ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

オンラインACOP(7)に参加しました!

2020-07-26 23:13:39 | 対話型鑑賞


レポート:Art Communication in Shimane みるみるの会 房野伸枝
日時:7月12日(土)13:30~Zoom接続確認  14:20~15:20実践
作品:「Cherry Train」 2017年  Clive Head 作
ナビゲーター:まっつんさん
進行:カスガさん         
サポート:ちょなんさん
参加者:上記の3名の他3名  計6名
   
みるみるの会の春日さんが、コロナ禍で全国的に自粛中の5月からZoomによるオンラインACOPに参加されていると聞き及び、うらやましく思っていたところへ、みるみるの会の仲間の津室さん、上坂さんも前回参加されたと知り、「おー。すごい。皆さん、やるなぁ~」「でも、どうやるんだろ??」「Facebookとか、苦手で…」とモヤモヤしていた私・・・。そんな私に絶妙なタイミングで春日さんがこの会に参加できるように声をかけてくださいました。

私は学校でZoomによる講義を受けたことがあるだけで、それを使って自宅でのリモート鑑賞は初体験。いったいどうなるのやら、好奇心は膨らむばかリで、見通しが持てませんでした。その上、ウチの自宅PCはデスクトップで、モニター後ろの複雑な配線を引き抜く勇気がないため、私の背景は部屋の中が丸見え!なんか、はずかしい~!他のメンバーの方は、素敵な絵画が掛けてある壁を前に、またはデジタルの壁紙を利用しておられたりしておしゃれです。私もその場でデジタルの壁紙にしようとトライしてみたものの、背景と自分の画像が混ざりあったりして、ああ~!残念!時間切れとなってしまい、断念したのでした。次回こそは素敵な背景で参加したいです。

始まる前から気恥しい気持ちの私でしたが、<ちょなんさん>が丁寧に操作について教えてくださり、顔なじみの春日さんが進行役をされていたので、気を取り直して<まっつんさん>が準備された画像を待ちました。どうやら、パワーポイントの画像を載せるようです。スライドが何枚か用意されている画面を操って、そこに大きく映し出されたのは、何とも奇妙な、たくさんのモチーフが複雑に重なり合わされたような、人物がたくさん描かれている魅力的な作品でした。私は第一印象を「電車の中の風景、いろんなものが重なっていて、変だな」「電車だと思ったのは向かい合わせの席の様子、網棚に荷物を置こうとしている人が見えるから」と、述べました。その後、トークは切れ間なく続き、60分はあっという間に過ぎました。
記述の記号は
(・)要約した皆さんの意見(ナビゲーターのパラフレイズも意見に集約)
(→)私が気付いたこと
(N)ナビゲーターのファシリテート
です。
画像のリンク先は以下の通り。画像はそちらで確認してください。https://www.artsy.net/artwork/clive-head-the-cherry-train

【トークの様子】
・たくさん重なり合いすぎていて、気持ち悪い。
・電車の中にしては、コーヒーカップや自転車など、似つかわしくないものもある。電車だけではなく複数の場所が要素として入っている。
・自転車の隣の青いコートの女性は右から電車に乗りこもうとしている。そして、その進行方向 をずっとたどると左に同じ人物が電車の外にいて、つながるのかな。
→画面が複雑なため、どの部分について語られているのか、すぐには共有しにくいようでした。ナビゲーターは画面を拡大したり、移動したり、画面上をパワポのツールのポインターで示したりして、みんなで同じ個所を認識できるようにしていたことに感心しました。通常、実際の作品や、画像をプロジェクターで映して鑑賞する際は、ナビゲーターが指差しやレーザーポインターでポインティングしますが、オンラインならではの焦点化でした。ただ、オンラインでポインターを速く動かすと、反映にタイムラグがでて、最終的な着地点しか見えないという意見がありました。
・電車って場所をつなぐものでしょ。この場合は時間をつないでいるみたい。
・一人の人が動いている残像が描かれているみたい。他にもそんな人が何人かいる。
 ・同一人物のいくつもの顔が重なっているが、同じ表情なので、一瞬の同一時間、同一人物を複数の視点から見ている様子を表現したのでは?

N:画面を半分に分けて、左側だけに限定して意見をお願いします。
→この画面を分割して鑑賞するという仕掛けは、「Zoomならでは。」「要素が多い作品を見る時に使える技」「みる範囲を限定することでより詳しく見ることができてよい」という意見がありました。

・テーブルのつき方や椅子の形がJRなどの日本の電車じゃない、外国の電車ではないか。
・ムスリムみたいな方もいるし、髪の色が黒い方も多いので、東欧のあたりのイメージ。
・窓の外の景色が日本っぽくない。ヨーロッパの東あたりでは。
・キュビズムで描かれた人物のよう。人間の形をしているけれど何者かわからない形がある。現 実にいるというよりは、他の人からは見えていない、透明人間みたいな異なる存在が中央にある。
・ペットボトルとコーヒーカップ、フォークが刺さっているパイ…カフェで資料を読んでいるような様子。電車に乗る前の時間が描かれているのかな。

N:今度は右半分を見ていきましょう。先ほどは時間の経過や視点の違いなどがありましたが、右の画面ではどうでしょう。

 ・右にイヤホンをしている人物がいる。電車は昔からあるが、イヤホンをつけて電車に乗る男性の風貌から現代の風景なのでは。
 ・右に飛行機のビジネスクラス、の座席に座る男性もいて、電車の中ではない。
N:ビジネスクラスと思われたのはどこから?
→ここで、どの部分のことを言っているのかナビと共有しにくいので、鑑賞者の方から矢印を出して、ポインティングをするという技を見せてくださいました。オンラインでやり取りをする際に、言葉だけの説明ではなく、画像上を双方向から指し示すことができるというのも、オンライン鑑賞の利点だと感じました。特に美術館では鑑賞者が作品に近づくのはご法度ですから。
 ・先ほどのビジネスクラスに座っているといわれた男性の手にはスマートフォンが握られているので、やはり最近の様子だと思う。
 ・ガラス戸の取っ手のようなものも見える。カフェやお店の戸口のような形なので、いろんな場所が複層的に描かれているのではないか。

N:ここでほんのちょっとだけ情報を入れたいと思います。(スライドを換えて、)クライブヘッドという人の「Cherry Train」という作品で、2017年作、3年前ということで、最近の作品と言っていいと思います。多重露出の写真を重ね合わせたような作品を描いていて、自分の作品をこんなふうに語っています。(スライドを換えて文章を見せながら読む)「私は物語を語るのではなく、あらゆる種類の物語を生み出す絵画を作ろうとしているのです。」「絵の全ての部分が多角的に読み取れるようになれば、常に複数のイメージが存在し、異なる意味の可能性は無限大になるのです。」こんな言葉も踏まえて全画面で見てみましょう。

・さっき言った、透明人間みたいな人物が時間や空間を超えてすべてを見ているような感じです。(ここで鑑賞者が矢印を出してポインティング)
N:この方がこの作品のキーだとすると、具体的にどんなイメージがあります?
・人々の時間の動きを凝縮したのではないかという話があったが、この人物は時の経過を見据えることができるような存在なのでは。(振り返りで、この人物が作者自信なのではないかという解釈につながっていた。)
N:時間の経過、場所の違い、視点の違いなどについてありましたが、他に?
・中央の肌色の塊は西洋画の裸体のイメージ。女性の曲線を思わせる。
・作家の考えにそって、どんな物語を生み出すような仕掛けが盛り込まれているのかを考えると、時間の流れや視点の違いなどが盛り込まれているのかな、カップなどモノにまつわる物語もあるし、人物は寒い時期の服装なので、暖かいものを食べているのかな、とか、それぞれの人の素朴な日常、人となりなどが感じられる。いろんな人がいることから、組み合わせ次第でいろんなストーリーが増殖していくような感じ。
・こんなに人がたくさんいるのに、誰も目を合わせていない、会話もしていないし、人と人との関係性が感じられない。そう考えると、現代風というか、孤独というか、一人ひとりが完結している。都会の中で一人一人が世界を持っていて孤立しているように感じる。
・この絵の見方、日常の見方がZoomのギャラリービューと同じだな、と感じる。この空間を共にしていて一体感を感じるが、その先の関係性は見えにくい。Zoomとこの作品の組み合わせがおもしろい。ギャラリービューで見ているそれぞれの空間みたいなものをこの作品に感じる。

N:皆さんがおっしゃったようにこの作品は空間、時間、動き、視点を変えて重ね合わせてできています。この作者はキュビズム的な答えをこの作品に込めているのでは。一つの見方がリアルではない、分解させて再構築することでリアルを求めたのがキュビズムだと思うんですけれど、クライムヘッドなりのキュビズム的な解釈の答えが、この画面だということですよね。今見ているものが本当にリアルか?リアルとは?という作者なりの表現の仕方がこれだ、ということです。そんな作品をみながら、皆さんのあらゆる種類の物語を聞くことができましたし、異なる意味の可能性を追求することができました。心残りは謎の人物の解明ができなかったことですが、いいお話ができたと思います。

【感想】
<まっつんさん>のスムーズなナビゲーションで、一見難解な作品をたくさんの意見でこの作品のごとく多面的・多角的な読み取りをみんなで深められたという実感があり、充実感を覚えました。オンラインACOPで1作品を60分かけて鑑賞するというのは初めての試みだったそうですが、まだまだ語れそうな雰囲気で終了でき、作者や作品への興味が高まりました。それが次への意欲につながります。これこそ学びの本質だと思います。そんな場を提供してくださった皆さまに感謝です!ありがとうございました。

◎チャットについて
・進行役の春日さんが、皆さんの意見の要約をタイプしてくださっていました。そのおかげで、途中離席していて戻った時に、流れがわかってよかったというご意見がありました。このレポートを書く時にも大いに参考にさせていただきました。
・<ちょなんさん>が、<まっつんさん>のスライドの作者のコンセプトをすぐにチャットに張り付けてくださったり、Zoomについての私の質問を即座にネットで調べてその情報を載せてくださったり、チャットの使い方にはいろいろあることを知りました。
・通常の「対話型鑑賞」では言葉はその場で消えてしまいます。だからこそ「聴く力」が鍛えられるのですが、学校の生徒の中には「聴くこと」が苦手な特性の子もいます。そういう人にとっては「読んで確認」できることの有効性は大きいと感じました。ただし、授業者が一人の場合はナビをしながらチャットへの書き込みは難しいので、今回<まっつんさん>がされたように、あらかじめスライドを用意しておくなどの工夫が必要かもしれないと感じました。
◎ポインティングについて
・画面全体は共有していても、今、どの点について話しているのか、意識を共有することができなければ対話が成り立ちません。Zoomでそれがどこまでできるのか疑問でしたが、ナビゲーターがポインターで示すことと、鑑賞者が説明するために矢印でポインティングすることで、双方向でより焦点化できることがわかりました。

途中、私の背後に我が家のわんこが登場したり、「ワン!」という声が混じったり、遠くに我が母の姿が映り込んだりといったハプニングがありまして、赤面ものでした。自宅からのリモートあるあるでした。次回もわんこが登場したがったらご容赦ください。次回こそ、背景を替えて臨みます!何度か経験を積んで、そのうちオンラインでナビゲーターにも挑戦してみたいです。よろしくお願いします。
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