3/15。東京飯田橋のホテルメトロポリタン エドモントで開催された『第49回 高見順賞 贈呈式・記念パーティー』に出席してきた。
受賞されたのは兵庫県在住の詩人、時里二郎さんで作品は昨年出版された詩集「名井島」(思潮社刊)である。時里さんとは20年以上前、美術学校の先輩で版画の世界の大先輩でもある柄澤齋さんの東京の個展会場でご紹介されてからのご縁である。お二人は40年来の大親友なのである。そしてお二人とも大の「昆虫好き」で特に蝶と甲虫のカミキリムシの専門でもあり、知り合った頃からいっしょに採集旅行などをされるほどである。確か記憶では僕も昆虫好き、生き物好きということで柄澤さんに会場で紹介していただいたと思った。
その後、僕が関西方面の画廊で版画の個展を開くと、必ずお知らせし会場にお見えになったりご丁寧にご連絡をいただいたりしていた。時里さんと僕とは共通の話題が多くて、昆虫のこと、自然のこと、野鳥のこと、現代詩のこと、版画のこと、と会場では得意な分野が多いということもあり夢中になって長くお話しさせていただいた。それから新しい詩集が完成するといつもご丁寧に送ってくださる。SNSがさかんな時期になるとお互い参加しているということもあり、いろいろとやり取りさせていただき親交を深めていった。
今年に入って、「第70回読売文学賞・詩歌賞」受賞のニュースが入った。先月、授賞式があったばかりである。凄いなぁと思っていたら間もない頃、今回の「第49回 高見順賞」を連続して受賞された。わずかな期間のダブル受賞である。あっという間にSNSを通してお仲間たちの間で大評判となり「時の人」となったのである。もちろん直ぐにお祝いのメッセージを送信させていただいた。「人生、こういうことってあるんだなぁ…」。
そして今月に入って、高見順文学振興会を通して受賞記念パーティーへの招待状が届いたのである。一瞬「僕のようなものに…」と思ったのだが、またとない御めでたい席である。出席させていただくことにした。
「高見順賞」という名前は僕も20代から現代詩が好きで読んでいたので知っていた。例えば他の文学で言えば「芥川賞」や「直木賞」などと並び、詩の分野での重要な賞だという認識だったが、どうもそういう商業的なものとも正確が違うようである。詩人にとってはもっと重く、特別な意味を持つ賞だということだ。
毎年、数多く出版された現代詩の詩集の中から優れた詩人に贈られる文学賞で、高見順文学振興会が主催、5名ほどの著名な詩人によって構成された選考委員によって審査、決定発表されている。第1回は1971年で受賞者は三木卓氏と吉増剛造氏の二人が受賞している。その後の受賞者を見ても現代詩人を代表する蒼々たる名前が続き、現代詩の重要な位置づけとなっているのである。
会場に着くと受け付けのあたりで版画家の柄澤さんと愛知の版画家、戸次女史の姿を見つけた。柄澤さんが開口一番「詩人の授賞式に版画家3人が出席するなんて時里氏らしいねぇ」と言われた。いっしょに会場に入り同じ円卓に着く。パーティーは16時から選考委員の1人である吉増剛造氏の開会の挨拶から始まり、ベテラン詩人による選考経過の報告や賞の贈呈、祝辞などが続き、受賞者の挨拶となった。もちろん僕たちは時里さんの言葉を楽しみに待っていた。マイクの前に立つとやや緊張した面持だったが、話の内容が近年自己の詩作において特に思い続けていることとなると、とても詩人らしい深い考えを話された。それは「自分の書く詩、言葉が実はこの世界にもっと以前に生きていた人が書いた、あるいは話した言葉なのではないか、と感じるようになった」ということ、さらに「その言葉が自分の中に入って来て書いているという感覚になる」という意味のことを話された。仏教の「入我我入観」や「感応道交」といった境地にも通じるような感覚を連想してしまった。素晴らしいスピーチだった。ふだん詩人の方が創作においてどのようなことをリアルで考えているのかを垣間見ることができた。
その後、花束贈呈、そして無二の親友である柄澤齋さんからのお祝いの言葉と乾杯の発声。あとは大勢の来場者が自由に歓談。ファンの方々にサイン攻め、スナップ写真攻めにあっていた時里さんにようやくお声掛けしお祝いの一言を話してから記念撮影などをすることができた。「長島さん、また関西方面の画廊で発表する時にはご案内ください。野鳥の話もしましょう」と言っていただいた。時里さんのように地道にご自身の世界を追及し続けてきた創作者が、きちんと評価されるということが本当に嬉しかった。アルコールが入ってからは、あっと言う間に時間が過ぎて行った。とても和やかで良い授賞式だった。
肝心の時里さんの詩の内容について書こうと思っていたら他のことで長くなってしまった。僕は評論家ではないし僕が下手な形容を並べるよりもこのブログを読んでいる方々でご興味をお持ちの方は是非、詩集「名井島」をお手にとって読んで、感じていただきたい。詩と言うものは文学とはいえむしろ音楽に共通する感覚があり、理屈や説明ではなく読む人が、その人その人の持つフィーリングで味わうものだと思っている。
時里さん、おめでとうございます。そして良い授賞式にご招待いただきありがとうございました。これからもさらに素敵な詩集を生み出し続けてください。柄澤さん、素晴らしい詩人の方をご紹介していただき感謝いたします。
画像はトップが受賞会場での時里さんとのスナップ。下が向かって左から会場となったホテル、開会挨拶をする吉増氏、時里さん、乾杯の発声をする柄澤さん、会場に設営された高見順の写真、時里さんと友人のみなさん、詩集「名井島」、時里さんからいただいた詩集の数々。
受賞されたのは兵庫県在住の詩人、時里二郎さんで作品は昨年出版された詩集「名井島」(思潮社刊)である。時里さんとは20年以上前、美術学校の先輩で版画の世界の大先輩でもある柄澤齋さんの東京の個展会場でご紹介されてからのご縁である。お二人は40年来の大親友なのである。そしてお二人とも大の「昆虫好き」で特に蝶と甲虫のカミキリムシの専門でもあり、知り合った頃からいっしょに採集旅行などをされるほどである。確か記憶では僕も昆虫好き、生き物好きということで柄澤さんに会場で紹介していただいたと思った。
その後、僕が関西方面の画廊で版画の個展を開くと、必ずお知らせし会場にお見えになったりご丁寧にご連絡をいただいたりしていた。時里さんと僕とは共通の話題が多くて、昆虫のこと、自然のこと、野鳥のこと、現代詩のこと、版画のこと、と会場では得意な分野が多いということもあり夢中になって長くお話しさせていただいた。それから新しい詩集が完成するといつもご丁寧に送ってくださる。SNSがさかんな時期になるとお互い参加しているということもあり、いろいろとやり取りさせていただき親交を深めていった。
今年に入って、「第70回読売文学賞・詩歌賞」受賞のニュースが入った。先月、授賞式があったばかりである。凄いなぁと思っていたら間もない頃、今回の「第49回 高見順賞」を連続して受賞された。わずかな期間のダブル受賞である。あっという間にSNSを通してお仲間たちの間で大評判となり「時の人」となったのである。もちろん直ぐにお祝いのメッセージを送信させていただいた。「人生、こういうことってあるんだなぁ…」。
そして今月に入って、高見順文学振興会を通して受賞記念パーティーへの招待状が届いたのである。一瞬「僕のようなものに…」と思ったのだが、またとない御めでたい席である。出席させていただくことにした。
「高見順賞」という名前は僕も20代から現代詩が好きで読んでいたので知っていた。例えば他の文学で言えば「芥川賞」や「直木賞」などと並び、詩の分野での重要な賞だという認識だったが、どうもそういう商業的なものとも正確が違うようである。詩人にとってはもっと重く、特別な意味を持つ賞だということだ。
毎年、数多く出版された現代詩の詩集の中から優れた詩人に贈られる文学賞で、高見順文学振興会が主催、5名ほどの著名な詩人によって構成された選考委員によって審査、決定発表されている。第1回は1971年で受賞者は三木卓氏と吉増剛造氏の二人が受賞している。その後の受賞者を見ても現代詩人を代表する蒼々たる名前が続き、現代詩の重要な位置づけとなっているのである。
会場に着くと受け付けのあたりで版画家の柄澤さんと愛知の版画家、戸次女史の姿を見つけた。柄澤さんが開口一番「詩人の授賞式に版画家3人が出席するなんて時里氏らしいねぇ」と言われた。いっしょに会場に入り同じ円卓に着く。パーティーは16時から選考委員の1人である吉増剛造氏の開会の挨拶から始まり、ベテラン詩人による選考経過の報告や賞の贈呈、祝辞などが続き、受賞者の挨拶となった。もちろん僕たちは時里さんの言葉を楽しみに待っていた。マイクの前に立つとやや緊張した面持だったが、話の内容が近年自己の詩作において特に思い続けていることとなると、とても詩人らしい深い考えを話された。それは「自分の書く詩、言葉が実はこの世界にもっと以前に生きていた人が書いた、あるいは話した言葉なのではないか、と感じるようになった」ということ、さらに「その言葉が自分の中に入って来て書いているという感覚になる」という意味のことを話された。仏教の「入我我入観」や「感応道交」といった境地にも通じるような感覚を連想してしまった。素晴らしいスピーチだった。ふだん詩人の方が創作においてどのようなことをリアルで考えているのかを垣間見ることができた。
その後、花束贈呈、そして無二の親友である柄澤齋さんからのお祝いの言葉と乾杯の発声。あとは大勢の来場者が自由に歓談。ファンの方々にサイン攻め、スナップ写真攻めにあっていた時里さんにようやくお声掛けしお祝いの一言を話してから記念撮影などをすることができた。「長島さん、また関西方面の画廊で発表する時にはご案内ください。野鳥の話もしましょう」と言っていただいた。時里さんのように地道にご自身の世界を追及し続けてきた創作者が、きちんと評価されるということが本当に嬉しかった。アルコールが入ってからは、あっと言う間に時間が過ぎて行った。とても和やかで良い授賞式だった。
肝心の時里さんの詩の内容について書こうと思っていたら他のことで長くなってしまった。僕は評論家ではないし僕が下手な形容を並べるよりもこのブログを読んでいる方々でご興味をお持ちの方は是非、詩集「名井島」をお手にとって読んで、感じていただきたい。詩と言うものは文学とはいえむしろ音楽に共通する感覚があり、理屈や説明ではなく読む人が、その人その人の持つフィーリングで味わうものだと思っている。
時里さん、おめでとうございます。そして良い授賞式にご招待いただきありがとうございました。これからもさらに素敵な詩集を生み出し続けてください。柄澤さん、素晴らしい詩人の方をご紹介していただき感謝いたします。
画像はトップが受賞会場での時里さんとのスナップ。下が向かって左から会場となったホテル、開会挨拶をする吉増氏、時里さん、乾杯の発声をする柄澤さん、会場に設営された高見順の写真、時里さんと友人のみなさん、詩集「名井島」、時里さんからいただいた詩集の数々。