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ただの日記

「素振りから②」

2020年04月28日 | 心の持ち様
今回は「素振りから②」です。
2011.07/31 (Sun)

 昨晩、久し振りに素振りをしました。
 雨が降っているから、と言っては休み、台風が来たと言っては怠け、風呂上りで汗をかいたら二度手間だ、とか隣家が起きているからやめとこうとか。
 気がつけば二週間以上は休んでいる。

 これでは意味がない。というわけで、ちょこっと300回。
 年経た古狸、ではないけれど、体力と年齢の関係も分かって来ているから、長く休んだ後、無茶はしない。少しだけやってやめる。明後日は少し増やす。
 それを繰り返して、千回まで持って行く。
 気がつけば日数ばかりかかって、なかなか千回に戻りません。
 そんな素振りでも、前に書いたように、正しい振り方を忘れてしまうくらい筋力がついたこともあります。

 で、今回。
 この重い木刀(1,7キロ)を振り上げる時、楽に振り上げることや振り下ろした時、手首に負担がかからないようにすることをやっている自分をなんということもなく感じていました。それで、思いました。

 初めから腕力があったら、どうだったろうか。その場合、筋力は更に増加するだろうけれど、この、「楽に振り上げ、無理なく、しかも効率の良い振り下ろし方をする」ことができたろうか。

 「重い刀は軽く、軽い刀は重く遣え」という口伝は、そのまま、まだ身体のできていない者が正しい道へ進む指標です。
 体力、腕力に(その時点では)恵まれていない者の方が、このような「術」習得には向いている。いや、そのためにこそ「術」がつくられたのだったんじゃないか。
 300回くらいなら、疲れるほどのこともないので、後で、そんなことを考えていました。

 そう考えると「体力(腕力)がないから習い事をはじめられない」というのは、特に武術の世界では、自分勝手な思い込み、でしかないのかもしれません。
 体力がついてから、では、却って遠回りの稽古になってしまうこともある。
 「剣客商売」で、無外流秋山道場では、新弟子に体力をつけるためと称して、重い振り棒を千回振れるようになるまで稽古をつけないようなことを書いていましたが、小説上の話でしょうね、きっと。
 でなければ、無外流なりの太刀筋を覚えにくくなってしまう。

 「重い刀は軽く、軽い刀は重く」
 重い刀は威力のある分、鈍重になる。ならば、威力を半減させてでも、軽快に遣う工夫をした方が良い。
 軽い刀は軽快に遣える分だけ、威力はない。ならば、軽快さを半減させてでも、威力の発揮できる(軽いなりの「重さ」を十分以上に遣う)、切っ先に重さのかかる遣い方をすればよい。
 そういう振り上げ方、振り下ろし方を覚える。それが稽古です。
 ということは、これ、何も剣術に限ったことではない。あらゆる「術技」にあてはめることができるでしょう。「それぞれの長所を活かし切れ」ということです。

 ないものねだりをしてもしょうがない。そんなことよりあるものを「見事に遣い切る」。前回チラッと書いた「改善」がそうです。日本では昔から「工夫する」、といっています。
 この「工夫」と、その上にある「修練」のことを併せて、隣国では「功夫(カンフー、コンフー)」と言うそうです。
 勿論、拳法を中心とする武術限定の言葉ですが、理屈は一緒です。
 (私の)「習練、修練の程度」という意味で、「功夫」は日本では「腕前」となりますか。

 「見事に遣い切る」と言うのは、歯磨きのチューブやドモホルンリンクルのお試しセットを絞り切って、チューブを鋏で切って・・・というようなものではありません。
 「(ただ)遣い切る」のではない。「無駄なく遣い切る」ことです。

 一度でできることではない。繰り返し繰り返し、気が遠くなるほど繰り返すことによって、見事に遣い切ることができるようになる。
 武術の技を習い、数万回、数十万回と反復練習する。
 反復練習しながらも、見事な技になるよう、その都度自分でチェックし続ける。
 そうやって、「見事に遣い切る」ことに、少しずつ近づいて行く。

 工夫というものは、実はそういう類のものが本当の工夫であって、その場の思いつき、みたいなものではない。「改善」も同じ、ということになります。
 少しずつ、それぞれの状況にあった形に直していく。完璧に近づこうとする。

 「良い物を寄せ集めて、一つのものに、というのは無理なんだ、」というようなことを書いたことがあります。

 先日の大事故。
 日本も、隣国も、それぞれ「では、何をするか」を考える。
 原発を廃止する?新幹線を廃止する?

 「ある物を見事に遣い切る」
 日本の文化は、そこで開花してきたのではなかったでしょうか。
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