ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

子ども能…プレ公演。良い出来でした!

2010-09-13 12:30:50 | 能楽

昨日は伊豆で子ども創作能のプレ公演でした。

いや、想像以上に良い出来になりました! まずはこの子どもたちの「眼」を見て欲しいです。この真剣な…というよりも「強い」まなざし…もうほとんど役者の目ですな。






タイトル画像は主役・頼朝役のリツカ、こちらの画像は準主役・山木兼隆役のミサトと、もう一枚は地謡ですが、なんと今年は子ども能開始以来、はじめて幼稚園生が二人混じっています(^◇^;) ともに画像提供は山口宏子さん。感謝です。

考えてみれば、今年はなんだかんだと稽古のスタートが遅れに遅れて、7月下旬にようやく開始になりました。本公演は11月に神社の秋祭りで上演することになるので、稽古の日程としてはギリギリのところです。ところが問題もありまして…去年までは本公演の前に一度小学校でプレ公演を致しまして、これが非常に出演者の子どもたちのためには良かったのです。見学する児童にとっては古典芸能を見る勉強の機会でもありましたでしょうが、出演者にとっては、これが本公演の前にはじめて人の前に立って舞台を勤めてみる千載一遇のチャンスだったのです。

今年はその機会もなくなってしまいまして、さてどうしたものか…秋祭りでぶっつけ本番でお客さまの前に立つことができるのか…??と不安もありました。そうしたところ、子どもたちのお母さんが尽力してくださって、なんと地元の敬老会からお招きを受けて、ついに昨日、その場に出演させて頂くことになったのでした。

とはいえ、稽古が始まってようやく1ヶ月で上演…という、とんでもない無理な上演スケジュールだったのも事実です。地謡は台本を見ながら謡ってよい、ということにはしましたが、立ち方はそういうわけにはいかないです。…しかし、ここでもし失敗したら、お客さまの前に立つ度胸を身につけるどころか、反対に挫折してしまうかも…(×_×;)  引き受けるのがよいか…ここは見送りか…でも、ぬえが悩んだのは一瞬でした。経験に勝る勉強法はないのですからね。

それでも、いろんな危惧も心の中で持ちながら、ある時には稽古で厳しい叱責もしましたが…そうして、昨日の成功に彼らは到達することができました! お客さまの中には「この子たちは…ずいぶん練習を積み重ねているんだろうな…」というつぶやきもあったそうで、また子どもたちも おうちに帰ってから「あ~楽しかった! 私、やっぱりお能が大好き!」という言葉があったそうです。くく~、能楽師としてはこのひと言があれば、どんな苦労も疲れも吹っ飛んじゃうね!

それにしても、よく1ヶ月の稽古でここまで来たですよね…考えてみれば ぬえは子ども能の指導を11年続けています。もちろんその間稽古を続けている子は一人もいなくて、2~4年ほどで、出演者は進級とともに入れ替わってしまうのではありますが、それでも毎年数人~10名ほどは前年と同じ子どもが残るわけです。そういう子どもたちの間に、知らない間に伝統…なんて言うとおおげさかも知れませんが、受け継がれていったものがあって、そうしてそれが、こういう形で結実したのかなあ、なんて、漠然と考えた ぬえでありました。

人まえで初めて役を演じて、その重圧や責任に子どもたちも思いを馳せたことでしょう。これから11月の本公演まで2ヶ月の稽古日程が残されています。もうみんな上演の「形」は覚えたわけだから、あとは洗練させていく作業になりますね。ひょっとすると、これまでとは格段に違う、小学生とは思えない上質の舞台が期待できるかも…