日本農業新聞e農ネットの[崩れるモデル経営 緊迫TPP]に「養豚 高度化努力 無駄に 愛知県幸田町 (2013/10/1)」という記事が出ていた。
内容は以下の通り
規模拡大や生産の効率化で経営改善を進めてきた養豚業界。TPPで関税が無くなれば、国産豚肉のシェアは奪われ、飼養頭数の激減は避けられない。
飼料価格の高止まりが続く中、飼養頭数の減少は生産性を再び下げる恐れがある。
銘柄豚生産者にも「安い輸入豚肉との価格競争に加え、飼料の経費増に勝てるのか」との不安が付きまとう。
愛知県幸田町で年間9000頭を出荷する(有)マルミファームはこの十数年、規模の倍増と液状飼料の自動給餌化に向けた投資を積極的に行い、無駄のない経営を進めてきた。
獣医師資格を持つ社長の稲吉克仁さん(43)は、2001年に後継者として入社。
欧米の最新設備を学び、経営拡大の最前線に立った。
飼料コストの低減と良食味の両立のため、克仁さんの父で同社会長の弘之さん(73)が1998年から始めたビタミンE強化飼料の共同購入組織「やまびこ会」の取り組みに加え、液状飼料にエコフィードを使った省コスト化を実践。
飼料全体の4割をエコフィード化し、全量配合に比べ価格を2、3割安く抑えている。
「やまびこ会」は、愛知を中心とした6県の25戸で構成し、銘柄豚「夢やまびこ豚」を生産する。
国のTPP試算では“生き残る”とされる銘柄豚だが、その定義は曖昧だ。
何らかの基準を設けて販売される豚肉は、300種類以上にもなるといわれている。
克仁さんは「低コストで生産し高付加価値で売らないと、飼料高さえ切り抜けられない。TPPとなれば、味でも差をつけてやっと銘柄として残れるのでは」と考える。
だが、これまで積極的に進めてきた規模拡大には「慎重にならざるを得ない」と言う。
TPPによる輸入豚肉の増大で国産枝肉価格が下がれば、日本全体の飼養頭数が減る。
大量飼育による飼料コストの圧縮は難しくなり、高度化を進めてきた経営モデルを一から見直さざるを得ないからだ。
養豚農家は2月時点で、10年前の6割に当たる5570戸まで減少した。
高齢化や飼料高騰が要因だ。
一方、規模拡大で経営の効率化が進み、飼養頭数は968万5000頭と、10年前の水準を保つ。
豚肉の自給率は重量ベースで53%(12年度概算)で、何とか半数以上を堅持する状況だ。
弘之さんは日本養豚協会の代表副会長として、マレーシア、ブルネイでのTPP交渉時に、現地で「国益がなければ即時脱退を」と訴えてきた。
40年前に母豚36頭から始めた養豚は、社員6人の雇用をはじめ、地域経済を支える産業の一つになっている。
「地域の活力をどうか奪わないでほしい」。
弘之さんは声を絞り出すように語った。
・関連産業も空洞化
政府統一試算は、関税が撤廃された場合、豚肉の生産量は70%、生産額は約4600億円減少すると見込む。
残る豚肉の価格も下落を見込む。
現行の豚肉の関税制度は、低価格品ほど高い関税率となる「差額関税制度」で安い海外産豚肉の過剰輸入を抑えている。
関税を除く輸入価格(CIF=運賃保険料込み)が1キロ64.53円以下の場合、482円を関税として課し、64.53円より高く524円以下の場合は基準輸入価格(546.53円)との差額を関税として課す。
524円を上回る高級部位の場合は4.3%と低い関税率が課される。
関税がなくなれば、加工・業務向けの低級部位の輸入が急増する公算が大きい。
東京の輸入業者は「ハムやソーセージの原料は1キロ300円程度で輸入可能になる」と強調。
「国内養豚業は太刀打ちできない」とみる。
人口や需要が増すアジアに食肉業者の進出が進み、「国内養豚業はほぼ壊滅する」と警鐘を鳴らす。
というもの。
これって、けっしてオーバーに言っているわけではない。
でも、これを知っている消費者は、皆無に等しいだろうと思う。
多分、国内産が食べられなくなったら、気が付くんだろう。
その時には、もうどうにもならなくなってしまっているが・・・