★ベルの徒然なるままに★

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江戸川乱歩『孤島の鬼』

2013年07月18日 | 小説・漫画・書籍
先日から読んでました、江戸川乱歩の『孤島の鬼』。




昨日読み終わりました!

もう、すっごく面白くて・・・流石、乱歩大先生(≧▽≦)!!と、未だに、コーフン中なのであります。


乱歩作品は、小~中学生の頃、とてもハマって読んでいたのですが、高校生や大学生、はたまた大人になってからは、海外ミステリや、新本格と言われる日本の最近の作家さんのミステリをチョイスすることが多く。

本当に、久しぶりの乱歩作品でしたが、やっぱり、乱歩作品、好きだわ~と実感。

また、色々と順番に読んでいったり、集めたりしようかなぁと思います(^m^)



で。

『孤島の鬼』。

数ある乱歩作品の中でも、最高傑作と言われている作品だそうです。

確かに、その通りで、推理物要素だけでなく、冒険譚要素、ホラー要素まであって、色々な側面から楽しめるのですよ~。本当に面白かったです。


物語は・・・というと。


舞台は大正十四年。

主人公の蓑浦金之助という青年は、木崎初代という女性と恋に落ちるのですね。

で、互いに、将来を誓い合う訳ですが、初代には、少し複雑な出生の事情があったのです。

というのも、実は、初代の今の親は、実の親ではなく、育ての親。

彼女は、捨て子だったところを拾われて、今の母親に育てられたそうで。元々の身元は一切分からない・・・ということ。ただ、捨てられていた彼女が持っていた、とても古い家系図と、幼いころの彼女の記憶にある、小さな漁村の風景・・・それだけが、彼女の身元の手掛かり。


結婚を約束する2人なのですが、ある日、初代が何者かに殺されます。

しかも、完全に鍵のかかった、第三者が出入り不可能な密室の中で。心臓を一突きされて。


最愛の婚約者を無残に奪われた蓑浦は、初代を殺した犯人に復讐をすることを決心。

警察すらもお手上げな、不可能犯罪を暴くべく、鎌倉在住の、友人であり探偵の深山木に調査を依頼します。

調査に乗り出す、深山木ですが、何やらとても恐ろしい秘密を知ってしまったようで、彼の元に、「今日の正午にお前を殺す」というような脅迫状が届くんですね。

その脅迫状に恐怖した深山木は、絶対に殺されないようにと、海水浴客で大賑わいの海岸に出かけます。そして、遊びに来ていた子供たちと一緒になって、砂浜で戯れていたのです。

大勢の人でごった返す海水浴場、そして、自分の身の回りは、たくさんの子供たち。

人目も多いし、逃げ場もない。

流石の犯人も、これでは、自分に手を出せないだろう・・・と。

そんな深山木の様子を、蓑浦自身も、「ここまで、広い空間、衆人環視の中に居れば、却って、安全だ」と確信して、砂浜に座り、見守っていたのですね。

がしかし!

子供たちと砂に埋まって遊んでいる真っ只中に、深山木、死亡。

蓑浦の目の前で。

初代と同じく、心臓をナイフで一突き。


でも、子供たちと遊んでいる深山木に近付いて行った怪しい者もおらず・・・たくさんの人が見る開かれた空間で…いったい、犯人はどうやって、深山木を殺したのか??



恋人のみならず、調査を依頼した友人まで失ってしまった蓑浦は、とある事情から、かつての友人であり、また、蓑浦に友人以上の同性の愛情を抱いている医者・諸戸道雄の協力を得て、事件を調査することに。

そして、諸戸の機転により、殺された深山木が「事件の真相を暴くのにとても重要なものだ」と蓑浦に託した乃木将軍の像の中に、初代の形見の家系図と、そして、何者かの手記を発見。

その手記とは、体に双子の兄弟がくっついている為に、孤島の土蔵に閉じ込められている少女の手によるもの。

諸戸は、その少女が閉じ込められている島こそが、事件に一番関わりある・・・と推理します。

そして、複雑な出生の事情を持つ諸戸自身も、その島には因縁がある・・・と。

こうして、簑浦と諸戸は、和歌山県にある、とある孤島に赴くのですが・・・まさに、そこには、「鬼」のような人物が居て。一連の惨劇を全てを操っているだけでなく、とてつもなく恐ろしい悪事を企んでいたのです。


・・・・・・というようなお話なんですが(^^)b




いきなり、冒頭から、完全密室の殺人事件!

そして、その調査を依頼した探偵が、今度は、その真逆。大勢の人がいる、完全に開かれた、衆人環視の中で、殺されます。


密室と、衆人環視の殺人。

ミステリの中では、よく取り上げられる、永遠のテーマと言っても良いもので、現代でも、色々なミステリ作家さんが、このテーマに様々な工夫を凝らして挑んでいらっしゃいますよね。

あ、あと、コナンでもよくありますよね(^^)b


そんな、ミステリの永遠のテーマを、昭和四年に、既に書かれていたとは!!

流石、乱歩先生ですっ。

トリックも、奇抜ではあるけど、なるほど~と納得の行くもの。

特に、衆人環視の中での殺人・・・というのは、ある意味、機械トリックの効く密室以上に難しいテーマですよね。
心理トリックというか。
人の盲点を突く・・・というか。

それが、見事で、面白かったです!


で。

とても分厚い本なのですが、この二つの不可能犯罪の謎については、物語の中盤で、もう分かっちゃうのですよね。

探偵が殺された後に、真の探偵役として登場する、医師の諸戸が、あっさりと解いちゃってくれます。

諸戸、かっこいい!!!

殺人のトリックは、中盤で分かっちゃう訳ですが。

でも、犯人は分からない。。。。。。

じゃあ、犯人は、一体だれなのか・・・・?というのが、後半のお話。



しかも、捨て子だったという殺された初代の出生や、はたまた、真相を知ったがために殺された深山木が持ってきた、土蔵に閉じ込められた少女の手記。

一見、全然関係なさそうなことなのに、それが、とある孤島に関係して繋がっている・・・というから不思議。

そして、諸戸自身も、その島に因縁がある・・・ということで。


後半からの舞台は、その小さな寂れた孤島が舞台なのですよ。


でも、この島が、本当に怖い!!


・・・ちょっと、どういう言葉を使っていいのか難しいので、詳細は書けないのですが。

ここの土蔵には双子が閉じ込められていたり、また、なにやら、怖い企みが水面下で動いているようで。。。。

以前も、この島に近付いた者、秘密を暴こうとした者は、絶対に死んでいるのですよね。

そして、諸戸も土蔵に閉じ込められ、簑浦は殺されかける。


けれども、そういう怖い島なんだけれども・・・どうやらお宝も眠っているようで。

宝の在処を記した暗号を解いたりもするのです。



前半は、完全に、推理物ミステリというテイストでしたが、後半は、ホラーテイストでもあり、そして、お宝探しの冒険物でもあり。もちろん、勧善懲悪物語で、悪者は、最後、ちゃ~んと裁きを受けるから、気分も良い!


完全なハッピーエンド、大団円なんだけれども・・・この物語の、一番の探偵役である諸戸だけが、ラスト不幸なのが・・・なんか切なかったなぁ。


っていうか、主人公の簑浦って・・・ぶっちゃけ、あまり、役に立ってないやんけA^^;;

・・・いや、やる気があるのは認めるけど。。。。
お前、やる気だけで、何もやってないやんけ・・・と。


初代が殺されて復讐を誓ったのに、彼が最初に依頼した探偵はあっさり殺されちゃって、お手上げになっちゃうし。

諸戸に相談してからは、謎を解くのは、全部、諸戸だし。

孤島での冒険も、結局、簑浦は何一つ、自分では謎を解明できなくて。
土蔵に閉じ込められた諸戸とのやりとりで、暗号を解いたり。

はたまた、地下洞窟の探索で迷った時も、諸戸が居たからこそ、生き延びられたような気が。。。。


・・・ま、色々なご縁の導きだからいいんだけどさ、あれだけ愛してた初代が居たのに、あっさり、次の恋見つけちゃうし。変わり身、早っっ。

そう思うと、な~んか、ちゃっかり良い所だけ持ってった感がある・・・と思ったのは私だけかしら(笑)


それに、彼は、自分が男性をも魅了する美貌だっていうのを自覚していたようですし。

最初に深山木に、事件の調査を依頼した時も、自分が弱って泣く姿を見せれば、それが相手をワクワクさせている~という甘い感触を自覚していたり。

はたまた、自分に友人以上の情愛を持っている諸戸に甘えてみたり。

・・・アンタ、確信犯ダヨネ??と小一時間問い詰めたひっ。

その割に、最後、洞窟の中での諸戸の魂を絞るような求愛には、あっさり拒否だし。

なんつーか、簑浦って、諸戸の愛情を受け入れる気は皆無なのに、煽った挙句に利用してるよね?  いくらなんでも酷いナリ。


う~ん。ごめん。

ちょっと、好きになれなかった簑浦君。


まあ、ミステリの主人公・・・というか、探偵役ではない語り手というのは、無個性で、探偵役の名推理を享受することが得てして多いのかも~。



一方、諸戸は大好きでした。


最初は、ただただ怪しげな研究者に見えたのですが、実は、彼も、凄い深い事情を抱えている悩み深き青年なのですよね。

そして、彼が簑浦に協力をしたのは、ひとえに、簑浦への愛情なんだと思う~。

しかも、超頭良くて。
気持ちよいくらい、どんどん謎を解いていく。


でも、決して、それを恩に着せて愛情を押し付けるようなこともしなかったし。

報われないとわかってても、せめて、「友情」だけは大切にしたい・・・と思ったのかなぁと。

なんか、諸戸の報われない同性愛が切な過ぎる~~~。


それに、諸戸が女性に対して激しい嫌悪感をもって、恋愛の対象にならないのは、幼い頃より育ての母親に、性的な虐待を受けていたから・・・らしいし。もちろん、それだけでなく、彼を取り巻いていた特殊な事情も・・・なんかもう気の毒で。

本当に、彼には幸せになってほしかった。。。。。。

とはいえ、最後に、彼は、自分が罪人の子ではないとわかって、本当の親に巡り合えたのだから。それはそれで幸せだったのかなぁとも思えるけど。


でも、物語のラストのラストの一文が、凄く胸を締め付ける(>_<)泣




それにしても。


このお話、映像化は120%無理です。

昭和初期という時代だからこそ書けた作品なのかもしれませんね。

昭和も、もう少し時代が進んでいくと、戦争に突入し、検閲などで表現が規制されてきましたし。

また、検閲はなくとも、色々と表現や言葉に対して厳しい現代でも、絶対に書けない作品ですし。

まさに、昭和の一桁代だからこそ生まれた作品ではないでしょうか?



本当に、推理だけでなく、冒険物としても楽しめるミステリですし、また、登場人物たちの複雑な人間模様にも胸を打たれる作品でした。