最近、使い捨てを見直されて割り箸を使う人も減ってきたようで、
“マイ箸”を持ってくる人も増えているようです。ま、しかしながら、
やはり駅弁や道中で買うお弁当は割り箸を使っていますよね。
この間、旅に行った帰りに列車内で駅弁食べた時のこと思い出し
ました。割箸が容器より長いので折って捨てやすくと思って中に
入れたのです。今までもそう思ってましたね。年配の方が大きな
弁当容器の中に入れるときも折るのは不思議でしたが、
その行動に意味があるとは知りませんでした。
『箸折り』の風習
峠は、村の境の所にあり、そこには境の神である「塞(さえ)の神」
が祀られています。
この峠は、境を超えることから、精神的に不安があり、それだけに
旅路の安全を神に祈る場所なのです。ですから食事の後不用にな
った箸を神に供え、安全を祈願したのです。
ところが、一度使った箸にはその人の魂が宿るとされ、使用後そ
のまま捨てると禍がくるとされ、そこで峠の神にその箸を納め、禍を
防いでもらおうとしたようです。
さらに昔は、山に行ったときには、山の木の枝を箸にすることが多
かったことから、この一度使った箸にはその人の魂が宿ると言われ、
家に持ち帰らずに山に捨てるようにしたのです。
しかも、そのまま捨てると、けものが持ち遊んだりしてその禍が、
自分にも降りかかることを防ぐために、その箸は必ず折って捨てる
ようにしたのです。この折る行為は、箸に宿る魂を自分のもとへ帰ら
せるためのものなのです。この『箸折峠』の伝説は、和歌山県や
福岡県にもあり、今でも弁当のあと、その割箸を折って始末する
風習が見られるのはこのためです。
『日本人はなぜ箸を使うか』 一色八郎:著より