ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

生徒さんの発表会!

2011-06-28 10:26:35 | 能楽
先週末に東中野の梅若能楽学院会館にて ぬえが謡・仕舞の指導をしております生徒さんたちの発表会を催しました!

能楽堂を借りての発表会はもうずいぶんと久しぶりですが、今回は素謡・舞囃子・仕舞・連吟・独吟と盛りだくさんの番組になりました~。

いやしかし、久しぶりに大がかりな催しだったので準備が本当に大変で、最後の数日はもう分刻み、早朝から深夜まで作業を続けるありさま…ちゃんと謡をさらうヒマもなくて、肝心の地謡を間違ってしまったらどうしよう…なんて心配まで起きてくる始末…もっと早くから準備しろよ。いえ、ずっと準備はしていたのですが、楽屋弁当の数の調整とか、来演頂く能楽師に差し上げる記念品とか…なかなか最後まで決められなかった事も多かったので、どうしても最後の方は時間が足りなくなってくるんですよね~

当日は生徒さんは大熱演で、小さなミスはあっても大きな失敗は皆無、まずまず満足できる催しとなりました。ぬえは9時30分から夕方7時まで地謡に出演しっぱなしでしたけれども…それでも声が枯れることもなく、地謡も間違いは1箇所だけだったかな。まあ、もう何十回となく謡った曲も多かったですし、この日に向けて何度も生徒さんに稽古をしていますから、準備に時間が取られたとは言え それほど苦労はしなかったです。足が痛かった…

ベテランに属する生徒さんは難しい素謡に挑戦されて、これは女性に対して失礼な言葉かも知れませんが、年齢を重ねたその厚みが謡に厳然と現れて…ん~聞いているセンセ… ぬえの方が感心してしまったり。

それとは逆に、ぬえの生徒さんと言いきれない、稽古を始めたばかりの方も何人か、仕舞とか素謡の軽い役に挑戦しました。…というのも、謡曲・仕舞の教室ではなくて、ぬえは「能楽講座」のようなものも行っておりまして、そこに参加している生徒さん…というよりは受講者、という方が何人か、せっかくの能舞台に立てるチャンスですから、とチャレンジしてくれたのです。短い期間での速成稽古にはなってしまったし、ご本人もそれなりに苦しまれたでしょうが、当日はまあ見事に仕舞を勤め上げてくださいました!

あとは…やっぱり舞囃子かなあ。やはり舞を覚えるのは難しいと思いますが、こちらも舞台上で行き先を間違えるようなミスをした生徒さんは皆無。舞囃子の稽古にはどうしても1年かける必要があって、ぬえも「飽きるくらい稽古してください。また今日も序之舞~?と思うくらい。そうすれば当日に失敗をしなくなります。当日は絶対に また序之舞~? とは思わないですから、それまでは飽きるほどに…」と1年前から舞囃子に挑戦する生徒さんにはアドバイスしておきましたが、みなさん、忠実にアドバイスを守って、確かに飽きるほど稽古したようです。これはよかった。

そのうえで、なんですが「失敗した場合にどうするか…そのシミュレーションをしておいてください」という稽古が初めてできるのです。舞囃子は上演時間が長いですから、同じ位置に何度も通りがかったり止まったりします…このときに、その場とは違う場面と錯覚して、その場ですべき型とは違う型に飛んでしまう、ということもあるのです。そうした時にどうやって元に戻すか…それも間違いに気づいても顔に出さずに、どうしよう! と焦る心を抑えて、どうやって冷静に対処するか…これは曲に慣れていないとできない事なのですよね~。それで飽きるまで稽古を、と。

今回は1年ちょっと前に入門した方が舞囃子を上演する、なんて快挙もありました。1年前…入門されたばかりのこの方に今回の催しの計画をお知らせしたら「それはぜひ!お囃子入りで舞いたいです」と、心強い…というか怖いもの知らずの無謀な、というか…お申し出がありまして、さあそれから猛特訓。ところが元来頑張り屋さんのようで、みるみる上達されまして、その真剣味や初舞台の緊張も当日の舞台の華となったのではないかと思います。

もっとも…今回の舞台の参考に、と1年前から猛烈に能の舞台を見始めたこの方でしたが。先日今回の催しの打合せのときに「出番がない時は見所でほかの方のお舞台を応援してあげてください」と ぬえが言ったら…「ケンショ…って何ですか?」と聞き返されました…(^_^;) まあ、いいのさ。見所で舞うわけじゃない。これからも能を愛してください~(^^)V