幸福な高校生活を送っていた者には、単なる「筋なし、山なし、落ちなし」の映画に感じられるかも知れない。でも、私は間違いなく高校時代の、あの気持ちがよみがえってきた。
「桐島、部活やめるってよ」というタイトルではあるが、桐島という人物は登場しない(それらしい人物が屋上に腰を下ろしているワンカットが入るのみ)。バレー部のキャプテン桐島がいなくなったことによって、残された他の登場人物がどんな影響を受けるかという映画である。残された者の映画という点では、設定的に映画「キサラギ」に近いと言えよう。
何気ない高校生の日々を描いているが、描かれる世界は「部活動ヒエラルキー」である。同一の高校内であるので、学力的な差はほとんどないと思われるが、とにかく「運動部」と「文化部」と「帰宅部」とのまるっきり別世界ぶりが、35年程前の自分自身を思い出させてくれて、とてもほろ苦い気分になった。高校時代は、とにかく運動ができて、背が高く、顔がよければ、生活全般が順風満帆である。運動が野球、サッカー、柔道、バレーボールなどの花形競技なら尚更である。だから、文化部は二の次、そして、生徒会公認でない自分たちだけの同好会やサークル、そして帰宅部に至っては三・四がなくて五の次である。秋の学園祭に向かって短編8mm映画を制作したり、映画雑誌(「ロード・ショウ」7回に、「キネマ旬報」2回、「スクリーン」が1回のローテーションか?)を愛読したりしていたので、「桐島~」では神木隆之介くんが演じた前田涼也に近い位置であったのだが、芸術性をいくら語っても、運動部の連中の外見の爽やかさに負けてしまう悔しさ…。空しい…。映画では、女の世界、先輩・後輩の世界も描かれていたが、この映画の一番の描きどころはどうしようもなく出来上がっている部活のピラミッド構造である。映画研究会に属していたのでは絶対一流になることのできない生まれもっての階級社会である。つまり、「前田涼也」が部活を辞めても何も起こらないのである。
この映画は一部の人たちから共感を得るだろうが、映画「告白」のように複数の人物の視点を軸に出来事を描こうとしているのが少しもどかしい(それぞれの「金曜日」が引き続いて表現されている。ま、ここがいいという意見も聞いたが。)。小説なら、それもありかと思えるが、映像にしてしまうと余り差異のないものが続けて映されることなる。そのために、冗長な感じを抱かせてしまう点は少し残念であった。私としては複数の視点よりはスピード感を重視してほしかった。次回作に期待である。
☆ 総合得点 80点
「桐島、部活やめるってよ」というタイトルではあるが、桐島という人物は登場しない(それらしい人物が屋上に腰を下ろしているワンカットが入るのみ)。バレー部のキャプテン桐島がいなくなったことによって、残された他の登場人物がどんな影響を受けるかという映画である。残された者の映画という点では、設定的に映画「キサラギ」に近いと言えよう。
何気ない高校生の日々を描いているが、描かれる世界は「部活動ヒエラルキー」である。同一の高校内であるので、学力的な差はほとんどないと思われるが、とにかく「運動部」と「文化部」と「帰宅部」とのまるっきり別世界ぶりが、35年程前の自分自身を思い出させてくれて、とてもほろ苦い気分になった。高校時代は、とにかく運動ができて、背が高く、顔がよければ、生活全般が順風満帆である。運動が野球、サッカー、柔道、バレーボールなどの花形競技なら尚更である。だから、文化部は二の次、そして、生徒会公認でない自分たちだけの同好会やサークル、そして帰宅部に至っては三・四がなくて五の次である。秋の学園祭に向かって短編8mm映画を制作したり、映画雑誌(「ロード・ショウ」7回に、「キネマ旬報」2回、「スクリーン」が1回のローテーションか?)を愛読したりしていたので、「桐島~」では神木隆之介くんが演じた前田涼也に近い位置であったのだが、芸術性をいくら語っても、運動部の連中の外見の爽やかさに負けてしまう悔しさ…。空しい…。映画では、女の世界、先輩・後輩の世界も描かれていたが、この映画の一番の描きどころはどうしようもなく出来上がっている部活のピラミッド構造である。映画研究会に属していたのでは絶対一流になることのできない生まれもっての階級社会である。つまり、「前田涼也」が部活を辞めても何も起こらないのである。
この映画は一部の人たちから共感を得るだろうが、映画「告白」のように複数の人物の視点を軸に出来事を描こうとしているのが少しもどかしい(それぞれの「金曜日」が引き続いて表現されている。ま、ここがいいという意見も聞いたが。)。小説なら、それもありかと思えるが、映像にしてしまうと余り差異のないものが続けて映されることなる。そのために、冗長な感じを抱かせてしまう点は少し残念であった。私としては複数の視点よりはスピード感を重視してほしかった。次回作に期待である。
☆ 総合得点 80点