有田チャイナオンザパークの河津桜がもう満開を。
気温17℃。ポカポカあたたかい。
メジロが花蜜を吸いに来ています。
「推論」 山鳩暮風
仏像は
人の形をしています
仏は
人と違うはずなのに
人の形をしています
目も鼻も口も耳も
人の目と鼻と口と耳です
首も胸も足も手も
人と変わりがありません
仏を見たことがない人間だから
人のカタチでしか
表現できなかったのかもしれません
そこまで考えて来ましたが
どうもしっくりしません
逆なのではないかと思いました
人が仏の形をしているのだ、と
仏は
みずからだけを
仏とされたのではなかった
仏は平等を重んじらた
仏と人に違いを設けられなかった
これで
わたしが仏の形をして
生きていられることになった
ここまで推論して
ふううっと長い息を吐いて
わたしはペンを置きました
外は
畑いっぱいに朝の
冷たい冬の光があふれていました
「霧」 山鳩暮風
イギリスの南端に
小さな霧の町があります
海辺のブライトンの近くです
そこに髭面の日本人が住んでいます
40年経っても
故国への帰心が萌さないのです
キャサリンというおんなの人と
赤レンガの古い家に住んでいます
彼女は金髪で色白のイギリス人です
性格は内気で万事が控え目
日本人に似ているところがあります
二人とも肉屋さんで働いています
この町を出ない限り
二人はずっと愛人同士でいられます
日本にいるこの男性の妻が
昨年捜索願を出しましたが
行方知れずの報告で終わりました
この町は霧の深いところです
霧は人の持つあらゆる秘密を密封します
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この詩をN新聞の読者文芸に投稿しました。佳作でした。
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秘密を誰もが持っています。「自分でも知らない秘密」もあります。人は、もしかして、世界のあちこちで同時に誕生し、一度にたくさんの人間を、それぞれの生き方で生きているのかもしれません。ふっとそんな疑念を抱きました。