さぶろうはとうとう仏さまと二人でいる。仏さまと二人でいるシーン、ここまで撮影がすんで、今回の映画は完結する。それなのに、秋空がどんどん高くなりどんどん深まって行った。
何もかもがすうすう、すうすうとすり抜けて行ってしまうので、手元になんにも残らない。そういう日々だ。だからずっと痩せっぽちのさぶろう。こころの懐に財がない。貧しい。ひょろりとしている。もうそろそろこの地をおさらばするというのに、さぶろう紙飛行機はざらざら虚空をいっとき錐揉みして落ちるばかり。
西の空に白い朝月が掛かっている。さぶろうは窓に寄ってしばらくこれを見ていた。夜明けの6時半。一日の幕を引きに来た山鳩がぶうぼうくうくう、さあみなさん、ともかくも爽快なスタートを切りましょうと鳴いた。風がないのにひんやりした。寒暖の差が大きい。部屋に戻って、長袖シャツに腕を通した。活動開始だ。
さぶろうの明日がさぶろうの今日になった。明日の峠を越えられたのである。
明日の峠を越えられたのは、60兆個の細胞が部署部署に別れながらもみな力を合わせて、元気いっぱい働いてくれたからである。しかも無報酬である。
1部署でも怠けを決め込んでずるしたら、たちまち次の部署次の部署が不都合を来して悲鳴をあげることになるのだが、どこの部署もずるをしなかったのだ。
彼らはまことに勤勉実直を貫き通している。入れ替わり立ち替わりをしながら、ただもくもくと、ひたすらもくもくと働き詰めに働いてくれるばかりである。
彼らの全体協力が実にうまく成立して、さぶろうはさぶろうの昨日を生きられたのだ。
そのさぶろうだ。暗い目をしちゃいけないぞ。口を尖らせてぶつくさ不平を鳴らしちゃいけないぞ。愉快の頂点に立っていても理不尽には当たらないぞ。
おい、さぶろう。おい、さぶろう。最高最上の善果報だけを受け取っている今日のさぶろう!
明日の峠を越えられたのは、60兆個の細胞が部署部署に別れながらもみな力を合わせて、元気いっぱい働いてくれたからである。しかも無報酬である。
1部署でも怠けを決め込んでずるしたら、たちまち次の部署次の部署が不都合を来して悲鳴をあげることになるのだが、どこの部署もずるをしなかったのだ。
彼らはまことに勤勉実直を貫き通している。入れ替わり立ち替わりをしながら、ただもくもくと、ひたすらもくもくと働き詰めに働いてくれるばかりである。
彼らの全体協力が実にうまく成立して、さぶろうはさぶろうの昨日を生きられたのだ。
そのさぶろうだ。暗い目をしちゃいけないぞ。口を尖らせてぶつくさ不平を鳴らしちゃいけないぞ。愉快の頂点に立っていても理不尽には当たらないぞ。
おい、さぶろう。おい、さぶろう。最高最上の善果報だけを受け取っている今日のさぶろう!