長島充-工房通信-THE STUDIO DIARY OF Mitsuru NAGASHIMA

画家・版画家、長島充のブログです。日々の創作活動や工房周辺でのできごとなどを中心に更新していきます。

262. ペン・ドローイングを制作する日々。

2016-10-07 19:18:11 | 絵画・素描

先月より11月のグループ展に出品する作品としてペン・ドローイングを集中して描いている。

ドローイング作品を個展やグループ展の会場で発表し始めてから18年ぐらいになる。初めの頃はいろいろな画材を使用し自己の表現の可能性を模索していた。鉛筆、色鉛筆、木炭、ペンとインク、水彩、アクリルなど、画材の種類を上げればきりがない。そして単一で制作すると言うよりは複数の素材の併用、混合であり正確には「紙にミクストメディア」とデータには表記するのかも知れない。当時、個展会場にいらした美術家の大先輩から、ある忠告めいた助言をいただいたことがあった。「君のこの作品はドローイングとは言わないね。英語のドローイングというのは、『線を引く』とか『線描』という意味があるからね。これは水彩画の1種だね」と。この時は特に気にせず「そうですか…」と答えていたが、その後も何故か脳裏に残る言葉になった。

その後、水彩やアクリル、テンペラや油彩などでの絵画作品も発表するようになると、時々この言葉が浮かび上がってきた。「線描」となると画材は紙素材に鉛筆やコンテ、そして今回のタイトルのペン・ドローイングということになるだろう。実は純粋にペンによる表現というものを避けてきたところがある。それは今まで絵画と並行して制作を続けてきた銅版画の表現とバッティングするからである。銅版画の中でもエッチングやドライポイント、エングレーヴィングなどの線表現はペン・ドローイングと酷似している。と、いうよりも歴史的にみればペンの方が歴史が古いので、それをどう版画の印刷表現で表すかということで技法が生まれたのである。どこで違いを見せるか、それが問題として引っかかっていた。ところが最近、絵画作品に対するドローイング表現として再チャレンジしてみたくなった。自称「チャレンジャー」を称してもいるので。

ペン・ドローイングをアクリルなどと併用し、始めた頃は伝統的な木軸に金属のペン先をつけ、インク壺にペン先をつけてから描く方法をとっていた。この頃、イギリス製の「ジロット」というメーカーからとても上質なペン先が出ていて、東京の画材店に行っては購入していた。ペン先が柔軟で表情のある線が描けるのと、ペン先の種類が用途によってかなり多いのが魅力だった。ところが5-6年前に製造中止となってしまい、愛用者としてとても残念な思いをした。

最近ではメーカーによってネーミングが異なるが「ライナー・ペン」「フェルト・ペン」と言われるロットリングに近い良いペンの種類が充実してきている。これはペン先にフェルトを固めた素材などを使用し太さも0・03mmから2mmぐらいまで出ていて一番太いものはペン先が筆状になったものまであり、かなり変化のある線が描ける。インクは油性、水性だが乾くと耐水性など他の画材との愛称も良い。顔料を用いているので描画後の耐光性も保障されているものが多い。最近、SNSを通じて海外のアーティストと交流を持つようになったが、具象的な表現をとる画家やイラストレーターの多くがこの種のペンを用いているようだ。このことにも刺激されて新作で使用し始めている。

秋の気配が深まる季節。パネルにピンと水張りした極細の肌合いを持つ水彩用紙にライナー・ペンを縦横無尽に走らせながら集中して描写する日々を送っている。ペンの仕事が一段落したら水彩絵の具により、絵に奥行きと深さを持たせていく。しばらくは早朝から緊張した時間が続きそうだ。作品の全体像は、ぜひグループ展の会場でご覧いただきたい。画像はトップが制作中のペン・ドローイング。下がペン・ドローイング作品のディテール2カット。以前、使用していた木軸の金属ペンの先、現在、使用している各種ライナー・ペン。

 

         

 

 



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1 コメント

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いつもありがとうございます。 (uccello)
2016-10-16 20:46:00
ブロガーのみなさん、いつもマイブログにお立ち寄りいただきありがとうございます。いいね!やコメントをいただいた方々、感謝しています。
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