
若い逸材が芸術監督に就任の新聞記事を読んで、嬉しくて、嘉数さんにすぐ電話した。いつもの柔軟な穏やかさで「みなさまのおかげです」と答える嘉数さんの若さの中に秘められた風格は、小さいころからお祖母さんといっしょに沖縄芝居を見てきたゆえの「ウチナーグチ」の言葉の力にも支えられている、とわたしは考えている。大城立裕先生や彼を5年間しっかり鍛え育ててきた幸喜現芸術監督よりも「語るウチナーグチ」に長けた嘉数さんである。
若さの中に総合的に大城&幸喜先生の思いをくみ取ることのできる大きな器だということは確かである。伝統芸能の様式化の問題や、どう一般大衆に世界に伝統芸を開いていくかの課題も大きい。またさらに新しい伝統の想像の花を咲かせる感性の開花が望まれる。それを十分自らの「十六夜朝顔」などの作品、また大城新作組踊の演出、現代劇の主演、その演出、と彼は5年間あらゆるジャンルで若さあふれる演技を舞台で披露した。「伊江島ハンドー小」の船頭主もまだ記憶に新しい。最近では「世替りや世替りや」の奥間親方の演技で作品を独り占めする勢いだった。
三枚目のトントンミーや間の男(マルムン)も演じられる器、沖縄芝居の醍醐味をすでに身に着けた若干33歳の嘉数さんの抜擢は「希望」になった。大城&幸喜の精神をさらに現代の視野において新たに発展させうると信じる。
もちろん伝統組踊の劇場の問題やその様式全般における課題も大きい。彼は新旧の両作品に対応できるに違いない。道彦さん!応援しています。批評は批評として厳しく現況と将来を見据えていきたいなーと思った次第です。良かった!