9/29のサイクリングの帰途に、去年運転を開始した長野県企業局の蛇石発電所を訪れた。
この発電所は既設ダムに追加された維持放流用の発電設備である。ダムからは農業に影響しないように、貯水池の上面の暖かい水を常時放流し、貯水池の中間から取水した冷たい水を水車に流して発電している。従って、大型の発電用水車のように、流れ落ちる水の位置エネルギーを搾り取ってなるべく多くの電気を作るといった、90%以上の効率を追求するような設計にはなっていない。
しかも最大出力は199kWと小さめなので、私の勤めていた東芝のように0.1%の効率向上の為の研究開発に、人とコストを掛け、大型で効率や信頼性を重視する水車を作るメーカーではなく、コストの安い日本の中小メーカーが契約を取り、機器を納入している。
無人の発電所で、外の窓から内部を覗けるようになっているので、覗いてみた。発電機についている銘板を良く眺めると、Tatungの銘板が付いている。日本の中小の水車メーカーには高圧のコイルや発電機を作る能力がなかったので、台湾の大同(Tatung)から輸入したのだろう。
40年ほど前、東芝は台湾の大同電気に熱を入れ、技術移転契約を結び、多くの技術輸出をした。一番有名なものは、電気釜。数年前、日本でも話題になった、インバーターやマイコン無しの、50年前の設計を踏襲したニクロム線とバイメタルサーモの炊飯器は密林でも良く売れているようだ。
水車や発電機分野でも、技術提携契約に基づき台湾向けの水車、発電機を共同で受注したので、私も技術指導の書類を沢山作成した記憶がある。従って、この発電機の設計思想や絶縁技術などは東芝と類似した技術だと思われる。
大同の紹介では、この電気釜のルーツが日本にあることが示されているが、この台湾製の発電機のルーツが日本にあることを知っている人は少ないだろうな。
同じ設計思想の機械が日本に輸入され、据え付けられていることを喜ぶべきか、悲しむべきか?まぁ、私もGEやアリスチャルマーの輸入技術を発展させた、発電機や水車を米国で売っていたこともあるので、単純に技術の子孫が拡がったと喜ぶべきなのだろう。