普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

現場の立場から見た原子力規制庁・同委員会の設置

2012-05-17 17:53:38 | 電力、原発

・厳しい厚労省検査員と紳士的な経産省検査員・原発は厳しい標準と検査が必要・原子力規制委員会、同規制庁の責任は検査標準の政策とその実施だけ・事故処理は規制委員会を除く一本の線で・規制委員会は経産省と並列の外局へ・それに伴う問題点
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 読売新聞は原子力規制庁に関してその上に原子力規制委員会を設けると言う、自民党案の批判の原子力規制組織 自公案丸のみでは機能しないと言う概要次のような社説を出して居ます。
深刻な原子力発電所事故が起きた時、府省から独立した組織が、果たして迅速かつ的確に対処できるだろうか
・民主、自民、公明3党は非公式協議で、経済産業省原子力安全・保安院に代わる原子力規制の新組織として、環境省に「原子力規制委員会」を創設することで大筋、一致した。
・原子力規制委は、国家行政組織法3条に基づく独立性の高い「3条委員会」だ。環境相の指示を受けず、自主的に政策を決められる。「原子力規制庁」は、その下部組織として実務を担う。
・政府案の規制庁は、環境相が任命する規制庁長官がトップに立つ仕組みだが、自公両党は、それでは原発を推進する経産省や政治の圧力に抗することが出来ない、と批判してきた。
・自公案は、重大事故時でも、原子炉の制御などに関する措置は原子力規制委が担うとしており、首相の指示さえ排除している。
・だが、原子力規制委が非常時に迅速な意思決定が可能か疑問だ。独立性を重視する余り、危機対応に支障が生じてはならない
・政府案のように、原子力災害対策本部長の首相が、規制庁を含む各府省に指示し、電力会社にも関与できる方が妥当だろう。平時の防災対策や避難訓練に必要な自治体との連携も容易だ。
・自公案が原子力規制委の5人のメンバーを国会同意人事としていることも問題をはらんでいる。衆参ねじれ国会の下、日銀総裁が野党の反対で一時空席となったことがある。そんな混乱が繰り返されれば、危ういと言うほかない。
原子力規制委が反原発派の有識者らで占められることになると、規制行政が国の原子力政策を左右することにもつながりかねない
 原子力規制委の下に置かれた場合、規制庁に有能な人材がどれだけ集まるか、も心配だ。
・民自公3党は、政府案を軸に議論をやり直すべきである。

[私の意見]
・厳しい厚労省検査員と紳士的な経産省検査員

 この問題の報道を見ていて私の現役の時のことを思い出しました。
 多分今でも変わらないと思いますが、工場の定期検査のとき、高圧ガス関係の機器の検査は経済産業省、その他の圧力機器は厚労省が担当していましたが、その検査の立ち会い方法は全く違っていました。
 経産省の場合は検査機器が多いのもありますが、工場担当者の案内に従って工場を視察し、工場で用意した書類を見るだけと言う工場側から言えば大変紳士的な検査で評判は上々。 言い換えれば検査をごまかそうと思えば簡単にできる検査でした。
然し厚労省の検査は丸反対。検査官が対象の機器までもぐり込んで自分で目視検査をしますのでごまかしなど全くできません。
 検査官の中には威張りかえって、検査の準備が悪いとそのまま現場を離れ、工場が謝りを入れようが、工場のスタートが遅れようが頑として応じず、やむなく工場側がその検査官の上司にお願いすることも度々ありました。
・原発は厳しい標準と検査が必要
高圧ガス機器と違って、放射性物質を扱う設備の検査は厚労省の検査官ほどの厳しさと、検査が済まなければ再スタートさせないほどの割り切りが必要と思います。
原発の場合は今回の事故原因から見て(実はこれさえ確定していない現状は問題ですが)例えば原子炉や緊急電源装置の格納建屋の水密性、外部電源の耐震性、ベント弁の開閉状態、原子炉の計測機器の作動チェック、タンク類の津波対策などなど検査対象機器は遥かに多数に及び、検査標準も制度も遥かに多岐に亙り、細かいものにすべきです。 (話は逸れますがこの集大成こそ日本の原発のノウハウとして海外に売り出さない手はありません。)
定期検査の場合の検査員の要員数は厚労省の場合の通常の1人だけでしたが、各原発の定期修理当たり少なくとも10数人は投入しなければならないでしょう。 (現場から言えば大迷惑ですが。)
 そしてその検査の標準は今回の例で言えば、原子力規制庁が作成、そのチェックを原子力規制委員会が行うことになるのでしょう。
 詰まり現場的に考えれば、可なりの検査標準作成や現場の立ち会いのための膨大に技術者の投入と、設備の改善・強化のための専門知識(それも原子炉だけでなく付属設備や配管など広範囲の)と併せて大局的かつ長期的視野のエネルギー政策に理解を持つ人の原子力規制委員会への登用が必要になると思います。
・原子力規制委員会、原子力規制庁の責任は検査標準の政策とその実施だけ
 そして万一事故が起こったときの責任は、その検査の標準を作り、実際にそのチェックをした原子力規制委員会、原子力規制庁と、その検査をごまかした現場・電力会社が負うことになります。
・事故処理は一本の線で
 そして事故の後処理は読売が指摘したように、首相→経産省→同原発担当部門・そして事故を起こした原発の所有者の電力会社→原発の現場の一本の筋を通した線で処理をするのは当然です。
・規制委員会は経産省と並列の外局へ・それに伴う問題点
 ここで問題になるのは自己責任を防ぐため、原子力規制委員会が過大な設備を求めようとしたり、現場に出た規制庁の係官が現場に過大な要求をすることです。
 そのためには経産省と規制委員会・規制庁の調整が必要なのは、ある程度の独立性を持たせた日銀と政府との調整と同じです。
 これから言えば、規制委員会は経産省と並列の外局とするべきでしょう。
 もう一つの問題は規制庁の職員と他の省庁との交流の問題→反原発派の批判→それを恐れては職員の孤立化と昇進の見込み減少→応募者の減少と厚労省の人の例のように偏屈な職人化→現場への迷惑などの問題も出ると思います。 

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