | 
ガンピーさんのふなあそび
光吉 夏弥
ほるぷ出版
おじいちゃんのふね
ひがし ちから
ブロンズ新社


     同じ舟を題材にした絵本「ガンピーさんのふなあそび」と「おじいちゃんのふね」。

     ガンピーさんは1970年出版のイギリスの名作絵本です。おじいちゃんふねは、

     今年出たばかりの日本の絵本です。

     

     ガンピーさんはある日ふなあそびに出かけることにしました。子どもたちが連

     れてってと言うと、「いいとも、けんかしなきゃね」。ウサギが連れてってと言

     うと「いいとも、とんだりはねたりしなけりゃね」。こんな調子で、ネコもイヌ

     もブタもヒツジもニワトリもウシもヤギも乗り込みました。でもね、みんな一

     番得意なことを禁止されました。がまんできるわけがありません。そのうち、

     子どもたちはケンカを始め、ウサギはとびはね、ネコはウサギを追いかけ、

     ヒツジはメエメエ鳴き、ヤギはけっとばし、、、。とうとう舟がひっくりかえって、

     みんな川に投げ出されました。岸に這い上がって、暖かいお日さまにあたっ

     て体を乾かすと、お茶の時間に間に合うように、歩いて家へ帰りました。

     

     かんたくんはおじいちゃんの「だいすけごう」に乗るのが大好きです。おじいち

     ゃんからたくさんのことを教わりました。そして風を切って走り回ったり、お昼

     寝したり。ところがある日、台風が来て、おじいちゃんの舟が壊れてしまいまし

     た。おじいちゃんはすっかり元気を無くしています。かんたくんはなんとかして

     舟をなおしてあげたいと一生懸命考えました。自転車屋さんや病院や自動車の

     修理工場にも行ってみました。最後に行った港で舟大工のおじいさんに会い、

     そのおじいさんが舟をすっかりなおしてくれました。かんたくんはトラックに積

     まれた舟の上の特等席に座って、おじいちゃんの家まで舟を連れて帰りました。

     

     ガンピーさんは、絵本ではおなじみの繰り返しの面白さが楽しく、内容はあくま

     でもファンタジーで、柔らかい色の線画のタッチと詩のような文章が絶妙に合っ

     て、いつの間にかガンピーさんの世界に引き込まれていきます。何がどうでも、

     お茶の時間に間に合うように帰ろうとするあたりが、いかにもイギリス的です。

     一方、「おじいちゃんのふね」はもっと現実的です。かんたくんのなんとかして、お

     じいちゃんの舟を元通りにしてあげようと奮闘するけなげさ、おじいちゃんに対

     する愛情が胸にじんと来ます。輪郭のはっきりした明るい色合いの分かりやすい

     絵も内容によく合っています。ガンピーさんでは、ひっくり返った舟なんかおか

     まいなしですが、こちらは舟への愛情まで感じられます。一つ間違えば、教訓的

     になりそうなのですが、絵にも文章にもそれをはね返すだけの力があります。国

     民性の違いも多少あるかも。イマジネーションの方向が違う気がしますが、どち

     らも負けず劣らず、とても魅力的な絵本です。
コメント
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