ガンピーさんのふなあそび | |
光吉 夏弥 | |
ほるぷ出版 |
おじいちゃんのふね | |
ひがし ちから | |
ブロンズ新社 |
同じ舟を題材にした絵本「ガンピーさんのふなあそび」と「おじいちゃんのふね」。
ガンピーさんは1970年出版のイギリスの名作絵本です。おじいちゃんふねは、
今年出たばかりの日本の絵本です。
ガンピーさんはある日ふなあそびに出かけることにしました。子どもたちが連
れてってと言うと、「いいとも、けんかしなきゃね」。ウサギが連れてってと言
うと「いいとも、とんだりはねたりしなけりゃね」。こんな調子で、ネコもイヌ
もブタもヒツジもニワトリもウシもヤギも乗り込みました。でもね、みんな一
番得意なことを禁止されました。がまんできるわけがありません。そのうち、
子どもたちはケンカを始め、ウサギはとびはね、ネコはウサギを追いかけ、
ヒツジはメエメエ鳴き、ヤギはけっとばし、、、。とうとう舟がひっくりかえって、
みんな川に投げ出されました。岸に這い上がって、暖かいお日さまにあたっ
て体を乾かすと、お茶の時間に間に合うように、歩いて家へ帰りました。
かんたくんはおじいちゃんの「だいすけごう」に乗るのが大好きです。おじいち
ゃんからたくさんのことを教わりました。そして風を切って走り回ったり、お昼
寝したり。ところがある日、台風が来て、おじいちゃんの舟が壊れてしまいまし
た。おじいちゃんはすっかり元気を無くしています。かんたくんはなんとかして
舟をなおしてあげたいと一生懸命考えました。自転車屋さんや病院や自動車の
修理工場にも行ってみました。最後に行った港で舟大工のおじいさんに会い、
そのおじいさんが舟をすっかりなおしてくれました。かんたくんはトラックに積
まれた舟の上の特等席に座って、おじいちゃんの家まで舟を連れて帰りました。
ガンピーさんは、絵本ではおなじみの繰り返しの面白さが楽しく、内容はあくま
でもファンタジーで、柔らかい色の線画のタッチと詩のような文章が絶妙に合っ
て、いつの間にかガンピーさんの世界に引き込まれていきます。何がどうでも、
お茶の時間に間に合うように帰ろうとするあたりが、いかにもイギリス的です。
一方、「おじいちゃんのふね」はもっと現実的です。かんたくんのなんとかして、お
じいちゃんの舟を元通りにしてあげようと奮闘するけなげさ、おじいちゃんに対
する愛情が胸にじんと来ます。輪郭のはっきりした明るい色合いの分かりやすい
絵も内容によく合っています。ガンピーさんでは、ひっくり返った舟なんかおか
まいなしですが、こちらは舟への愛情まで感じられます。一つ間違えば、教訓的
になりそうなのですが、絵にも文章にもそれをはね返すだけの力があります。国
民性の違いも多少あるかも。イマジネーションの方向が違う気がしますが、どち
らも負けず劣らず、とても魅力的な絵本です。