★ベルの徒然なるままに★

映画、ゲーム、アニメ、小説、漫画・・・管理人ベルの、大好きな物をいっぱい集めた徒然日記です。

映画『風立ちぬ』

2013年07月30日 | 映画鑑賞記
先週の金曜日に見て来ました。

映画『風立ちぬ』。

ジブリアニメとはいえ、近年の『崖の上のポニョ』などとは全然違って、小さなお子様向け~というよりは、完全に大人向けな作品だったと思います。

描かれていた時代も、大正から昭和、ちょうど、日本が戦争へと突き進んでいく時代で、零戦を開発した実在の人物・堀越二郎を描いたオリジナルストーリーと言うことで。なかなかに難しい題材ゆえ、賛否もいろいろ聞きますが・・・・・・わたし的には、凄く良かったと思いました。

本当に、私の中では、近年のジブリ作品の中で、ここまで作品世界にのめり込んで鑑賞できた作品はなかったです。

それくらい、私のツボにクリティカルヒットしちゃった訳で。

早く感想をUPしたいなぁと思ってはいたものの。

この映画を見てると、色々と考えることや思うことがいっぱいあって。

色んな感情が、ぐわ~っと心の中で渦巻く感じで・・・上手く文章にまとまらないなぁと思って、で、なかなか書けなかったのですが(^^;;

てか、まだ、ちゃんと感想が頭の中でまとまってないので・・・とりあえず、思いついたままを書いていきたいと思います。

ではでは、感想、行ってみましょう!!


■『風立ちぬ』劇場予告編4分ver.





零戦の設計者・堀越二郎と作家の堀辰雄をモデルに、大正から昭和にかけて、飛行機作りに情熱を傾けた青年の姿を描くアニメです。


大正から昭和にかけての日本。

戦争や大震災、世界恐慌による不景気により、とても生き辛い時代でした。

航空科学を学ぶ学生・堀越二郎は、汽車に乗っているときに、大震災に遭遇。
その時、たまたま知り合った菜穂子という少女と出会うものの、ちゃんとした挨拶や自己紹介をする間もなく、二人は別れてしまいます。

それから二郎は、大学を卒業し、飛行機を開発する仕事に就くのですが、休暇を過ごすために訪れた軽井沢で、10年ぶりに菜穂子と再会。

やがて二人は、惹かれあうようになり、婚約するのですが、菜穂子は結核にかかってしまい・・・。






↑↑↑の4分予告。

ここ何か月か、映画館で映画を見ると、どの作品の前にも必ず流れるので・・・もう、暗記しちゃいそうでしたよ(^^;;

で。

私、最初、この予告を見るまでは、あまり前知識がなくって。

『風立ちぬ』と聞いて、てっきり、堀辰雄の小説『風立ちぬ』のアニメ化だとばかり思ってたのですよね。

でもでも、そうではなくて、零戦を作った実在の人物・堀越二郎の半生を描いた作品なのですよね。
とはいえ、伝記物というのもでもありません。

タイトルから想像するように、堀辰雄の『風立ちぬ』の物語要素や、はたまた、ヒロイン菜穂子の名前から、堀辰雄の『菜穂子』という作品を連想するように、単に、堀越二郎の半生・・・というのではなく、そこに、堀辰雄の小説の要素を色々とミックスしたオリジナルストーリーでした。



そして。

私は、劇場で何度も見た、4分間予告から、このお話は、悲恋な恋愛物なんだろうなぁと勝手に想像していたのですが。

思ったよりも、悲恋的ではなかったというか、いや、悲恋は悲恋なんですけれども、作品全体の割合を占める恋愛要素部分が少なかったです。

なので、わたし的には、安心して見れましたです。

いや、だって、最初から最後まで通して、ずっと悲恋物だったら、どうしようかとA^^;;

うん。

私は、鑑賞前、予告編のイメージで、主人公は学生時代からの好きな人が居て、でも、その人が結核で、長くお付き合いしているものの病気の所為で結ばれず~~~という勝手な恋愛ストーリーを頭の中で作り上げちゃっていたのですが(爆)

恋愛要素は後半からのみ、なのですよね(^^;;





主人公の二郎は、学生時代、汽車に乗っているときに、関東大震災に遭遇します。

その時、たまたま知り合った菜穂子という少女を助けるのですが・・・これが、物語の序盤、二郎と菜穂子の出逢い。二郎が二十歳で、菜穂子がまだ13歳くらいの頃です。


でもでも、そのあとずっと、物語の後半まで、菜穂子は一切出てきません。

物語の前半では、二郎は、大学で航空科学を学び、そして、卒業後は三菱内燃機に就職し、飛行機の開発に従事し、また、ドイツの飛行機会社に視察研修に行ったり、世界を回って技術を学んだり~~~と、ただただ、幼いころからの夢だった、「飛行機を作りたい」という夢に向かって邁進していくのですよね。


わたし的には、この前半部が物凄く好きなんです。


もちろん、後半からの、二郎が休暇で軽井沢に行き、そこで10年ぶりに、震災の時に助けてあげた菜穂子と再会し~~という、菜穂子との出会いや恋愛も、二郎の人生・・・つまり、九試単座戦闘機開発の成功に必要な大切な物語というのは解っているのですが。

でもでも、なんか、私は後半より前半が好き。

大正から昭和にかけて、震災や貧困、金融恐慌・・・お世辞にも豊かな時代とは言えない大変な時代です。

そして、世界における、日本の技術的な遅れ。

二郎の言っていた、

「この国は、どうしてこんなに貧しいんだろう?」

という言葉や、また、二郎や本庄が言っていた、

「この国の技術は、外国に比べ、20年遅れている」

という言葉が、とても印象的でした。


技術の遅れが、国民の貧困や、また、不況に関係があるのかどうか、私にはよく分かりませんが、そんな苦しい時代に、外国の技術に追いつきたい・・・という開発者ならではの想いと、そして、幼いころからの夢に突き進んでいく二郎のひたむきな姿に引き込まれる前半部だったのですよね。

夢を追うというのは、決して、自分のやりたいことだけを研究するという楽しく甘いものではなくて。越えられない壁が沢山あって、ただただ努力するだけでなく、発想の転換や才能が必要とさたり・・・私の様な凡人には理解しがたい大変で困難な、それでいて、どこか甘美さをも感じてしまう、天才独特な脳の世界を垣間見るようでした。


でもでも、その一方で、あの苦しい時代。

夢を追えない人達はどうだったのだろうなぁ・・・とかも考えてしまって。

才能に恵まれたり、学問に触れる機会のある人間は、色んな道が開けたかもしれないけど、あの時代、本当は才能を持っていたとしても、学問にすら触れる機会のない人だって多かったハズで。

そういう時代の理不尽さや大変さも同時に感じました。


あ!

そうそ。


主人公のお声、ヱヴァの庵野監督さんなのですよね。

こ、これは・・・なんというかA^^;;

4分予告の詩の朗読を聞いた時から、

「なんじゃ、こりゃあぁぁぁぁぁぁ(@A@;」

と思ってしまったのが、正直な感想です、スミマセン><


そして、映画を実際に見た時も。

二郎が青年期になった、汽車の中での第一声に、

「こ、これを2時間、聞くんかい!!??(>_<)」

と凄い違和感を感じたのですが。。。。。。。

でも、意外とすぐに慣れたから不思議(笑)

なんというか・・・決して、肯定している訳ではないのですが。

年齢よりも老けた声や、棒読みな喋り方も、

「ああ、この主人公は、こういう声で、こういう喋り方の人なんだ。これが、この人の個性なんだろうなぁ」

と、段々自然に受け入れられた・・・というか。


これは、おそらく、主人公が、ちょっと風変わりな天才気質な人物ゆえに、逆に、その不自然さが自然だったのかもしれないなぁと思いました。


・・・・でも、やっぱり、あの詩の朗読だけは、ちょっと酷・・・(略)・・・・・A^^;;


まあ、これはこれで、こういう個性の主人公なんだ・・・と思えば良いのですが、私はアニヲタなので、やっぱり、声優さんが演じる二郎も聞きたかったですが(笑)



そしてそして!


物語の後半。

菜穂子との10年ぶりの再会と、恋愛と、婚約と、結婚。


ここからは、涙です(;;)

本当に悲しいです。

特に、菜穂子がサナトリウムを抜け出して、二郎の元にやってきて、そこで、すぐに結婚式を挙げて、短い結婚生活を送るシーンは・・・もう、涙なしでは(TT)


菜穂子の健康を第一に考えるなら、療養所に居ることなのですよね。
でも、二人は一緒に居たい。
しかし、二郎には、飛行機開発があるので、仕事を離れ、菜穂子について療養所へ行くことが出来ない。

だからこそ、覚悟を決めて、二郎の傍に菜穂子が居ることにする・・・・。

これは、傍から見たら、二郎のエゴとも思えるし、愛し合う二人のナルシズムにも思えるのですが。

でも。

例え療養所に入っても、それが、ただの「延命」でしかないのなら。。。少しでも一緒に居られる時間を多く持てる方を選ぶのが、愛し合う二人には当然のことかもしれません。

そう考えると、二人の選択、そして、最後の菜穂子の行動は、究極の愛情だったのかなぁと。。。。

せ、切ないです(>_<)



とはいえ、とても悲しいのですが、不思議と、悲壮感に溢れていなかった印象を受けました。

菜穂子の病気のこともそうですが、全体を通して、戦争や病気、貧困、震災など、現代の世より、もっと、「死」を身近に感じられる世界なのに。
なぜか、その身近な「死」よりも、皆が、懸命に生きた「生」の方が強く感じられる・・・というか。

だから、映画を見る前に想像していた悲壮感を、あまり感じなかったのかもしれません。



映画で描かれていた時代、その戦争の結末や、また、二郎が開発した零戦の結末は、私達が歴史として知ってのとおりです。

その歴史の是非は、後の時代の人間が、過去の歴史を見て考えたり、言ったりすることであって。
その当時をオンタイムで生きていた人たちは、ただただ、与えられた生を懸命に生きていただけなのじゃないかなぁと思いました。

今のように、色々と便利なものに囲まれている訳でもなく、医療が発達していた訳でもなく、何かと、生き辛い世で、懸命に生きて、時に夢を追ったり、恋をしたり・・・と。

大変な時代にも関わらず、この映画からは、登場人物たちの強く生きようとする意志の様なものが感じられました。


今の私達が生きている世の中は、色々と便利なものに溢れていますし、あの時代に比べたら、ずっとずっと生活も豊かになっているのに、でも、あの時代には無かった、別の種類の「生き辛さ」というのがあると思います。

でも、あの時代の人達にあって、今の私達に無いものもあって・・・それゆえに、今の世を生き難くしているような気がしました。

もしかしたら、恵まれている分、今の時代の人間の方が、生きる力が弱いのかもしれないなぁと。




本当に、時代的なこと、登場人物たちの背負っているもの、いろいろな事を考えさせられました。


ジブリ作品・・・というより、宮崎監督の個人作品という印象もある作品です。