日伊文化交流会

サークル「日伊文化交流会」は板橋区で生まれ、元東都生協登録サークルとしてイタリア好きの人たちが集まり楽しく活動しています

「ブラック企業」を読んで イタリア映画「見渡すかぎり人生」を思い出す

2013年05月30日 | イタリアのニュース
「ブラック企業」を読んで イタリア映画「見渡すかぎり人生」を思い出す

「いま車に轢かれたらいいのに」 この「ブラック企業」という本の中のドキッとするような記述を読んだ時 ふと頭をよぎったのは イタリア映画「見渡すかぎり人生」(Tutta la vita davanti)の冒頭シーンでした 
朝 出勤する主人公がふと 街の人々がそれは楽しく幸せそうに踊っているという まるで夢を見ているかのような ファンタジックなワンシーン…

この映画は ブラック企業(コールセンターで高額なエセ商品を売りつける)で働くイタリアの若者たちに次々と落伍者が出てゆく話(最後には経営者自身も自滅する)で 優秀な成績で大学を卒業してもなかなか就職できない今のイタリアの若者の現実を描いたものです 

そして先日読んだ「ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪」(文春文庫)には 日本でも広がりつつあるブラック企業の実態が描かれており 一気に読みました

一年間で新卒の約半数が精神を病んで退職してしまうという企業の記述には戦慄しました
利益を出すためには新卒を育てて長く使うよりも 選別して使い捨ててゆく いくらでも就職の決まらない新卒・大卒者が溢れているからと...

この本には 大量採用・大量退職で「選別」し 宗教みたいな新人研修や過労死に至るほどの残業 それは解雇すると法律上問題になるので 精神を病んで自ら退職せざるをえなくさせる「テクニック」が「専門家」のアドバイスによって導入され巧妙化・高度化しているというもので 職だけでなく健康も あるいは最悪 命も失ってしまうとあります

それは経営難によるリストラではなく 業績をあげるために人材の使い捨てを続けるというもので 結婚や子育て等の夢も持てない私生活の崩壊を引き起こし 日本という資源を食いつぶしてゆく そこでははじめから正社員を使い捨てる...

格差問題が 非正規雇用の問題から 正社員を含む若者雇用全体の問題へと移行しているというこの本の指摘 従来の日本型雇用(終身雇用と年功序列など)が崩れた現代における 人材の使い捨てを可能にする社会構造… 戦慄しました
自分のときも大変だったと指摘する親世代にも 今の雇用形態が親世代のそれとはどう変ってしまったのか知っていただければと思います 

     *     *     *

イタリア(そして欧州のいくつかの国)でもまた 若者の就職難が大きな問題となり lavoro nero (ブラックな仕事)という言葉が使われ 海外に出てゆく人が増えています 

そして「僕らは ワーキング・プー」(原題generazione 1,000 Euro)という本にも書かれていたイタリアの若者たちの実態… 「千ユーロ世代」ともいわれる非正規雇用者(プレカリアート)
この本はイタリアの若者の日常が描かれ さらっと読めます

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ちなみに日本では大卒の就職率(ごまかしのない数字)は約6割 3~4割が非正規
イタリアは新卒一斉大量採用ではないのですが 半数が非正規とのことです

失業率は 日本は4%台(若年者は約8%)
 イタリアは11~12%前後(若年者は約28%)です 

しかしそれでもイタリアの自殺率は世界で第72位で 日本の第5位と比べると格段に低いのです
詳しくは こちら

イタリアの状況はより深刻なのに自殺率は日本よりもずっと低い 

それはイタリア人はよりflessibile (フレキシブル)であること その国民性や カトリックの国であること等が理由かと思いますが その他にも「しがらみ社会の人間力」という本にもあるように 地域社会や家族等のネットワークが自殺を防ぐ大きなセーフティネットとなっているのではないかと思います

この本は「日本と酷似した経済、社会の問題をかかえながら、先進国中もっとも自殺の少ない国、 イタリア ― 北欧型福祉社会が目指すべき姿なのか? セーフティネットとしての、家族・ 地域。コミュニティのホットなつながりの可能性。」という内容です


今回思い切って書かせていただきました まだまだ結論の出ない私の拙い考えですのでその点どうかご容赦ください<(_ _)> 


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