企画展「はまだの風景画展」関連イベント「みるみるとみて話そう」
7月7日(土)14:30~14:55
作品 「船」(油彩 F60号 制作年不詳 永峯八州男) 浜田市立第二中学校 蔵
ナビゲーター 房野伸枝 鑑賞者 7名(内みるみる会員2名)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/54/4b3500b861580f2fd7e05d3d3c9740d3.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1b/74/b539872bbf5f478b61d3184b78be7504.jpg)
七夕というのに前日からの大雨。西日本では甚大な被害が出てJRも不通となり、出雲からの会員はやむを得ず出席することがかないませんでした。ですが、会場の浜田市世界子ども美術館は高台にあり雨の影響はなく開館しているということで、一人でも参加者がいれば…と集まった会員が3名、一般の方が5名でした。
今回私が作品選びで考慮したことは2つ。一つは鑑賞者の中には常連さん2名もおられたので、①初めて取り組む作品であること ②「何だろう?」「どういう意味があるのかな?」などの違和感や不思議さを感じる作品であること、でした。そこで、船が陸で修理されているが、周りによくわからない部分があり、人物も二人描かれているという作品を選びました。私自身が作品の解釈に結論を出せない「ハテナ?」を残したままナビゲートをしましたが、謎の部分をみんなで対話しながら鑑賞することで何かわかってくるのではないか、という期待を胸に鑑賞会に挑みました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/40/1256b86761ad0d6c1fe8085b32c33ce6.jpg)
<鑑賞会の様子>
ナビゲートは前回の反省をもとに、パラフレーズをくどくしないでテンポよくすることを心がけました。鑑賞中はひっきりなしに挙手があり、「よくわからないけど、何か語りたい」と思わせるような作品であることは確かでした。参加者のその気持ちを大切にどんどん語ってもらったので、参加者は言いたいことが言えた、という満足度は高かったように思います。
上部は普通の船で「船の横に日の丸が描いてあり、コンテナのようなものもあるので、遠洋か外国に航行する船。」「識別のための番号が書いてある。」などの意見が出ました。下半分は修理のためのハシゴ、板で止められた布、積み上げられた木材(解体した木材の一部?)などが描かれているのですが、ところどころつながっていないように見え、暗い部分もはっきりしていない…。「この作者は、きっと船が描きたかったんだろうけど、どうしても下のよくわからない部分が気になる」「海の色は鮮やかなのに、空は執拗に灰色に塗りこめていて、違和感がある」「全体のバランスを考えずに一部分を集中して描いているように見える」など、所々つじつまが合わないことが、参加者もナビも気になって気になって…どうしてもそこから離れられずに、見るのが止まらなくなるような作品でした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/19/dd/68df2d3188161272fd9848bb4f95ad65.jpg)
あっという間に25分間が過ぎ、最終的に「そこからどう思う?」や「作品の解釈」には至らずに鑑賞会を終えました。しかし終わった後もそこから離れがたく、次から次へと話が続いているうちに、なんと、「船は一艘ではなく、何艘かが重なっている」ということに気付いたのでした!絵の具の塗り方も個体差をつけずに塗りこんでいるためか、そこに気付かなかったのは本当に悔やまれます。これは、違和感のある下半分に固執したために時間内に発見することができなかったのが敗因でした。途中、ナビが「では、視点を変えて上の部分をよく見てみましょう。何か発見はありませんか?」と投げかけていれば、事後のような新たな見方をすることができ、そこから「たくさんの船が並び、何艘もの船をドックで修理していた、在りし日の浜田港の賑わい」という解釈にもつながったのではないか、という会員からの助言を得ました。
<会員からの意見>
・テンポよく、参加者は見つけたこと、言いたいことを言えていた。
・同じものを見て違和感や分からないことを楽しみ、みんなで絵を見る楽しみを味わうことができた、というナビの投げかけに共感できた。
・空と海の色の違いについて、「見たままを描いたわけではないんですね」とパラフレーズしたのが良かった。
・ナビのうなずきや「なるほど」「本当ですね」の返しが、意見を受け止められている感じがして良かった。
・参加者の中で一番経験の浅い人に配慮することが大切。初めて参加した男性が一人おられたが、「時間がなくて、最後まで参加できず残念です」と言って帰られたので楽しんでもらえたのだと思う。参加が2回目の女性も「とても楽しかった。いろいろな見方ができてよかった。」と言っておられ、今後も参加したいとのことだった。
今回は「違和感」や「不思議さ」をみんなで色々語り合って楽しむ、という私にとってのチャレンジは成功しましたが、「違和感を掘り下げたら新たな発見や視点が見つかった!」というハッとする瞬間を鑑賞会の時間内に共有できるようにナビゲートするべきでした。オープンエンドが対話型鑑賞のスタイルですが、そこに初見とは作品の見方が違ってくるような終盤を迎えたいものです。この作品ではそれが可能だっただけに、ナビゲーションのタイミングをつかみ損ねたという反省が残りました。次回に活かしていきたいと思います。
<お知らせ>
「正解なき時代に備えるために注目されている『美術脳』。
NY発『対話型鑑賞』を日本に紹介し、自らの大学で教鞭をとりながら後進の育成に努めてきた福のり子が熱く語る。
教育界・美術界のみならず、経済界からも注目されているアートを介したコミュニケーション教育とは?
AI時代を生きのびるために私たちにできることは何か?」(フライヤーより)
島根県造形教育研究会主催の講演会に、みるみるの会は協力しています。
入場無料・事前申し込みも不要です。
興味のある方はぜひ、足をお運びください。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4c/43/4b82b1c4fcd2cc51b459e3220278d925.jpg)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/39/2f/3b9d0834c1116f68d924249db28ae65b.jpg)
〇今後のみるみるの会鑑賞会について
・8月はお休みです
・9月8日(土)14:00~15:00 浜田市世界こども美術館にて
・10月はお休みです
・11月17日(土)14:00~15:00 浜田市世界こども美術館にて
・12月から2月にかけてグラントワ内島根県立石見美術館とのコラボイベント「みるみると見てみる?」を開催予定。
詳細につきましては、決まり次第、こちらのブログや石見美術館HPなどでお知らせいたします。
7月7日(土)14:30~14:55
作品 「船」(油彩 F60号 制作年不詳 永峯八州男) 浜田市立第二中学校 蔵
ナビゲーター 房野伸枝 鑑賞者 7名(内みるみる会員2名)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/33/54/4b3500b861580f2fd7e05d3d3c9740d3.jpg)
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七夕というのに前日からの大雨。西日本では甚大な被害が出てJRも不通となり、出雲からの会員はやむを得ず出席することがかないませんでした。ですが、会場の浜田市世界子ども美術館は高台にあり雨の影響はなく開館しているということで、一人でも参加者がいれば…と集まった会員が3名、一般の方が5名でした。
今回私が作品選びで考慮したことは2つ。一つは鑑賞者の中には常連さん2名もおられたので、①初めて取り組む作品であること ②「何だろう?」「どういう意味があるのかな?」などの違和感や不思議さを感じる作品であること、でした。そこで、船が陸で修理されているが、周りによくわからない部分があり、人物も二人描かれているという作品を選びました。私自身が作品の解釈に結論を出せない「ハテナ?」を残したままナビゲートをしましたが、謎の部分をみんなで対話しながら鑑賞することで何かわかってくるのではないか、という期待を胸に鑑賞会に挑みました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/76/40/1256b86761ad0d6c1fe8085b32c33ce6.jpg)
<鑑賞会の様子>
ナビゲートは前回の反省をもとに、パラフレーズをくどくしないでテンポよくすることを心がけました。鑑賞中はひっきりなしに挙手があり、「よくわからないけど、何か語りたい」と思わせるような作品であることは確かでした。参加者のその気持ちを大切にどんどん語ってもらったので、参加者は言いたいことが言えた、という満足度は高かったように思います。
上部は普通の船で「船の横に日の丸が描いてあり、コンテナのようなものもあるので、遠洋か外国に航行する船。」「識別のための番号が書いてある。」などの意見が出ました。下半分は修理のためのハシゴ、板で止められた布、積み上げられた木材(解体した木材の一部?)などが描かれているのですが、ところどころつながっていないように見え、暗い部分もはっきりしていない…。「この作者は、きっと船が描きたかったんだろうけど、どうしても下のよくわからない部分が気になる」「海の色は鮮やかなのに、空は執拗に灰色に塗りこめていて、違和感がある」「全体のバランスを考えずに一部分を集中して描いているように見える」など、所々つじつまが合わないことが、参加者もナビも気になって気になって…どうしてもそこから離れられずに、見るのが止まらなくなるような作品でした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/19/dd/68df2d3188161272fd9848bb4f95ad65.jpg)
あっという間に25分間が過ぎ、最終的に「そこからどう思う?」や「作品の解釈」には至らずに鑑賞会を終えました。しかし終わった後もそこから離れがたく、次から次へと話が続いているうちに、なんと、「船は一艘ではなく、何艘かが重なっている」ということに気付いたのでした!絵の具の塗り方も個体差をつけずに塗りこんでいるためか、そこに気付かなかったのは本当に悔やまれます。これは、違和感のある下半分に固執したために時間内に発見することができなかったのが敗因でした。途中、ナビが「では、視点を変えて上の部分をよく見てみましょう。何か発見はありませんか?」と投げかけていれば、事後のような新たな見方をすることができ、そこから「たくさんの船が並び、何艘もの船をドックで修理していた、在りし日の浜田港の賑わい」という解釈にもつながったのではないか、という会員からの助言を得ました。
<会員からの意見>
・テンポよく、参加者は見つけたこと、言いたいことを言えていた。
・同じものを見て違和感や分からないことを楽しみ、みんなで絵を見る楽しみを味わうことができた、というナビの投げかけに共感できた。
・空と海の色の違いについて、「見たままを描いたわけではないんですね」とパラフレーズしたのが良かった。
・ナビのうなずきや「なるほど」「本当ですね」の返しが、意見を受け止められている感じがして良かった。
・参加者の中で一番経験の浅い人に配慮することが大切。初めて参加した男性が一人おられたが、「時間がなくて、最後まで参加できず残念です」と言って帰られたので楽しんでもらえたのだと思う。参加が2回目の女性も「とても楽しかった。いろいろな見方ができてよかった。」と言っておられ、今後も参加したいとのことだった。
今回は「違和感」や「不思議さ」をみんなで色々語り合って楽しむ、という私にとってのチャレンジは成功しましたが、「違和感を掘り下げたら新たな発見や視点が見つかった!」というハッとする瞬間を鑑賞会の時間内に共有できるようにナビゲートするべきでした。オープンエンドが対話型鑑賞のスタイルですが、そこに初見とは作品の見方が違ってくるような終盤を迎えたいものです。この作品ではそれが可能だっただけに、ナビゲーションのタイミングをつかみ損ねたという反省が残りました。次回に活かしていきたいと思います。
<お知らせ>
「正解なき時代に備えるために注目されている『美術脳』。
NY発『対話型鑑賞』を日本に紹介し、自らの大学で教鞭をとりながら後進の育成に努めてきた福のり子が熱く語る。
教育界・美術界のみならず、経済界からも注目されているアートを介したコミュニケーション教育とは?
AI時代を生きのびるために私たちにできることは何か?」(フライヤーより)
島根県造形教育研究会主催の講演会に、みるみるの会は協力しています。
入場無料・事前申し込みも不要です。
興味のある方はぜひ、足をお運びください。
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〇今後のみるみるの会鑑賞会について
・8月はお休みです
・9月8日(土)14:00~15:00 浜田市世界こども美術館にて
・10月はお休みです
・11月17日(土)14:00~15:00 浜田市世界こども美術館にて
・12月から2月にかけてグラントワ内島根県立石見美術館とのコラボイベント「みるみると見てみる?」を開催予定。
詳細につきましては、決まり次第、こちらのブログや石見美術館HPなどでお知らせいたします。
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