・素人同然の電力不足時の原発使用提案・実行不可能な再生エネリギーの大規模使用・橋下さんはやはり大阪府・市の問題に集中すべき
関電全原発、速やかに廃止…大阪市が株主提案へ
関西電力の筆頭株主である大阪市が6月の同社株主総会で株主提案する内容について、大阪府・市の統合本部は10日、全11基の原子力発電所を「可及的速やかに廃止する」など、同社定款の変更を求める8議案を決定した。
橋下徹市長は、関電株主の神戸、京都両市との共同提案を目指すが、可決には出席議決権の3分の2以上の賛成が必要で、実現は厳しそうだ。
株主提案では、自然災害やテロなどについて万全の対策を実施することを前提に、当面の原発稼働を容認する一方、将来的な原発全廃の方向性を示している。代替電源として再生可能エネルギーによる発電所の大規模な導入を求めた。
関電の経営体質の強化や透明性確保を目的に、現状で定員20人の取締役数の半減や、国や自治体からの天下り受け入れ禁止、政治家や政治団体への寄付やパーティー券購入の禁止、不要資産の売却なども盛り込んだ。
大阪市の脱原発と原発の安全性の確保の提案
・あらゆる事象について万全の対策が実施されていること(今朝のテレビによると「可能な限りの万全な対策」に変更されたそうです。)
・独自の地震・津波に関する調査を実施し安全対策を講じる
・事故発生時の損害賠償のリスクが会社の負担を超えないこと
・使用済み核燃料の処分方法の確立
・需要が供給能力を超える場合のみ必要最小限の運転を検討
・可及的速やか総ての原発を廃止、その代わり、再生可能エネルーによる発電所の大規模の導入
この大阪市の動きに対して産経は3月20日に大阪市と関電「原発全廃」案は無責任だと言う概略次のような社説で批判しています。
橋下徹大阪市長率いる「大阪維新の会」は、国政進出も目標に掲げている。国内のほとんどの原発が停止する中で、代替電源のあてもないまま、自治体として原発廃止を求めるのは無責任に過ぎる。撤回を求めたい。
原発の稼働を認めるのは、「電力が不足した場合に限る」としている。
そもそも、原発は国のエネルギー政策の根幹である。政府は現在、東日本大震災を受けて今夏をめどに将来の電源構成などエネルギー基本計画の見直しを進めている。原発の代わりに火力発電を増やす場合、海外からの燃料安定調達やCO2の削減をどう進めるかなどの課題もある。一自治体で判断すべき問題ではあるまい。
産業界には生産に影響を与えないため、原発再稼働を求める声も強い。大阪市の判断に、そうした意見は反映されているのか。
また、原発の稼働を限定的に認めるとの提案も理解しがたい。原発は稼働するまでに地元との調整を含めて時間がかかり、いったん動き出せば、24時間体制で1年超の長時間運転が適している。
夏季など、電力が不足する場合には火力発電を追加で稼働させて対応している。提案は電源特徴の実態からかけ離れている。
関電は他の電力会社に比べて原発利用率が高く、発電量の半分を原発で賄ってきた。だが、すでに11基の原発すべてが稼働停止に追い込まれ、今夏には20%前後の供給不足に陥るとも試算されている。大阪市は市内にある企業や家庭のためにも、まずは原発の再稼働で安定的な電力を確保するよう求める義務がある。
[私の意見]
私は仕事の関係で原発の中枢部まで入ったことも有りますし、海外の研修員を連れて大規模な火力発電所を見学したこともあります。
・素人同然の電力不足時の原発使用提案
電力会社の基本は、どなたも知っておられるように大規模な停電を起こさないように変動する需要に見合うように電力を供給すること、その基本は運転のキャパシティーの変動困難な原発をベースにし、容量調節が比較的容易な火力で需要の変動を補っているそうです。
大阪市の「需要が供給能力を超える場合のみ必要最小限の運転を検討」の素人染みた提案は、株主総会で一笑に付されるのが落ちで、維新の会で原発を担当している、この道ではセミプロである筈の元経済産業省の古賀茂明さんが赤恥をかくことになりそうです。
・実行不可能な再生エネルギーの大規模使用
それは維新の会の問題ですからどうでも良いことですが、問題は提案の「再生可能エネルーによる発電所の大規模の導入」が出来るかです。
日本の地形とくに関西電力の守備範囲の地形は悪く言えばちまちま、良く言えば繊細で複雑、住民と自然が共生した地域ばかりで、大規模な太陽光、風力発電には大きな問題が起こるのは必然と思うべきです。
その点では瀬戸内海、大阪湾は論外。日本海、太平洋は深海。今考えられている海洋発電装置のスケールは玩具並み、幾ら進歩しても現在の火力発電に代われるとして使えるようになるには何十年の歳月がかかります 。
大阪市のこの提案は、私が最近取り上げてきた、対案のないあっても実現性のない、野党時代の民主党そのままです。
維新の会が責任政党なら、火力発電所による代替えしかありません。
それ人聞きの良い、耳触りのよい「再生エネルギーの大規模利用」を使う所に橋下さんの限度があるような気がします。
・橋下さんはやはり大阪府・市の問題に集中すべき
読売の指摘のように、否決されると判っているこの提案で反原発の世論喚起を狙っているかも知れませんが、まるで瓦礫の広域処理運動をしている反原発派の発想そのままです。
最近の週刊誌では橋下さんの特徴の一つは「変わり身の速さ」といっていました。
それが、「あらゆる事象について”万全の対策”が実施されていること」を今朝のテレビによると「可能な限りの万全な対策」に変更されたことに現れています。
橋下さんが大阪市や府に留まればそれで通用し、皆も認めるか知れません。
然し橋下さんが国政に影響を与え始めると、古くは麻生さんの発言の振れ、鳩山さんの普天間発言のように本人の発言の振れが、政治生命にも影響を与えることになります。
橋下さんには毀誉褒貶がありますが、大阪府の改革へのやる気やその手法には評価することが多くあり、中央政界にも影響を与えています。
私は前にも書きましたが、橋下さんは大正から昭和初期に活躍した、国士、壮士だ思っています。
そんな貴重な存在の橋下さんのためだけでなく、日本のためにも、産経の言うように原発など全国的な問題は政府に任せて、大阪市や府の改革に集中し、その成果を上げて、もしその気なら中央に乗り出しても遅くはないと思うのですが。
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