長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

220. 水彩画『白頭鷲・ハクトウワシ』を描く

2015-12-09 20:31:14 | 絵画・素描

先月末から今月初めにかけ、水彩画の小品『白頭鷲・ハクトウワシ』を制作した。ハクトウワシは英語名を「Bald eagle(頭の白いワシ)」と言い、1782年にアメリカ合衆国の国鳥に制定された野生鳥類である。「世界一クールな国鳥」などとも言われている。翼開長が2m強というのだから日本のワシで言えばイヌワシやオジロワシぐらいということだろうか。そして、僕の憧れの鳥でもある。

北アメリカの先住民族であるネイティブアメリカンの人々は合衆国建国のはるか昔から、このワシを聖なる存在、神(グレート・スピリット)の使いとして崇め続けてきた。大空を悠然と高く飛翔する大きな姿が神の一番近くへ行くことができると尊ばれたのだ。その羽は西部劇で登場するような彼らの正装や儀式に用いられた。

アイヌの人々も、ごく近縁種のオジロワシを「オンネウ=老大なもの」と呼び尊んだ。アラスカのネイティブとアイヌの交流を伝える伝説もあるようだ。確かにネイティブの人々の大自然や神々を讃えた言葉にはアニミズムや自然崇拝という枠組みではくくることができない我々日本人にも共通なフィーリングを感じ取ることができる。その中の僕の好きな言葉を一つあげてみよう。

「朝起きたら、太陽の光と、おまえの命と、おまえの力とに感謝することだ。どうして感謝するのか、その理由がわからないとしたら、それは、お前自身の中に、罪がとぐろを巻いている証拠だ。」 シャーニー族の首長の言葉

はるか昔、ユーラシア大陸からベーリング海峡を渡った、我々と同じモンゴロイドたち。その悠久の時を超えて、魂を宇宙や自然界のすべてのものの中に見る血脈を感じることができる。

水彩画は今回も手漉きの和紙に描いた。トーテム・ポールの屹立する夜の原野を背景にハクトウワシを肖像画風の構図で描き、頭と胸にネイティブの装飾の一部を施すことで擬人化してしまった。この鳥の持つ神聖な雰囲気が表現できただろうか。全体像は個展で観てください。

画像はトップが制作途中の水彩画。下が向って左から水彩画の部分と今回使用した絵の具。