ぶろぐ猫の目

笑う門には福来る・・

実験中

海の稜線 黒川博行著

2024-05-28 09:15:17 | 読んだ本の紹介

海の稜線



黒川御大の初期、1987年の発行作品。

携帯電話も監視カメラもない時代、足で事件解決する



大阪府警の文田刑事、通称ブンさん、総田部長刑事、通称総長

の凸凹コンビに東京から来たキャリアの萩原警部補。

この3人が難事件に挑む。



あらすじ

名神高速で、自動車の爆破事故がおきる。

乗車していた男女が黒焦げ死体となって見つかる。

身元の判明しない遺体。捜査は難航するが

ちょっとしたきっかけから、女の身元が判明する。

そこで事件が、ある海難事故に関係していることが

捜査線上にうかんできた。



船主、傭船主、造船主、荷主、日本の海運業の仕組みが

詳細に描かれています

あとがきでは、黒川御大の親父さんが一隻船長で

海運業の裏表を知り尽くしており

黒川御大も親父さんを手伝っていたそうです



現在の時代からは想像もできないバブル崩壊後の海運不況の

深刻さがリアルにしのばれる作品となってますね



東京から来たキャリアの萩原が年上のブンと

大阪と東京の文化の違いで角突き合わせるのもおもしろい

総長の美人の娘との恋のさや当てもいいアクセント。



足で稼ぐブンと総長、頭脳で謎を解く萩原、3人のでこぼこ

タッグが一歩ずつ真相に近づいていくのが小気味いいですぞ

それにラストがなんかいい感じです

ぜひお読みください。















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絵が殺した

2024-05-22 09:18:29 | 読んだ本の紹介

絵が殺した 黒川博行

黒川御大の本を読み返してますが
大阪府警の初期シリーズ。
切れ者吉永、昼行燈小沢コンビが難事件に挑みます。

時は1990年代 バブル終焉期
発端は、大阪南部の山林の竹やぶで白骨遺体が見つかり
大阪府警が捜査に乗り出す
去年福井の断崖で行方不明になった京都の画家であることがわかり
吉永と小沢の凸凹コンビが動き出す

画家の過去を洗ううちに、画家が過去の贋作事件に
かかわっていたことがわかる。
過去の関係者を当たるうちに、関係者と目される画商が金沢で死体みつかる
連続殺人かと捜査本部が色めき立つ中
吉永は風変りな画商矢野と出会う。
矢野は京都の日本画界隈の裏事情に通じており
なにかと、吉永に知恵を授ける。

いったい矢野は何者なのか?
目的は何か?

とまあこんな感じ
1990年代初頭、携帯電話もなく
まさに足で情報を集める時代
京都から、福井、山口と広域にわたる捜査がすすみます
連続殺人で、登場人物が限られる中
トリックとアリバイを崩していく吉永。
犯人を突き止めるのだが・・
さすがに初期の作品で粗削りですが
画商の矢野がとぼけた会話でいい味を出してます。

あとがきで黒川御大が書かれてました
当時は、バブルの終焉期
バブル時代は、まさに狂騒だったと
土地や株がうなぎ上りで上がっていく時代
日本画もその例にもれず、芸術品というより
資産として売買されていたという話。
黒川御大も、土地や日本画には手を出せなかったが
株はそれなりに買っていたと
それが一瞬にして消えてしまったという
それから、本腰を入れて作家活動に入ったというような話

なんか今の状況を反省せねば
オールカントリーとかで浮かれてる場合ちゃいますね
でも資産を増やさないと、老後が心配ですしねえ
おっとそんなことはどうでもいいんです

なかなか趣のある作品でした











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燻り 黒川博行

2024-05-16 15:05:29 | 読んだ本の紹介

燻り 黒川博行

黒川御大の本を読み直してます
今回は、短編集。
9編の短編です。

人生がうまくいかず、社会の底辺で燻っている人たちの話

警察が成績を上げるため暴力団に拳銃を差し出せとたのみ、
燻っている下っ端に拳銃をコインロッカーに入れるように言う幹部
しかし運の悪いことに・・

大企業の社長の娘の濡れ場のビデオを入手した、興信所の所長
金にしようと社長をゆするが・・

パチンコのデーター書き換えの証拠のCDROMを
盗み出し、オーナーをゆするが・・

成金が死に、集めた骨董品を遺品整理に出すが
遺品の中に値打ち物の大皿を見つけた骨董商は、安く買いたたく。
数日後、オークションに流れた大皿が実は地方で強盗致傷事件の際盗まれたものと判明。
皿の出先を追ううちに・・

美大の教授の妻が、テニス教室のコーチといるところを写真に撮られ
不倫を疑われるが、その犯人は意外な人物・・

寺の住職の頭蓋骨の白骨がみつかる。住職はバブルがはじけ多額の借金を背負っていた
住職には多額の保険金がかかっており、受取人は若い妻であった。
疑った警察が妻を監視するが妻の前に現れたのは意外な人物であった。

年老いて糖尿を患っている夫。足を切断するなど余命いくばくもない
若い後妻は面倒を見る気もなく、浮気相手に愚痴る。
浮気相手の男は、夫を自殺に見せかけて殺すのだが・・

空き巣の前科を持つ男。仮出所したが空き巣を繰り返していた。
ある日、男の前に刑事が現れ別の強盗殺人のアリバイをきかれるも
男は同時刻にべつの空き巣に入っていた。
答えに窮する男がとった行動は・・

とまあこんな感じ
燻りつつ、一発逆転をねらう輩たち
なかなかそう旨い話は転がっていない
結局は手痛いしっぺ返しを食らうのであった。




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切断 黒川博行

2024-05-15 05:23:24 | 読んだ本の紹介



切断 黒川博行



黒川御大の本を読み返してます

いつもの大阪府警シリーズや疫病神シリーズのように

バディもののミステリーではなく

どちらかというと、大藪晴彦を思わせるような

ハードボイルドな作品でした



冒頭、何者かにより入院中の男が惨殺されます

男の耳がそがれ、耳の中には小指がつっこまれていました。

小指の主は、沢木。取り込み詐欺の罪で服役後、出所して行方知れず。

小指の断面には生体反応がなく、沢木も死んでおり連続殺人となる。



物語は、謎の犯人の男の目線で進んでいきます

男は詐欺事件に絡む故買屋の男を殺し、舌を切り取ります

男は続いて詐欺事件の首謀者の暴力団組長を襲うが未遂に終わる

組長の娘を誘拐し、組長を誘い出し殺そうとするが、またも失敗

娘の局部に故買屋の舌を突っ込み解放する

警察は沢木の犯行を疑うが、切断された小指は沢木が死んでいることを示している

警察は沢木の妹のはるみを追ううちに、事件の真相にたどりつく



とまあこんな感じ

謎の男の視線で物語がすすみ

ハードボイルドに関係者を殺していきます。

道具の用意から始末まで詳細に描いてあり

リアリティがあります。



携帯電話もネットもない時代のクライムサスペンスですが

古臭くない

いつの間にか、犯人に感情移入してます

なかなか面白いですぞ













































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キャッツアイころがった

2024-04-30 07:07:15 | 読んだ本の紹介

キャツアイころがった  黒川博行


第4回サントリーミステリー大賞の受賞作です

緻密な取材で有名な黒川御大。
今回は宝石業界の裏幕を描いてます。
宝石として価値があるのは、ダイヤモンド、ルビー、サファイヤ、キャッツアイだけだとか
そんな高価なキャッツアイを飲み込んだ顔なしの遺体が滋賀県の余呉湖であがります
顔はつぶされ、指先も切り取られ指紋もない。滋賀県警は威信をかけて捜査に取り組むが
身元すら判明しない。
そんな中、京都で美大生が死んでいるのが見つかる。
美大生の口の中にはキャッツアイ。
滋賀県警、京都府警は連続殺人と断定し、解決に向けて弾みがつくが
そんなおり、大阪の西成のドヤ街で浮浪者が凍死していました。
浮浪者の口からキャッツアイが転がり、大阪府警も入った広域連続殺人事件へと進展します。

美大生の同級生、啓子と弘美は死んだ美大生が殺される直前にインドへ
言っていたことを知っており、原因がインドにあるのではないかと考え、
好奇心からインドへ旅立つ。

滋賀の顔なし遺体と美大生と浮浪者、3人の殺人事件のカギを握るのがキャッツアイ。
キャッツアイの線から容疑者を絞り込もうとするが
宝石というものは正規のルートをもたず密輸入で入ってくるものが多く
有象無象のブローカーが跋扈しており
警察も手をこまねいていた。
インドにむかった啓子と弘美は美大生が描いたスケッチから一人の女性にたどり着く
そこから絡んだ糸がほぐれていきます


うまいこと作ってますね
警察の手が届かないインドでの捜索を女子大生にやらせる手法が上手いです。
まったく違和感なし。ミステリー大賞しかるべしです。
切った張ったの活劇はないですが、足で情報を積み上げる警察の地道な捜査が
まったく進展せず、空回りして読んでるほうも焦りが募ってきますが
インドでの女子大生の活躍が大きなホームランを放つ展開が小気味よいですぞ
ぜひ読んでみて。



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テトロドトキシン

2024-04-22 07:07:22 | 読んだ本の紹介

てとろどときしん 黒川博行


黒川御大の本を読み返してます。今回は『てとろどときしん』(2003年講談社文庫)。
大阪府警の捜査一課の刑事「黒マメ」コンビの二人が活躍するバディー物のミステリー。
大阪弁のボケとツッコミがつぎつぎに飛び出してきて、関西人の私には読みやすい。
出てくる地名も知ってる場所で、土地勘があってよりリアル。

黒豆コンビですがシリーズ化されてます
主人公「私」は、黒木憲造巡査部長で、通称「黒さん」独身ちょんがー。
相棒の「マメちゃん」は亀田淳也。
嫁さんと娘1人。千里の公団に住んでます。
2人は大阪府警捜査一課の刑事でマイペースながらきっちり犯人を追い込んでいくのが
面白いです

競馬か競輪で儲けた豆ちゃんに、フグをくわせろと迫る黒さん。
昔の記憶をたどり「ふぐ膳」に向かうが、店はなくなっていました。
近所の人から話を聞くと「ふぐ膳」がフグの中毒死事件を起こしたことで
一気に廃業に追い込まれたという。
ふぐ膳は地上げにあっていたという話。その跡地にはビルが建ち、1階にステーキハウスが
ステーキハウスのオーナーがふぐ膳の中居であったことに気づいた豆ちゃんは
犯罪のにおいを嗅ぎ取り、黒さんの手を借りて独自に真相を究明する。
表題のテトロドトキシンはフグの毒で猛毒ですね

表題作のほか短編が数本。
どの短編もなかなか面白い。
30年も昔の話なので、携帯電話はないし、監視カメラもありません
もちろんネットもない
そんな中、足で情報(ネタ)を稼ぎ、口で犯人を落とす。
緻密な捜査で事件を解決するミステリーの王道です
面白いです



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八号古墳に消えて 黒川博行

2024-04-18 06:56:15 | 読んだ本の紹介
八号古墳に消えて 黒川博行

いろいろあって疲れてるときには
黒川御大の本に限りますね
2004年の作品ですが、古さを感じさせない
リアルな展開がすごい

あらすじから
考古学の権威・浅川教授の遺体が大阪・八尾の遺跡発掘現場で見つかった。
体内に残された土の成分から、別の場所で殺された後に運ばれたことが判明。
考古学関係者の犯行が疑われ始める。
捜査に乗り出したのは大阪府警の名物刑事、「黒さん」こと黒木と「マメちゃん」こと亀田の“黒マメ”コンビ。
やがて、浅川の裏の顔が明らかになり始めた矢先、またしても発掘現場で不可解な死が。
手がかりは、失踪した研究者が残した写真。
そこには謎の古墳壁画が写されていた。
能天気だが、やるときはやる二人組が学界の闇に隠された真相に迫る

とまあこんな感じ
大阪を舞台に大阪弁で会話が弾む。読んでいて楽しいです
知った地名が出てくると土地勘もあるので、よけいに面白いですね

黒川御大の緻密な取材により考古学界の闇にせまります
特に古墳は、天皇の墓ということで
宮内庁の管轄。簡単に調査発掘のできるものではないそうで
いまだ発掘されていない古墳も多々あるとか

私が幼少期、高松塚古墳が発掘され
きれいな壁画が発見されたニュースはすごかったですね
その壁画が切手シートになった時は
生まれて初めて郵便局に並びましたわ

一発逆転の発見により地位を築いたり財を成したりするのが
名前を上げるのが考古学者たちの夢なんでしょう
なもんで、遺物を偽造する輩が出てきたりするわけですな

そんなどろどろとした考古学界の闇を描きつつ
能天気を装う黒豆コンビが、緻密な捜査で
証拠をひとつずつ積み重ねていく、黒川御大の真骨頂ですね
リアルな展開がすきです

巷にあふれる、映像化されて調子に乗ってる
ミステリー作家の作品の浅薄さには辟易します
そういう時に黒川御大の作品を読むとほっとしますな。



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左手首

2024-03-28 07:10:29 | 読んだ本の紹介

左手首 黒川博行

黒川御大の本を読み返してますが
やっぱ面白いですね

あらすじから
美人局のはずだった。だが、頭の弱い女が誘い込んだのはヤクザで、相棒の男が凄んでも脅しが効かない。
逆ギレするヤクザ。
女は消火器を振り下ろした。バラバラにした死体をいざ埋めようとするが……「左手首」。
解体業者と組んで事故車で稼いでいた損保・車両鑑定人(アジャスター)の悪どい手口……「解体」。
一攫千金か奈落の底か、欲の皮の突っ張った奴らが放つ最後のキツイ一発! なにわ犯罪小説七篇。

転載ここまで
浪速の雑魚犯罪者が陥る陥穽の話
世の中には旨い話はないという・・

他には
堅気が開く賭場を襲撃して賭け金を奪う話。
夫婦がマルチ商法で稼いだ金を強盗する話。
産廃業者の違法投棄をネタに脅迫する話。
ホストあがりの占い師が株券詐欺に関わる話。
元刑事が違法カジノの売上金を警察のガサ入れと騙して奪う話。

いずれも、落ちぶれた小市民が金に目をくらませて
行き当たりばったりに勝負をかけるが、世の中そう甘くなはい
完全犯罪なんかあり得ない
絶対悪事はばれるのだ
警察に追われるのはまだいいほう
やくざに追い詰められるとどうなるのか
怖い話ですぞ

関西弁のピカレスク小説は類を見ませんね
やっぱ黒川御大の本は面白いです



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剱岳 点の記

2024-03-25 09:37:51 | 読んだ本の紹介

剱岳 点の記 新田次郎

あらすじから
明治39年、参謀本部陸地測量部の測量手柴崎芳太郎は、五万分の一地形図作成のために三等三角点網を完成すべく、
北アルプス剱岳への登頂と三角点埋設の至上命令を受ける。当時の剱岳は前人未踏の信仰の山であった。
ほぼ同時期には日本山岳会(当時は山岳会と呼称)が結成され、剱岳初登頂を虎視眈々とねらっていた。
 柴崎は、かって剱岳に挑んだが登頂できなかった先輩の古田盛作ふるたせいさくを訪ねる。
古田は信頼できる案内人として、宇治長次郎を紹介した。
そして柴崎は現地へと向い、宇治長次郎と登頂路を探すが、なかなか見つからない。
そんな中、不思議な行者との出会い、山岳会の小島烏水との出会いがある・・・。

 悪天候や地元の反感、山岳会との葛藤など様々な困難と闘いながら、
柴崎測量隊は山頂をめざして進んでいく。
そして、難行苦行の末、剱岳山頂に至るが、そこで柴崎らが見たものは・・・。

※「点の記」とは - 国家基準点(三角点、水準点)ごとに、点名、所在地、設置年月日、選点者、観測者、
そこに至る順路と略図等を記載したもの。

転載ここまで
日露戦争後、地図を作成するのは軍の仕事であった。
本州で唯一地図が作成されていない空白部が剱岳であった
なぜなら、剱岳は前人未到の針の山であり、地元の立山信仰という宗教上の理由からも
人間が上ることができない山とされていた。

しかし軍はそんなことは関係ないとばかりに柴崎に剱岳の測量を命じる
それは日本山岳会が剱岳初登頂を狙っているという情報を得たためで
軍の威信をかけて初登頂を柴崎に強いるのであった。

地元の案内人長次郎の協力を得て、剱岳周辺から登山口を探すが
針の山と恐れられる剣へ足がかりが見つからず時間が過ぎていく
また地元の立山信仰の信者たちや長野県の役人などが
柴崎の邪魔をする。

あきらめかけた柴崎の前に、不思議な行者が現れ
剣を極めるなら、雪を前に上り雪を背負って帰れという不思議な言葉を
柴崎に与えるのであった

果たして柴崎一行は苦難の果てに剣の頂に到達するのだが
そこで一行が見たものは・・・

という話
明治時代の装備なんか、今とは比較にならないでしょう
藁で編んだ靴に、布製のテント。
アイゼンなんかなく鉄製の爪を草鞋に結び付けて雪山を上る
草鞋で登れない岩は裸足で登らねばならない
そんな時代に、いかにして剱岳に上ったのか?
実話ならではの迫力に満ちた小説でした。

地図を作るというのはどういうことか
ぜひ読んでほしい本です



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人面瘡探偵

2024-02-29 06:56:00 | 読んだ本の紹介

人面瘡探偵  中山七里

古本屋であまりにも奇抜な表紙を見て買ってしまった

あらすじアマゾンから
三津木六兵には秘密がある。子供の頃に負った右肩の怪我、その傷痕がある日突然しゃべりだしたのだ。
人面瘡という怪異であるそれを三津木は「ジンさん」と呼び、いつしか頼れる友人となっていった。
そして現在、相続鑑定人となった三津木に調査依頼が入る。
信州随一の山林王である本城家の当主・蔵之助の死に際し遺産分割協議を行うという。
相続人は尊大な態度の長男・武一郎、享楽主義者の次男・孝次、本城家の良心と目される三男・悦三、
知的障害のある息子と出戻ってきた長女・沙夜子の四人。
さらに家政婦の久瑠実、料理人の沢崎、顧問弁護士の柊など一癖ある人々が待ち構える。

家父長制度が色濃く残る本城家で分割協議がすんなり進むはずがない。
財産の多くを占める山林に希少な鉱物資源が眠ることが判明した夜、蔵が火事に遭う。
翌日、焼け跡から武一郎夫婦の焼死体が発見された。さらに孝次は水車小屋で不可解な死を遂げ……。
一連の経緯を追う三津木。そんな宿主にジンさんは言う。
「俺の趣味にぴったりだ。好きなんだよ、こういう横溝的展開」
さまざまな感情渦巻く本城家で起きる事件の真相とは……!?
転載ここまで


あらすじのとおり
横溝正史の世界観。内容は劣化版犬神家、悪魔の手毬歌ってとこでしょうか
長野の山奥、隔絶された田舎の豪邸で行われる殺人事件に
巻き込まれる、三津木。肩にできた人面瘡、ジンさんが本体をからかいつつ真実に導く
という設定です。
設定はいいんですけどね。いわゆる私が好きなバディー物ですが
私が好きなのは、バディー同士が互いにたりない部分を補いつつ
解決していくというパターン
今回のように、瘤の分際で偉そうにものをいうだけのバディーっていうのは
なんかむかつくだけで
面白みに欠けます

それはさておき、ミステリーとして
登場人物が限られているのに、みんなどんどん死んでいくので
犯人がおのずとわかってしまいます
書いてる本人も、はじめ設定していた犯人ですが、それではあまりにも
突飛すぎるとわかったようで途中で犯人を変えようと必死に
ラストをひねくり回してましたw
ラスト20ページ作者の苦労がしのばれます

こんなやっつけ仕事しているようでは
横溝正史の足元にも及ばないでしょうねえ

わしらが小中学生のころ、ちょうど横溝正史ブームで
犬神家の一族の助清で度肝を抜かれて
ませた連中が横溝正史を読み漁ってました
横溝正史世代にこの本は、あまりにレベルが低いねえ




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コーチ 堂場瞬一

2024-02-20 09:19:30 | 読んだ本の紹介

コーチ 堂場瞬一

古本屋の「店員おすすめ」という棚に置いてあったので
思わず買いました

ストーリー
アマゾンから
期待されながら、行き詰まっている若手刑事たちにコーチ役として派遣される人事課所属の向井。
捜査中のミスに悩む女性刑事、有名な俳優の取り調べに苦戦する刑事、尾行に失敗する刑事。
彼らに適切な助言を与える向井はなぜ刑事課ではなく人事課にいるのか?
三人は向井との関わりを語り合い、彼の過去の謎を探る。
そんな向井の過去と、三人の刑事が取り組むことになったある事件に関連が……?
堂場瞬一が描く刑事たちの人生。

この人の本初めて読みましたが
この人多作ですね、東野さんばりに書いてますね
警察小説とスポーツものがお得意だそうです
今回読んだのは警察ものでしたが

個人の感想として
うすっぺらい小説
ストーリーもとってつけたようなやっつけ仕事
伏線の回収もくそもない
中途半端感半端ない
人気タレントの傷害事件は、その犯罪動機について
思わせぶりなこと書いてて、それには触れないまま終わるし
女子大生殺人事件に至っては、元彼を出してくるのですが
何の意味があるのか?
ページ稼ぎか

だいたい
ロートルの刑事が新人を教育するという設定からして
長岡弘樹さんの「教場」をほうふつとさせます
教場はすごかった。
話の組み立て、展開もすごかったし
主人公の風間のキャラがたってましたからね
そらキムタクでドラマ化されるはずです

それを知ってるとこの本の薄っぺらさ
盛り上がりもどんでん返しもない

黒川博行御大の綿密な下調べで描かれる
警察小説からは想像もできない緩さに
軽薄さに苦笑してしまいます

次を読むことがあるのか?
スポーツものは読んでみたいですけどね







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怪物の木こり 見た目濃いけど中身すかすか

2024-02-16 08:21:03 | 読んだ本の紹介

怪物の木こり

先日、久々に本屋に行ったら平積みでこの本が積んでありました
映画化もされたということで気になってたので、買ってしまった

あらすじから
主人公は、サイコパスの二宮。気に入らない人間を躊躇なく殺す人間。
巷では、奇妙な連続殺人事件が起こっていた。
殺された被害者はすべて脳みそを持ちされていたのだ。
警察の戸城刑事(女性)が犯人を追っていた。
ある日、二宮のもとに怪物の面をつけた男が現れて
斧で襲ってきました、なんとか怪物を振り切った二宮は、
怪物を倒すために、同じくサイコパスの親友の杉谷に協力を求める。
という感じ

ここから先はネタばれ注意。
このミス大賞受賞ということですが、冒頭から脳を扱うという
描写で読者の度肝を抜くという手法。それが奏功して
読者は引き込まれますね。
でもそこまでか
文章が稚拙で、トリックも何もない薄っぺらな展開に
ページがどんどん進みますw
登場人物も少ないし、めっちゃ読みやすいw
サイコパスだけあって、簡単に人を殺すのですが
そんな簡単に人が殺せたら、ミステリー作家は苦労はないですねw

怪物の犯行動機もなにそれって感じ
主人公の心境の変化がこの物語の肝なんですが
まったく感情移入できない
とってつけたようなラストの展開
それでいいのかって
ままごとみたいな戸城刑事には失笑を禁じえませんでした
よくこれで、ミステリー大賞が取れたなって感じです

映画化したそうですが、怪物、脳みそ、サイコパス、女刑事
これは映像化しやすいでしょうね
中高生のミステリー入門にはいいのではないでしょうか
って感じです


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新田次郎 蒼氷・神々の岸壁

2024-02-13 10:10:16 | 読んだ本の紹介

新田次郎 蒼氷・神々の岸壁


山の厳しさ、山の美しさ、山の恐ろしさ……、そこに繰り広げられる人間ドラマ。
2020年、没後40年。新田次郎山岳小説で、泰然たる自然に思いを馳せる。

冬山で命を落とした弟。果たしてその死因とは。
富士、八ヶ岳、谷川岳、穂高……、山に挑む男たちの苛烈なる生。傑作四編を収録。

蒼氷
富士山頂の気象観測所
鋭いアイゼンの爪もよせつけない蒼氷に覆われる厳冬期、石が水平に飛ぶ台風シーズン――
富士山頂の苛烈な自然を背景に、若い気象観測所員の厳しい生活と、
友情と愛と死を描いて息づまる迫力をよぶ長編「蒼氷」。

主人公の守屋は、誠実な気象観測員。富士山頂での厳しい環境の中黙々と仕事をこなす
下界に降りると、令嬢の理子のもとに足しげく通う。
理子はそんな守屋の気持ちをもてあそぶようにほかの男に思わせぶりな態度をとる。
観測所に勤務している守屋のもとに、理子の恋敵が守屋をからかうように訪れる
しかし過酷な富士山の環境は、守屋の心を代弁するかのように恋敵を陥れる
圧巻は、富士山頂を襲う台風のシーン。こぶし大の石が水平に飛び
手を離れたハーケンが矢のように壁に突き刺さる。
恋敵ともいえる同僚を救うべく嵐に立ち向かう守屋であったが・・
昭和初期に書かれた本です
昭和生まれの私が読んでも、描かれた女性(理子)が、どうもしっくりこない
こんな女、富士山から転げ落ちれば面白かったのに
釈然としない思いで読んでました

神々の岸壁
ヒマラヤを夢み、岩と氷壁に青春を賭けた天才クライマーが、
登攀不能といわれた谷川岳衝立岩を征服するまでの闘志と情熱の半生を描く。
著名なクライマー南さんをモデルに描いた短編。

幼いころから独学で登山を極め、先輩諸氏から天才といわれたクライマーが
北アルプスの難攻不落の岸壁を落としていく姿をリアルに描いてます

天候に阻まれて、登頂直前で足止めを食うシーン
落ちるわけでもけがをしたわけでもないが
水がない、それで危うく命を落としかけるシーンがリアルですごかった。
人間、水がないと生きれないのだ。

疲労凍死
雪山で弟をなくした兄は、弟とバディーを組んでいた相方が殺したと疑う
雪山に疲労した弟を放ったまま救助を呼びに行った。それはわざと弟を殺したのだ
相方と弟の間には同じ女性の影がちらついていた。
ミステリー仕立ての短編で、なかなか面白かったです

新田次郎の小説の中ではB級の部類に分類されるのか
あまり人気がないようですね
でも、富士山頂上での台風のシーンは一読の価値があると思います
手に汗握ること必至。





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正義の天秤 大門剛明

2024-01-24 07:03:24 | 読んだ本の紹介

大門剛明 正義の天秤

大門さんといえば「雪冤」を読んで、酷評した記憶がありますが
そんなことすっかり忘れてて、古本屋で見かけて
法定ものということで面白そうと思い読んでみました

あらすじから

超有名法律事務所の、師団坂法律事務所のシニアパートナー佐伯の病死により
助っ人として元医師の弁護士鷹野和也が着任。
切れ者と評判の鷹野はコスト優先、改革のためリストラを通告し古手の弁護士を放逐する。
ルーム1に残ったのは、佐伯の娘芽依、元ニートの杉村、元刑事の梅津、若手ホープの元裁判官桐生
少数精鋭のメンバーで難事件の解決に取り組む。
6話の短編集となっており
1.ブレーメンの弁護士
2.カルネアデスの方舟
3.マアトの天秤
4.悪魔の代弁者
5.アメミットの牙
6.正義の迷宮
とギリシャ神話が題材になっています。
優秀ではあるが横柄でマイペースな鷹野が嫌な感じで登場し
配下の弁護士連中が集めてきた情報を聞くだけで真相にたどり着くという展開。
実は鷹野は、心に傷を負っており人一倍繊細な心を持っているのを
回を追って描いていきます。
大きな事件の被疑者の弁護をする過程で、すこしずつ情報を得て
警察も検察も気が付かなかった事件の真相を暴くのですが
その根底には「正義」というキーワードが
誰にとっての正義なのか?法律は正義の味方なのか?という視線で
読ませます

「雪冤」の時は、説教臭い書きようにうんざりした記憶がありますが
今回は、面白く読むことができました
鷹野のかかえる秘密が解決しておらず、次回作以降に引き継がれてます
続編も読みたくなってきました。

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3日間の相棒 永瀬隼介

2024-01-17 06:55:14 | 読んだ本の紹介

永瀬隼介 三日間の相棒


疫病神シリーズや大阪府警シリーズなど
黒川御大の小説ではバディ物が特に好きなんですけど
バディ物といえば、かつてのジョン&パンチ、スタスキー&ハッチ
トミーと松、最近では相棒でしょうか
全部面白い。

ということで、バディー物の小説を探してて
気になったのが、永瀬隼介の 三日間の相棒
永瀬隼介といえば、10年くらい前はまって
ポリスマン他読んだ覚えがあって、なかなか面白かった記憶が・・

古本屋で、三日間の相棒を探してて、先日ようやく見つけたので
早速読んでみました。

あらすじから

埼玉県の地方都市。繁華街のはずれでホストが1人殺されます。

事件から8年が経過し、事件も迷宮入りかという頃
1人の男が事件現場に現れます。
佐藤隆二。当初県警の捜査一課に配属されるエースで
最初の事件がこのホスト殺しであったが、軟弱と生真面目な性格が災いし
仲間から疎まれ
捜査一課から場末の警察署の会計課に飛ばされた人物
事件の迷宮入りを残念に思っていると
その場に現れたのが、自称東京歌舞伎町で探偵業を営むという
こいつも佐藤。筋肉隆々のタフガイ
どうも、8年前の事件を解決すべく埼玉の田舎へ訪れた模様。

偶然出会った佐藤と佐藤。ダブル佐藤で8年前の殺人事件を解決
すべくタッグを組むことに

とまあこんな感じですが
昨年末から、黒川御大の小説を片っ端から読み直してた私にとって
こんなしょうもない展開の小説を読むのは苦痛でした

黒川御大の小説は、微に入り細に入りリアルな描写と展開で
自分がその場にいるような気持にさせられますが

この小説は、いい加減な手あたり次第に思いつくままの展開w
なんでそんなことになるのかw
突っ込みどころ満載。

コミカルミステリーというには、シビアなバイオレンスシーンもある
どっちつかずの典型
またダブル佐藤のキャラがねえ
タフガイ佐藤のほうは、感情の起伏が激しすぎてまったく共感できない
急に怒ったり、急になついたりなんやねんこいつ

相棒の佐藤龍二については、まったく意味不明のキャラ
頭がいいわけでもなく、暴力には全く無力、
何のとりえもないキャラ。こいついなくても十分成り立つ小説ですね
なんの役にも立ってないw

読んでて、何度途中でやめて駅のごみ箱に捨ててやろうかと思いましたが
なんとか最後まで読み進めました。

黒川御大の小説を読む前だったら
楽しく読めたかもしれない。








































コメント (2)
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