宇宙のはなしと、ときどきツーリング

モバライダー mobarider

撮影は偶然(^^ゞ でもチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の何かが分かるかも…

2016年05月26日 | 宇宙 space
すばる望遠鏡が、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星の姿を「偶然」とらえた画像が公開されました。

視野の広い、
すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ“ハイパー・シュプリーム・カム(HSC)”が、
この彗星を撮影したそうです。
超広視野主焦点カメラの視野に入り込んだチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星。

チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星は、太陽を6.57年の周期で公転する短周期彗星です。

2014年には、ヨーロッパ宇宙機関の探査機“ロゼッタ”が到達し、
周囲を飛行しながら調査が行われました。

さらに“ロゼッタ”から分離した降下機“フィラエ”が着陸したことで、
有名になった彗星でもあるんですねー
これが人類史上初の彗星への着陸になりました。


偶然とらえた画像

観測当時にチュリュモフ・ゲラシメンコ彗星がいたのは、
地球から2億キロほど離れた火星軌道と木星軌道の中間付近。

実は、この時のすばる望遠鏡の観測ターゲットは、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星ではありませんでした。

すばる望遠鏡が本来狙っていたのは、
しし座の方向1億8000万光年彼方の銀河群“HCG 59(ヒクソン・コンパクト銀河群59)”。

彗星は日々天球上を移動しているので、
ちょうど銀河群“HCG 59”の近くにあるときに観測が行われることに…

“ハイパー・シュプリーム・カム”の視野は広いので、偶然写り込んだという訳です。
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(下)。
2016年3月8日 ハワイ時間の02:40~03:50ごろに撮影。
左の明るい部分がコマで右斜め下に伸びるのがダストの尾。
中央を左右に横切っているのがダストトレイル。

観測は、今年から取り入れられた“キュー観測”というシステムによって、
この日この時刻に、たまたま行われたものでした。

“キュー観測”というのはは、天候・空の条件や採択課題の優先度などを考慮して、
その夜の観測天体・天域をリストの中から柔軟に選びながら進める観測方法です。

ただ、“HCG 59”の優先度は低かったんですねー
なので、当初別の観測が行われる予定でした。

ところが、当夜は薄曇りで観測条件が悪かったので、
雲の影響を受けにくい“HCG 59”観測の優先度は上がることになります。

この日は“キュー観測”導入初日。
とらえられたこの画像には、明るいコマに加えて、
長いダストトレイルもはっきりと写っていました。

天候が悪く、優先度が低い観測なので、
銀河群が観測されていただけで十分なはずなのに、
その中にこんな「おまけ」まで写っていたんですねー

さらに、この偶然得られた画像から、
チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星のまだ知られていない何かが、
分かるかもしれないそうです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星表面の氷は水と確認

日本も月面探査へ! 2019年打ち上げの探査機は三菱電機が製造

2016年05月25日 | 月の探査
月面探査というとアメリカやロシア、そして中国が進めていて、
日本は遅れているイメージがありますよねー

でも、そんな状況ももうすぐ変わりそうです。

18日の日本経済新聞によると、
三菱電機が日本初の月面探査機の製造を受注したそうです。
打ち上げ予定は2019年になります。

JAXAは以前から、
無人月探査機“SLIM(Smart Lander for Investigating Moopn)”を、
2019年度の後半に打ち上げると発表していました。

“SLIM”というのは、
「小型軽量な探査機システム」と「重力天体への高精度着陸技術」の、
2つの実現を目指す工学実験。

これらの技術を小型探査機による月面着陸によって実証する計画です。

無人機の月面着陸は、
これまでに旧ソ連やアメリカ、中国が成功しているのですが、
目標地点に対しての誤差は数キロもありました。

それを“SLIM”は、
将来の惑星探査も視野に入れて誤差を100メートルまで縮め、
ピンポイントで目標地点への軟着陸を目指します。


周回観測から月面探査へ

日本の月探査は、2007年に打ち上げられ、
月を周回観測した月周回衛星“かぐや”以来になります。

“かぐや”は月面に縦穴を見つけていて、
縦穴は月内部を探る手がかりになると同時に、
将来の有人探査の際には基地になる可能性もあるそうです。

なので“SLIM”はこの縦穴への着陸も視野に入れています。

小惑星探査機“はやぶさ”が小惑星イトカワに着陸したのが2005年、
小惑星の重力は微小なのに対して、月には地球の6分の1程度の重力があります。

今回の月着陸は、この重力を制御できるかが成功へのカギになるのかもしれません。

“SLIM”の打ち上げには、
国産の固体燃料ロケット“イプシロン”が使われるようですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ “SELENE-2”は着陸船と探査車を使った次期月探査ミッション

とても効率の良い加熱機構が、衛星イオの周囲で働いている?

2016年05月24日 | 木星の探査
木星の衛星イオの大気から、宇宙空間に放出されてプラズマ状態になったガスを、
惑星分光観測衛星“ひさき”が観測したんですねー

とくにイオの周りで、プラズマが非常に高温になっていることが分かったので、
プラズマ加熱のメカニズムを解明する手がかりになるかもしれません。


プラズマトーラスの観測

惑星や衛星の周囲では、分子や原子は電離してプラズマの状態になっています。

プラズマの温度は大気に比べてかなり高く、
宇宙空間でどのようにプラズマが加熱されているのかについて、
そのメカニズムは良く分かっていません。

今回プラズマが観測された木星の衛星イオは、
太陽系で最も活発な火山活動をもつ天体で、
大気は二酸化硫黄を主成分とする火山性ガスで出来ています。

このガスが宇宙空間へ流出して、
イオの公転軌道に沿ってドーナツ状に分布した濃いプラズマ“プラズマトーラス”を形成しています。

このトーラスを、高温電子がイオンに衝突して発光する極端紫外線で観測すると、
電子の加熱機構を研究することができるんですねー
イオの周辺で発生するプラズマ加熱のイメージ図。
黄色い線はイオを貫く木星の磁力線を表す。

今回研究グループは、
惑星分光衛星“ひさき”を用いてプラズマトーラスの硫化物イオンの発光を観測し、
極端紫外線がイオの下流で強くなることを明らかにしています。

トーラスは、木星の周りを木星の自転に伴って約10時間周期で回転。

でも、イオンの発光の強さはイオの周囲で急上昇していて、
プラズマの流れが、公転周期が約42時間のイオを通過した際に、
高温電子が発生していることを示していました。

その後、高温電子は、
周りのイオンに衝突して極端紫外線を放射しエネルギーを失っていくため、
発光強度はイオから下流側に離れるにつれて下がっています。

木星、イオ、イオのプラズマトーラスを北から見たイメージ図(左)。
青はプラズマ、オレンジは高温電子が存在する場所。
プラズマトーラスの硫化物イオン(S2-)の発光強度の分布(右)。
イオの場所で強度が急上昇し、ゆるやかに減少していく。

これまで電子化熱は10日程度かけて、ゆっくり起こると考えられてきました。

でも“ひさき”の観測結果は、
10時間以内の短時間で高温電子が発生することを示すことに…

イオの周囲では、
非常に効率の良い加熱機構が働いていることが明らかになったんですねー

電離した直後のイオンから発生する電場・磁場の波のエネルギーが、
電子を加熱する。 っというのが加熱機構の候補として考えられているようです。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 地球以外ではここだけ! 衛星イオで起こった3度の大規模噴火

ドラゴン宇宙船が帰還! おみやげは有人火星探査に役立つサンプル

2016年05月23日 | 宇宙へ!(民間企業の挑戦)
補給ミッションを終えたドラゴン宇宙船が、
国際宇宙ステーションから切り離されました。

ドラゴン宇宙船はパラシュートを使い、東部時間の14時51分に太平洋に着水。
そう無事地球に帰還したんですねー


実験試料の回収

国際宇宙ステーションへの補給を終えたドラゴン宇宙船は、
約1か月間ステーションにドッキングして地球を回っていました。

他の補給船は国際宇宙ステーションへ補給物資を送り届けると、
ステーション内で発生したゴミなどが搭載され大気圏へと降下し、
燃え尽きる運命にあります。

でもドラゴン宇宙船は大気圏再突入能力を備えているので、
実験試料の回収にも使用出来るんですねー

今回搭載されたのは、
スコット・ケリー宇宙飛行士による生物学的なサンプル資料。

ケリー宇宙飛行士は340日間という長期間、
「微重力下における人体への影響」を調べるためにステーションに滞在していたので、
そのサンプルが地球に帰還したことになります。

またケリー宇宙飛行士は、
国際宇宙ステーションでの滞在期間中に、身長が5センチも伸びたそうです。

カナダアーム2という作業のアームで切り離されたドラゴン宇宙船は、
スラスタ-を3回噴射し、国際宇宙ステーションから離脱。

単独飛行を行った後、再度スラスターを噴射し軌道速度を落としていきます。

そして、非与圧部のトランクと太陽電池パドルを投棄してから、
大気圏へ再突入しています。


有人火星ミッション

ドラゴン宇宙船は、将来宇宙飛行士が乗船した状態では、
逆噴射による着陸も想定されています。

また2018年の無人火星探査の際も、逆噴射での着陸が予定されているんですねー

今後、ドラゴン補給船はカリフォルニアのロングビーチに運ばれ、
サンプル資料などが取りだされることになります。

回収された「微重力下における人体への影響」のサンプルは、
将来の有人火星探査ミッションなどにおいても役立つはずです。

宇宙空間で健康にミッションを遂行するヒントが得られると、
火星探査など長期ミッション実現へ一歩近づくことになりますね。


こちらの記事もどうぞ ⇒ 民間企業のスペースX社が火星探査を2018年に実施へ!

宇宙の3次元地図を作ってみると、一般相対性理論の正しさが検証できた

2016年05月22日 | 宇宙 space
すばる望遠鏡を用いた銀河サーベイ“FastSound”により、
宇宙の3次元地図が作られました。

作られた3次元地図は、
130億光年もの遠距離にある約3000個の銀河までの距離に基づくもの。

さらに、地図の中で銀河の運動を詳しく調べてみると、
大規模構造が成長していく速度を初めて測定することが出来たんですねー

そして、この測定結果から確かめられたのが、
遠方宇宙でも構造形成速度が一般相対性理論の予測と一致することでした。


一般相対性理論の検証

宇宙はビッグバンで誕生して以来、膨張を続けています。

単純な理論予測では、その膨張速度は減速していくはずなんですが、
反対に加速膨張していることが観測から知られているんですねー

その原因としては、
  ダークエネルギーが宇宙を満たしている
  宇宙論が基礎に仮定している一般相対性理論が破綻している
という2つの可能性が考えられますが、いまだ未解明のままになっています。

宇宙の加速膨張は、100年前にアインシュタインが発表した一般相対性理論に、
“宇宙定数”というものを追加することで理論的に説明することができます。

ただ一般相対性理論は、
太陽系以下のスケールでは高い精度実験で検証されているのですが、
100億光年を超えるような宇宙論的なスケールでも成り立つかどうかは分かっていません。

そこで理論の検証方法として登場したのが、
遠くの銀河を多数観測して、その距離を測定し、宇宙における銀河の3次元分布、
つまり宇宙の大規模構造を調べることでした。

網の目のような宇宙の大規模構造が、
広がるにつれて、個々の銀河がどのくらいの速度で運動しているのか?

これを調べることで、大規模構造の成長速度を測り、
その速度が一般相対性理論の予想と合っているかを検証することになります。

今回研究グループが試みたのは、
すばる望遠鏡のファイバー多天体分光器を用いて銀河サーベイ“FastSounnd”を実施し、
遠方宇宙での重力理論の検証なんですねー


銀河サーベイ“FastSounnd”

観測する天体からの光が、私たちに届くまでの時間に、
これまでの宇宙膨張を考慮して算出される距離を共動距離といいます。

この共動距離が約124億光年から147億光年、
赤方偏移の値が1.2から1.5の宇宙における銀河までの距離を、
測定するサーベイが“FastSound”です。

2012年から2014年にかけて行われた観測をもとにして、
2015年には約3000個の銀河からなる宇宙の3次元大規模構造地図が完成しています。
“FastSound”サーベイによって明らかになった3次元銀河地図。

研究チームは地図中の個々の銀河の運動を調べ、大規模構造の成長速度を測定。

測定の統計的有意度99.997%で、
100億光年を超える遠方宇宙において、これほど高いで成長速度を測定できたのは、
世界で初めてなんですねー

そして、測定値を一般相対性理論の予測値と比べてみると、
測定誤差の範囲で一致していることを確認。

この距離でも一般相対性理論の正しさが検証されたことになります。

ただ、宇宙定数の物理的な起源は依然として謎で、
今回の測定誤差の範囲内で、
わずかに重力が一般相対性理論からずれている可能性も否定はできず…

まぁー 宇宙論研究を進めていく上では、
今回の結果は重要なステップにはなるそうですよ。


こちらの記事もどうぞ ⇒ さらに詳細、広範囲の地図作成へ “スローン・デジタル・スカイ・サーベイ”