菜の花が咲きました。裏の畑の巻かない白菜の、菜の花です。
春の訪れをコーヒーカップに飾りました。
いのち老いて母はさびしい縫い包みさはってほしいさはってほしい
日高堯子(ひだかたかこ)
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NHK短歌2月号に掲載されていました。
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歳月が流れて行けば、その分いのちは確実に老いて行きます。老いることは寂しいこと悲しいことでもあります。活発に活動が出来なくなります。
お母さんを老人ホームに見舞いに来たのでしょうか。部屋に入ってきたら、母がベッドに横になって縫い包みを抱いて、遠くを見ていました。痴呆症が始まっているのでしょうか、まるでお母さんが、ものを言わない縫い包みのようになっていました。
どうしてあげたらいいのでしょう。わたしは自問します。母の口がもぐもぐと動きました。ね、この子に触ってみてと繰り返しているように聞こえて来ました。
体温のない縫い包みと体温のあるおかあさんに手を延べて触ります。わたしはそれしかできずに、しばらくたってホームを後にしました。ホームを去った後でもなお「さわってほしい、さわってほしい」が聞こえて来ます。触るのは接触愛です。親不孝が詫びられて来ました。
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わたしはこの作品にそんなドラマを想定して味わってみました。読者はそれぞれの鑑賞をしてみて下さいね。
57577の缶詰を開けるとたくさんたくさんの物語が次から次から出て来ます。短歌は大きなイマジネーション缶詰になっています。
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日高堯子(ひだかたかこ)。1945年千葉県生まれ。馬場あき子に師事した。「かりん」編集委員。
家の中に閉じ籠もっているばかりでは退屈だから、ちょっとドライブをしてきました。小半時、雨の中をうろちょろして、午後5時に帰宅しました。
もう薄暗くて、視界がよく見えませんでした。雨降り夕暮れのドライブは、老人には危険。注意深くゆっくりゆっくり運転をしました。
道ばたにうっすらほんのり白梅紅梅が咲いているのを見つけて、車を止めて眺めました。春が訪れているのを感じました。
雨が降り出した。雨音がしている。まもなく午後4時。薄暗い。
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春の鳥乳房を持たず子育てす
薬王華蔵
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やはり落選したわたしの俳句。
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鳥は乳房を持っていない。膨らませているのはあれは胸の羽毛。羽毛の下で雛が育っている。ミルクの代わりに春の毛虫を啄んで来る。
蝶ひかりひかりわたしは昏くなる
富沢赤黄男
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飛ぶ蝶だけが春の光を吸ってどんどん光り、光に光り、まぶしく光り、蝶に吸われたわたしは昏睡する。
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富沢赤黄男(とみさわあきお)は1902年(明治35年)、愛媛県八幡浜生まれ。1962年(昭和37年)没。
ストーブの春子の雨が霧になる
薬王華蔵
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わたしの落選の俳句。これもまた。
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季語は春子。春子は2月の春の娘。何を思ったのか、ぷいと出て行った後、雨に濡れて戻って来て、山小屋のストーブで寒さをあたためていた。水滴が霧になって、もやって、美しい髪の娘を隠していたが、そのうち乾いて、すすすと立ち上がってまた消えて行った。
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そこまでのドラマを要求したのが無理だったようだ。
それを詩にするとうつくしくなる。新しい風景が立ち現れて来る。現れた風景が輝いて来る。詩を源流にして、いまを生きている感動が、そこへ山霧のように湧き上がって、我が魂に流れ込んで来る。
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見えていなかった微細なものを、拡大鏡を通して、大きく見るようなものだ。見えていなかったものが見えて来るとよろこびになる。詩が拡大鏡の役割をする。1を、2にし、3にし、100にし、1000にする。欲張りをする。
いまにも降りそうにしているが、持ち堪えて、降らない。風もない。山里はひっそりしている。昼前に、郵便配達の人が来たほかは、誰も来ない。
することがなくて、お爺さんは昼寝を決め込んだ。YouTubeで音楽を聴きながら、眠りの底に落ちた。30分ほどは寝た。
巻かない白菜がついに花を着けた。先端を家内が摘んで来て、マグカップに挿して、机上に飾ってくれた。2月の小さな春を受け取っている。
今日は空が曇っています。どんよりしています。気温は8・3℃あります。いくらかはあたたかいです。
正午になりました。
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朝からずっとパソコン画面をにらめっこしていました。次の週の新聞投稿作品を書いていました。川柳・俳句・短歌の3部門、合計9作品が書き上がりました。メールで送信しました。ほっとしています。
今日はほほほ ほほ ほほうの嬉しい日になりました。
S新聞 読者文芸詩部門でわたしの作品が、1席になっていました。小松選の選者評もマッチしていました。
1席は何年ぶりなんでしょう?
我が住んでいる集落が自慢にするお城の、歴史のことを書きました。脚色したので、史実に基づいていない部分もありますが。ふんわりの想像をたくましくしました。
夜、ひとりで、日本酒1合の熱燗でおめでとう乾杯をします。
ふふ、これから酒の肴の買い出しに行こうかな。
町に一軒だけ残っている魚専門の江口魚屋さんに行ってみようかな。久しぶりの久しぶりに。