落ち葉踏む音に加わる一人かな
西美知子 「玄海」1月号
西日本新聞「俳句月評」にこの句が紹介されていました。今朝の新聞です。
*
落ち葉踏む音が聞こえるほどに落ち葉が厚く敷き詰められています。あまり人が通らない道のようです。山道を行けば道の両端に吹き集められています。落葉樹が葉を落としています。日にちがたつと湿ってきます。湿ると吸収されてしまうので音がなくなります。だから、音を聞くには新しい落ち葉がふさわしいでしょう。走ると滑ってしまいますから、ゆっくりゆっくり踏みしめて行くべきです。お散歩の途中でしょうか。
「音に加わる」とありますから、初めの人に誰かが加わって来たのでしょう。どちらが作者なのかわかりませんが、一人と一人です。どちらかがそれを敏感に耳で察知したのです。落ち葉を踏みしめて歩く人の跫音に敏感に、すっと反応したのです。そして親しみを感じたのでしょう。共同体験をすると人はやさしくなります。
いずれ、静かな時がそこに流れています。落ち葉の深さを鑑賞できる時間は、静かな時間です。落ち葉をわたしの世界に引き込んでいて、そこにもう一人が、やさしいしめやかな跫音を立てて侵入を図って来たのです。
二人は会話をしたでしょうか、立ち止まって。しなかったかもしれません。過ぎ去って、とうとう見えなくなったかもしれません。