宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

ガスが増えると切り替わる、銀河中心ブラックホールのX線放射

2014年09月27日 | 宇宙 space
天文衛星“すざく”によるX線観測から、
活動銀河核のブラックホールに流れ込むガスが、ある一定の量を超えると、
放射されるX線の成分や量、変動の仕方が、劇的に変化することが分かりました。

どうやら、ガスの重力エネルギーを放射に変換する機構が、
ガスの量次第で、異なる動作モードに切り替わるようです。
“NGC 3227”中心部の活動銀河核と、
推測される巨大ブラックホール周辺の構造。

今回の研究では、
しし座の方向約7700万光年彼方にある、
銀河“NGC 3227”の中心にある巨大ブラックホールを、
“すざく”のX線観測データから調べています。

この銀河中心ブラックホールには、大量のガスが吸い込まれ、
その重力エネルギーが変換されることで、強い放射となり明るく輝いています。

こうした活動銀河核のブラックホールを、やや離れて取り巻くガスの円盤からは可視光線が、
ブラックホールに近い領域の高温電子からは、X線が放射されると考えられています。
活動銀河核のX線強度相関図。
ある強度を境にして、X線のスペクトル構成が劇的に変化することが分かる。

銀河からのX線放射量および、
個々のX線光子が持つエネルギーの変化に着目して解析したところ、
ブラックホールへのガス流入量が少ない時には、
放射量が小さくエネルギーが高めのX線で構成され、
成分が、ゆるやかに変動することが分かりました。

一方、流入量がある境界を超えると、エネルギーが低めの別のX線成分が現れ、
放射量の増大とともに、激しく変動し始めることも分かりました。

ガスの重力エネルギーを放射に替える「活動銀河核エンジン」の中に、
異なる働きを担う2つの部分が存在し、
吸い込まれるガスの量が少ない時には、そのうちの片側だけが、
ガスの量が増えてくると両方が働き出すという、
活動銀河核の新しい機能や構造が示されることになりました。