ヴァン・ゴッホ・カフェ | |
ささめや ゆき,Cynthia Rylant,中村 妙子 | |
偕成社 |
The Van Gogh Cafe | |
Cynthia Rylant | |
Sandpiper |
カンザス州フラワーズにあるカフェ。ヴァン・ゴッホ・カフェ。かつて劇場
だった場所にあるためか、このカフェでは魔法が起こります。次々とささ
やかな魔法が。人々の心を驚かせ、困惑させ、温める魔法が一つ起こっ
ては消え、また一つ起こっては消えていきます。カフェの若い主人マルク
と彼の娘クララはわくわくしながら、でも過剰に騒ぎ立てたりせずに魔法
を見守ります。もしかしたら、この心豊かな二人が魔法を引き起こしてい
るのかとも思えます。あるとき海から遠く離れたこの内陸の町にカモメが
一羽やってきて、カフェの屋根に住み着きました。町の黒猫がカモメに恋
をしてスカーフや帽子やたくさんのアパレルの贈り物をどどけます。この
ロマンチックな成り行きにマスコミが殺到して、カフェの周りは大騒ぎ。
やがてカモメの仲間がどんどん増えて、騒ぎはますます大きくなりますが、
ある日カモメたちはカリフォルニアへ向かうトラックに乗って去っていきま
した。その代わりのようにやって来たのが、作品が認められず書くのを止
めようとしている貧しい作家。でも彼もこのカフェの魔法にかかったのか、
すてきなお話が書けそうな気がしてきます。そして、このカフェの魔法を、
つまりこのお話を書いて、魔法の環が閉じられることになります。
『ヴァン・ゴッホ・カフェ』は児童小説の多いシンシア・ライラントらしい
おだやかでささやかな、ちょっとユーモアの効いたすてきなオムニバ
スのショート・ストーリーです。くつろげるカフェで飲む、心を温めて
くれる一杯のハーブティーのような。