キッチン・トランスレーターつれづれ日記

つれづれなるままに日々のよしなしごとを綴ります。本、風景や花や料理、愛犬の写真などをご紹介。

Nachsommer-晩夏

2011-10-23 21:34:41 | アート
晩夏 下 (ちくま文庫)
アーダルベルト・シュティフター,藤村 宏
筑摩書房
晩夏 上 (ちくま文庫)
アーダルベルト・シュティフター,藤村 宏,Adalbert Stifter
筑摩書房
      アーダルベルト・シュティフターの「晩夏」が今も日本で文庫本になっているということは、

      いまだに読む人がいるということでしょうね。ある人物の成長を描くいわゆるドイツの教

      養小説に入る大長編小説です。しかしゲーテの「ヴィルヘルム・マイスター」のように

      悪戦苦闘するわけでもなく、挫折を味わうわけでもなく、主人公はきわめて順調に成長

      して、自然科学者として大成します。時代の嵐に揉まれることも、劇的な出来事が起こ

      ることもありません。この本は日本でも何故生き残っているのでしょう?同時代の劇作
 
      家ヘッベルは「これを読み通したらポーランドの王冠を進呈しよう」と言ったそうです。

      ほんとに何も起こらなくて退屈なんです。でもねニーチェはこれは歴史に残る大傑作だと

      思ったらしい。主人公のお父さんは言います。「人間はまず人間社会のためにあるので

      はなくて、自分自身のためにあるのだ」と。こんなことを言ってくれるお父さんが世の中

      に何人いるでしょうね!裕福な主人公は心の赴くままに様々な研究をして、自然科学者に

     なります。そして薔薇が家全体を覆っている田舎家に魅せられ、そこで運命的な出会いを

     します。そのような細々とした出来事が、あくまでも落ち着いた静かな筆致で描かれています。

     KINOKUNIYA書評空間の津田さんはこの本をジェーン・オースティンよりさらに「偉大な退

     屈読本」と評しています。読んでいるときはとても退屈だったのに、いつもいつも思い出す

     小説だと。今まだ30ページ目、さて私は最後まで読み切れるでしょうか?

            
コメント
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