ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会の活動報告

島根の美術教育関係者が集まって立ち上げた対話型鑑賞の普及に努める「みるみるの会」の活動情報をお知らせするブログです。

石見美術館のみるみるとみてはなそう!!展での実践報告

2013-02-20 20:49:01 | 対話型鑑賞
石見美術館のみるみるとみてはなそう!!展での実践風景です


みるみる会員の金谷が2月16日(土)14:00~ 石見美術館で対話型鑑賞の実践を行いました。
一般参加者が30余名。浜田から中学生も参加し、昨年からの対話型鑑賞活動で最多の参加者を記録しました。
以下は、金谷のレポートです。

みるみる会員の金谷です。以前のブログで予告?されていました、2月16日益田市のグラントワにある石見美術館での「みるみるとじっくりみてみる?」の実践の様子をお伝えします。

 鑑賞した作品は、「あなたはどう見る?~よく見て話そう、美術について」の展示会場の奥にある2点の写真です。向かって右の作品は、青空をバックに水辺に並んだ男の子たち。左は4人の少年たちがジュースを片手に向かい合っているのですが、その背景では何かが炎をあげて燃えているというものです。

 この日は浜田市の2つの中学校の美術部員や一般の来館者の方と一緒に、右の作品から1点ずつ語り合い、その後2作品の共通することや相違点について語り合いました。語り合う中で、同じ作品に対して相反するとらえ方や、感じ方が出てきたのがたいへん興味深かったです。
同じ空間で同じものをみていても、感じ方はひとそれぞれ違っています。だからこそ、自分の内側にわきあがった思いを言葉にして、伝えることが大切です。また、それを聞くことによって、その人の思いや感じ方を受け取る。そのような、みる・きく・はなすのグルーブの中で、一人ひとりが「ART」を体験していくのだと思います。

 たいへんうれしいことに、この日はおよそ30人というたくさんの方が鑑賞に参加してくださいました。しかし「発言したかったけど、人が多くてちょっとできなかった」という声もお聞きしました。今後、人数によってはグループ分けをするなどの工夫をして、皆さんとより濃い鑑賞の時間を共有していきたいと思います。

 長くなってしまいましたが、最後に…私はファシリテーターをする時、めちゃめちゃ緊張します。でも、めっちゃ楽しいです!ファシリテーターに興味がある方、チャレンジしてみませんか?「ART」との新しい出会いが待っていますよ!!

 金谷のレポートにもあるように、「ARTとは、ART作品と鑑賞者の間に立ち上がる不思議な関係」と言われます。かのピカソも、作品は鑑賞者がいて初めて芸術になると言っています。芸術作品は初めから芸術作品として存在するのではなく、見る人がいて、より多くの人が観る価値を感じ続けるからこそ芸術作品になるのだと思います。
 また、この対話型鑑賞を実に様々な方たちと、それは一般成人であったり、中学生だったり、小学生、幼稚園児だったりするのですが、その年齢で思ったり、感じたりすることのできる最大を受容する懐の深さを作品は持っています。その懐の深さが作品の芸術作品としての価値なのではないかと思う今日この頃です。
 人間は、有史以前より表現することを、暮らしの営みの中で連綿と続けてきました。最初は祭祀だったかもしれません。宗教的な教えを説くためのツールだった時もあるでしょう。でも、時を越え、現在に至るまで、長い年月の中で淘汰され、残ってきたもの(作品)には、残されるに値する何かがあったのだと、この鑑賞活動を実践するにつけ、強く感じざるを得ません。残るべくして残ってきたのだと、その作品の素晴らしさに改めて頭の下がる思いがします。そしてその作品が素晴らしければ素晴らしいほど、作品の本質に、幼稚園の園児でさえも迫ることができるその凄さに、この鑑賞活動の意義深さを、実践するたびに感じている今日この頃であり、志を同じくした、会員の金谷もその魅力にはまってしまった一人でしょう・・・。

引き続き、第2弾として、小学校6年生の実践アンケートの結果をUPしたいと思います。


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京大博物館で開催中のウフィッツイ美術館展で実践します

2013-02-19 20:30:23 | 対話型鑑賞
みるみるの会員が学んだ京都造形芸術大学のアートコミュニケーション研究センターとともにイベントを企画しました。


京都大学総合博物館にて現在開催中の、「ウフィツィ・ヴァーチャル・ミュージアム」展にて、対話型ギャラリートークを行います。同展覧会では、芸術の都イタリアはフィレンツェのウフィツィ美術館所蔵の傑作を最先端のデジタル技術によって再現。その並み居る「名画」を、2012年度、ACOPを経験した学生たちと、本センターと協力しながら島根で対話型鑑賞の実践を積み重ねている「みるみるの会」メンバーがナビゲーターをつとめ、楽しく鑑賞を進めていきます。

作品と、隣の人と、一緒に過ごす対話の時間。
多くの方のご参加をお待ちしています!

* 日時
2月23日(土)  11時00分~
2月24日(日)  11時00分~
3月3日(日)    11時00分~ みるみる会員担当(春日または金谷)
3月3日(日)    14時00分~ みるみる会員担当(春日または金谷)
(各回1時間程度)

* 場所
京都大学総合博物館 2階 企画展示室

* 参加費
無料です(ただし、入館料は必要です)

* 対象
どなたでもご参加していただけます
(ただし、小学生以下の場合は、保護者同伴でお願いいたします)

* 定員
各回20名 (人数に余裕がある場合は、当日参加も可能です)


お申し込みは、下記の博物館ホームページよりお願いします。
http://www.museum.kyoto-u.ac.jp/modules/event/content0303.html

と言うことで、3月2日から京都に出かけることになっています。今週末の研修会に来週のこの企画、なぜか、みるみるの会は2月~3月がとてつもなく忙しいのです。でも、年度末にもかかわらず、仕事とこの活動が両立できていることに感謝する日々です。

京都にいらっしゃる、このブログにアクセスしてくださった方、ぜひおいでください。また、遠くても興味を持たれた方、観光がてらお越しください。楽しいひと時を過ごしましょう。

では、明日のブログに、小学校の実践アンケートの結果がUPできるように、今から集計に入ります。
明日もみるみるにお越しください。
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幼稚園で実践しました。いっぱい意見が出ました。

2013-02-18 22:26:03 | 対話型鑑賞
幼稚園での実践風景です。今日は藤田嗣治の「誕生日」をみました。いっぱい意見が出ました。


今日は校区内の幼稚園で4回目の対話型鑑賞の実践でした。園児たちには「みるみるの会」で通っているようで、この日を楽しみに待っていると担任の先生からうかがって、とてもうれしく思いました。

約束の時間の10時少し前に園に着くと、園児たちは会場の遊戯室に移動するところで、大きな声であいさつしてくれました。プロジェクターの設定を並んで座って待っています。もう少しで小学1年生になる子どもたちだと思って様子をうかがいながら準備をしていると、ちゃんと座って待っていられることに、少し感動したりします。担任の先生の言われることを聞いて、指示に従えることも、小学校に入学するまでにできるようになることはとても大切なことなのだな。と感じますし、それをきちんと指導されている幼稚園の先生の苦労がしのばれたりします。そして、準備完了。いよいよ始まり、始まりです・・・。

最初に、今までみてきた絵を覚えているか尋ねたところ、なんと、ほとんどの園児が3作品全部を覚えていました。この対話型鑑賞のすごいところは、みた作品を生徒や園児が忘れないというところです。どんな名画を、うんちくたっぷりに話したとしても、ほとんど記憶に残らない過去の苦い経験を持つ身としては、驚愕に値するような現象です。わずか6歳の子どもが2か月前に見た作品を忘れずに覚えているのです!!この事実を皆さんはどう考えますか?こんなに忘れられない出来事になるからこそ、よりよい作品を選んでみせたいとも思いますが、対象となる園児、児童、生徒の年齢に即し、なおかつ、対話に適する作品を選ぶのはかなり骨の折れる作業です。でも、今日の1作は、それに十分に耐えうる名作であると手応えを感じるものです。

今日の作品はポーラ美術館収蔵の藤田嗣治の「誕生日」です。お誕生日に招かれた子どもたちが大きな円卓を囲んで座っています。壁の向こうの窓からは招かれなかった子供たちがその様子を伺っています。招かれた子どもたちは11人。うち2人が男の子?円卓を囲んで座る子どもたちの様子は誰一人として同じでなく、様々なポーズで座っています。円卓の真ん中にろうそくの立てられたケーキがあることから、園児たちは「お誕生日」であることを見抜きます。手がひっきりなしに挙がります。36名の園児が誰ももれなく1度は発言することができた今回の実践でした。

前回も多くの園児が手を挙げましたが、「1回目の人から当てるよ。」と約束を決めて、だれもが1度は言えるようにしたところ、最後に2人の園児が手が挙げられず、指名をして話してもらいました。その時に言えたことが自信になったのか、今回は終わりを迎えるまでに全員が挙手して発言していました。私もなるべく同じ子ばかりが発言することのないように1回ずつ発言できるように促しますが、30人を超えると、途中から誰が話したか、話してないのかの記憶はあいまいになります。これまでに3回しか出会ってない子どもたちですから、名前もなかなか覚えられませんし、少し暗い中ですので、名札もちゃんと見えません。でも、結果として全員が挙手をして発言できたことは担任の先生にとっては驚きと感激ひとしおだったようです。私もとてもうれしかったです。

また今日は、仲間の意見に賛成の意思表示をしたり、反対する態度が見られたのも変化だったと担任の先生がおっしゃられました。「なかなか反対だと言うのには勇気がいるようですが、今日は、『○○ちゃんの意見とは違う・・・。おかしい・・・。』という声が聞けたのは収穫だったのですが、それを手を挙げて言えなかったのが残念でした。」と会の後に話してくださいました。私は普段の園児の様子を知らないので、担任の先生ほどには驚きませんが、でも、会を追うごとに園児たちが積極的に発言できるようになっていることは感じます。そして今回の藤田の作品はそれを後押ししてくれるような作品なのです。とても素敵な作品を見つけたと、私自身もちょっと自慢な逸品です。

さて、最終回はウインスロー・ホーマーの「カントリー・スクール」にしようと考えています。小学校に入学するのを心待ちにしている園児にピッタリな作品ではないかと思っているのですが、どうなることでしょう。楽しみです。

最後に、山口県美のティーチャーズ・デイに参加してくださった先生方、最初の講義のパワポのメモが取れず、もっとゆっくり見たかったとのご意見をいただきました。下記のアドレスまでメールをくだされば、添付ファイルで資料を送りますので、アクセスしてください。

春日美由紀 u-marine@i2-sp.net

では、次回は小学校での実践後に行ったアンケートの結果を踏まえて、児童の感想なども紹介できたらと思います。
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2月23日の研修会案内を公開します

2013-02-17 22:12:08 | 対話型鑑賞
山口の津室さんからオファーがあったので、詳細をUPします。ご興味のある方、どなたでも参加可能です。

ART COMMUNICATION IN SHIMANE みるみるの会
研修会について

主 催  ART COMMUNICATION IN SHIMANE 会員

趣 旨   私たちは島根県に「対話による鑑賞」を普及させようという意思のある者たちです。私たちは自分の所属する教育機関で対話による鑑賞の実践を行っていますが、他者にその実践を見せる機会が無く、その指導に不安を感じていました。そこで、志を同じくする者が一同に介し、ナビゲーションのスキルアップを目ざして研修を積む場としてサークルを一昨年立ち上げ活動を始めましたが、研修はスキルアップのみならず、鑑賞に関する多様な研修を行うことも目的に上げ、活動を進めています。
この度は、京都大学博物館館長でもあり、古生物学研究者でもある、大野照文教授を講師に
お招きし、「脳美学 ~人はなぜ美しいと感じるのか~ 」についての講演会を開催いたします。先生は、サイエンスとアートの関係をビジュアルな切り口から捉え、研究を重ねてきておられます。対話による鑑賞スタイルでのサイエンス・ワークショップも数多く実践しておられる経歴もお持ちの多才な方です。滅多にない機会ですので、年度末を迎える慌ただしい時期ではありますが、休日の朝に脳に新しい刺激を与えてみませんか?

日 時  2月23日(土) 9:30~ 9:50 受 付(グラントワ講義室)
             10:00~10:10 開会行事 ならびに講師紹介
10:10~11:30 講演 ならびに 質疑応答
             11:30~11:40 閉会行事
             11:40~12:10 作品展示 鑑賞(各自で自由に)

会 場  グラントワ 島根県立石見美術館 講義室

講 師  京都大学(古生物学 京都大学博物館長)大野 照文 教授

内 容  講演「脳美学 ~人はなぜ美しいと感じるのか~ 」

研修費  参加費 500円
     美術館入館料
      ※年間パスポートをお持ちの方はご持参ください。
     研修費(参加費)は、資料代と、事後報告文書作成代に当てさせていただきます。
    
その他  大野先生を囲んでの懇親昼食会を開催します。
      場所:かすり(益田駅前)
      時間:12:20~

参加申込 みるみるの会 代表)春日美由紀 u-marine@i2-sp.net まで、メールにてお申し込みください。
     メールでの申込時に入力する事項について
      
      ○住所 ○氏名 ○年齢 ○性別 ○昼食会参加の有無 
      ○参加動機(差し支えなければお書きください)
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私の勤務する学校の美術部員を対象に美術館で対話型鑑賞を実践しました

2013-02-17 21:48:44 | 対話型鑑賞
私の勤務する学校の美術部員を対象に美術館で対話型鑑賞を実践しました


山口の津室さんコメントをありがとうございました。

23日の益田の研修会の詳細はこのブログの2回目に記載してありますので、ご覧ください。参加されるのであれば、お渡しした名刺のメールアドレスにお返事ください。

京都大学博物館長の大野先生の講義は私も楽しみです。大野先生は古生物学が専門なのですが、貝の生態を対話型で考えるレクチャーを小中学校や教員を対象に各地で実践されています。22日にはそのレクチャーを浜田の先生方を対象に行ってもらうことになっています。本当はそちらに出ていただくほうが面白いですけどね。目からうろこです。

でも、23日も先生が、京都造形芸術大学の福のり子教授と対話型鑑賞にかかわられるようになって、サイエンスをアートするというか、アートをサイエンスするというか、アートとサイエンスの双方向を模索する中での見解で、本邦初公開なので、必見?必聴?です。

さて、16日は益田市のグラントワにある石見美術館で開催されている「みるみるとじっくりみてみる?」の最終回でした。担当は会員の金谷でしたが、金谷の実践に先だって、私の勤務する中学校の美術部生徒を対象に私自身が実践を行いました。UPしてある画像はその時の様子の一部です。
作品はみるみるの会員でもある学芸員の廣田さんが、昨年のアメリアとの共同作業から学んだ展示方法を活かした展示となっており、クラスター(アメリアはそう呼ぶのかな?)私たちは(シークエンスと習ったのだけど)ごとに作品を固め、作品を鑑賞するようになっています。限られたコレクション作品の中から共通項を内に秘めての展示は大変だったと思いますが、なかなか意味深なものになっています。展示はまだまだされているので興味のある方はぜひ、美術館に足を運んでほしいと思います。

金谷の一般来館者対象の実践は次回のブログでUPします。今回は私の実践から・・・。

作品は入口すぐの3点で、いずれも肖像画です。素描の婦人像とモノクロ写真の女性像、油彩の画家(男)の自画像です。部員たちは学級単位で対話型鑑賞を行っていますが、部活でやるのは初めてなので、やや緊張気味でした。でも、元気のいい1年生女子がどんどん手を挙げて発言するので、手を挙げない2年生を指名しても、結構話しました。みるみる会員が見守る中の実践で、あとからの振り返りで、真ん中の写真の女性に対して「後ろに男を従えている、女ボス」と1年生の女子が発言したことに対して、結構、強気な感じの女性に対して自分なりの読み取りができていて面白かったと言ってもらいました。

3作品が近い状態で展示されているので、否応なしに3作品が目に入るのですが、向かって右側からとりあえず1点ずつ語らせ、最終的に3作品の共通項や相違点などについて語り合いました。作品をみる中で、描き手の存在についての言及があり、やはり美術部員かな?などとも思ったりしました。
この作品3点が、どうして並べてあるのか?について最後に考えるように伝え、帰りのバスの中での課題としました。さて、どんな解答が導き出されたのか、楽しみです。

対話が鑑賞では「正解」はない。と言われ、作品の「情報」も示さないのが原則ですが、適度に情報を与えたほうが対話が深まるとここ最近の実践で手応えとして感じているので、伝えるようにしています。今回も、真ん中のは写真であること、左のは油彩、右端のはデッサンであることは伝えました。表現様式の違いは早い段階で気付いていたので、情報として提示しました。そうすることで、表現様式についての言及は抑えられ、作品そのものから伝わることを考えることに専念できると感じたからです。そして、それは正解だったと思います。

対話型鑑賞の進め方にも「正解」はないと思います。どう進めるかさえもファシリテーターと鑑賞者の対話から生まれるのではないでしょうか。対話型鑑賞はジャズセッションに似ていると思います。その時その場に居合わせた人たちで作り上げていく鑑賞だと思うのです。同じ作品でもファシリテーターが違い、集う仲間が違えば、鑑賞の中身も違ったものになる。その一期一会に魅せられている私です。

さて、明日は、幼稚園での実践です。幼稚園の子どもたちが「みるみるの会」をとても楽しみにしていることが前回の実践のあとの担任の先生とのお話の中でわかり、大変感激するとともに、その責任の重さも感じているところです。明日の作品は藤田嗣治の「誕生日」です。結構盛り上がるのではないかと、今から楽しみです。

では、また!!
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