日伊文化交流会

サークル「日伊文化交流会」は板橋区で生まれ、元東都生協登録サークルとしてイタリア好きの人たちが集まり楽しく活動しています

「ローマ帝政初期の権力継承と女性 - ドムス・アウグスタ(アウグストゥスの家)の役割 -」を聞いてきました(2018.10.20)@星美学園短期大学公開講座

2018年11月02日 | イタリアの歴史
「ローマ帝政初期の権力継承と女性 - ドムス・アウグスタ(アウグストゥスの家)の役割 -」を聞いてきました(2018.10.20)@星美学園短期大学公開講座



今回はとても楽しみにしていました 月1回の「ローマ歴史講座」で ローマ誕生からカエサルそして 今ティトゥスにたどり着いたところで ちょうど進み具合が合っていたのと 講師の先生が古代ローマの歴史の裏話を「まるで誰かがそこにいて聞いてきたかのように」まことしやかに話してくださるので 面白くて引き込まれてしまって...もっと聞いていたかったです(#^.^#)


日本等東アジアの国にとっての王位継承は 直属の男子が基本ですが 古代の西洋ではめったになく 未成年は特殊であり 最後の妻の連れ子を後継者にしたりする例もあるし 五賢帝時代などは優れた人を養子にしていたのですね

virtusというラテン語は「男らしさ」「美徳」という意味があり まるで女はそこにいないかのようです ローマ時代は建前(男尊女卑)と 実体(女傑が出現)がずれていたのだそうです


ドムス・アウグスタ
とは アウグストゥスのドムス(タウンハウス)という意味で 「アウグストゥスの家」とも訳され これは本来は一戸建ての家を指しますが 帝政期になると「家族」familiaという人間集団を指すようになってきました 

ドムスの定義については 小さなドムスの中に複数のファミリアが属していたこと それらが婚姻等によって結合されてドムスを形成していたのです

また当時は 父権に属さない結婚が通例となっていて 夫と妻は別々のファミリアに属しており 複数のファミリアが結合されてドムスが形成されるということですね 
つまり既婚女性は 婚姻に際して夫の父権(manus手権)に属さねば 実家の家父長権に服する 文字通り「娘」の地位にあるのですね

この形式の結婚が共和制中期から増えていったのだそうです 実家に籍が残ったままということです 
また子供は男2人 女1人というケースが多いのは これは生まれたあとに人数を調整していたのではないかと...

夫が亡くなった場合は 財産は主に子供に継承され妻には継承されない 夫婦間の財産の移動は1/10までとされ 夫の財産は妻を介して外に出てゆかないということですね なるほど~ 
 
ドムス・アウグスタの誕生 - リーウィアとオクタヴィアヌスの結婚 –

そのドムス・アウグスタですが オクタヴィアヌスとリーウィアの結婚で誕生したとのことです
カエサル暗殺のあとで 軍歴もない若造だったオクタヴィアヌスは カエサルの遺書の中に後継者と書かれてあったことだけが頼りで 名門出身の人妻 リーウィア・ドゥルシラとの強引な結婚(再婚)によって 勢力を拡大してゆくのですね

そしてリーウィアと前夫との子ども ティベリウスと大ドゥルススを引き取りますが 彼らはのちにアウグストゥスの後継者争いに巻き込まれてゆくのですね 

妻リーヴィアの他に ドムス・アウグスタの形成に関与した女性といえば オクタヴィアヌスの姉の小オクタヴィア そしてアウグストゥスの娘(大)ユーリアですね

結局アウグストゥスの実子は 娘大ユーリアしかいなくて 彼女は最初の夫マルケッルス(アウグストゥスの姉の息子)の死後 アウグストゥスの腹心アグリッパに嫁ぎますが その子供たち ガーイウス・カエサル ルーキウス・カエサルもまた後継者争いへと 結局若くして死んでゆきますが... それらを「家系図」を見ながらひとつひとつ説明していただきました (古代ローマを知るには家系図が必須ですね)

アウグストゥスの娘 大ユーリアは 二番目の夫アグリッパの死後はティベリウスと再婚します このティベリウスは アウグストゥスの妻リーウィアと前夫との子どもで第2代皇帝となり 弟が大ドゥルスス(のちに戦病死)です 

身体が弱かったというアウグストゥスがマラリア熱で瀕死の状態から 一気に氷で冷やして治したエピソード等 初耳でした 

アウグストゥス広場(Forum Augustus)と マルス神殿の建設

2a.C. ガーイウスとルーキウス・カエサル兄弟は フォロ・ロマーノの北側でアウグストゥス広場とマルス神殿の建設の指揮を執りました これはカエサルがこの2人を後継者にしようとしたことを示しているとのこと しかし二人とも夭折してしまうのですね...

ティベリウスはカエサルの死を受けてアウグストゥスの養子となり 14d.C. アウグストゥスがノーラの別荘で亡くなると 後継者となります 


ドムス・アウグスタの時代 - ティベリウスの権力継承と リーウィアの変貌 -


アウグストゥスの相続は 遺言により養子ティベリウスと 妻リーウィアを相続人として名前も敬称させ「ユーリア・アウグスタ(Iulia Augusta)」と名乗らせました

カエサル家の莫大な遺産は 養子ティベリウスが2/3 妻リーウィアが1/3を相続し これによりリーウィアは 皇帝となった息子ティベリウスと政治的に対等の立場に立ったといえます そのため「従順な妻にして 横暴な母親」と のちに政治に介入するようになった彼女は評されます

これは アウグストゥスの死後に 妻リーウィアを養女として アウグストゥスの名を継がせて「アウグスタ(Iulia Augusta)」を名乗ったことが大きいとのことです 
ティベリウスもTiverio Caesar Augustusと名乗りますが 母の死後に暴君と化したのです それからアウグストゥスの死についての興味深い ホントのような嘘のようなエピソードも聞きました!


ゲルマニクス一家 


ティベリウスの弟の 大ドゥルスス(戦病死)の息子たち 兄のゲルマニクス 弟のクラウディウス第4代皇帝(言語障害があったとされ 「妻の尻に敷かれなければ落ち着かない」と揶揄された)に話は移ります 早すぎる死で その死因について等 様々な話をしていただきました 

ゲルマニクスの未亡人の大アグリッピーナ(アグリッパとユーリアの娘)は ティベリウス(ユーリアの次の夫)と対立の末 島流しに遭って餓死したそうです 

その大アグリッピーナと ティベリウスの長男(養子)ゲルマニクスの子供に 第3代皇帝のカリグラ(ガーイウス)*がいますが のちに暴君となってしまい 妹ドゥルシッラとの姦通も古代から取りざたされています  
  * この項目の下に家系図があります

このカリグラの妹の小アグリッピーナ 彼女はクラウディウスの妻の死のあとで彼と再婚しますが 叔父と姪との結婚を強行したのですね 彼女の血筋は大変よく(アウグストゥスやティベリウスの血を引く家系) ドムス・アウグスタの主流に位置する女性でした 

そして 小アグリッピーナは 夫クラウディウスの死後(毒茸暗殺説も...) 前夫との息子ネロを第5代皇帝に即位させます そして「アウグスタ」として政治に大きな影響を与えたのですが のちに暴君となるネロによって殺されてしまいますね

私はこの講座の前書きを読んで「きっとネロの母親が話に出るにちがいない」と思っていたのですが その通りでした('◇')ゞ

こうして ネロの死とともに「ドムス・アウグスタ」の時代は終わりを告げるのですね 

歴史家タキトゥス曰く ネロの次の皇帝ガルバは 「アウグストゥスはドムスの中で後継者を探したが 私は国家 res publicaの中で探した」と述べたと言います

こうして ドムス・アウグスタの時代が終焉を迎え 女が権力を持つ時代もなくなってゆきました  


ローマ帝国について ほどよく知っているが さほど詳しいわけではないくらいの今の私が ちょうどよかったのかな(笑)? 色々な話に驚いたり感心したりしながらの2時間講座でした!!

公開講座は こちら

とても興味深い講座を開催してくださいました星美学園短期大学様に 心よりお礼申し上げます




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