「...突然気づいた。今日は私の大好きな風の強い、ひんやりした秋の
日だということに。少女のころ林檎をかじったり、枯葉を蹴って歩いた
りしたくなった、あんな一日だということに」
「真珠の耳飾りの少女」で知られる英国の作家トレーシー・シュヴァリエの
「天使が堕ちるとき」の一節です。生きる希望を失って鬱々としているヒロ
イン、キティーは、秋のひんやりした空気に突然目覚め、自分の周りの世界
に気づきます。私の大好きな場面です。秋のピリッとした冷たい空気には、
人を覚醒させる作用があるような気がします。それと同時に、美しく色づい
ても、はかなく散りゆく落ち葉は物悲しくもあります。
イブ・モンタンの「枯葉」を聴いていると、泣きたいほど切なくなります。
「...かき集められる落ち葉は、僕の思い出の苦さに似ているよ」kei訳
フランス語の歌詞はすばらしく美しい詩です。(英語のもかなりいいけど)
でも苔むした樹の幹の上に散る紅葉や銀杏の葉などは、なんとなく和の
イメージかも。
奥山に紅葉ふみわけ鳴く鹿の声聞くときぞ秋はかなしき 猿丸大夫