登録番号 第20号 能登志賀ころ柿
特定農林水産物等の区分 第十八類 果実加工品類 干柿
特定農林水産物等の生産地 石川 県羽咋郡志賀町のうち昭和 45 年から平成 17 年までの旧志賀町区域
登録生産者団体 志賀農業協同組合
特定農林水産物等の特性
(1) 原料に由来する特性
能登志賀ころ柿は、生産地において、「西条柿」を原種とした系統から選抜された地場のカキ品種「最勝」(完全渋ガキ)を原料柿として使用している。
1) 原料柿の特徴
原料である「最勝」は、果実の成熟期は11月中旬頃とカキ品種の中では晩生である。玉揃いはカキ品種の中では中程度である。ヘタすきと果頂裂果の発生はないが、汚損果がやや発生する。肉質は「平核無」(国内における渋柿の主力品種で渋柿では最も栽培面積が多く、干柿の原料柿としても利用されている)と同程度に緻密で粉質性はない。
果実重は200g前後、糖度は平均20%程度であり、「平核無」よりも甘味が強い。果汁は多く、「平核無」と同等である。種子は平均4~5個とやや多い。果実はやや縦長の倒卵形であり、果頂部が若干尖っている。横断面は円形であり、側溝はない。
果実の形状、大きさから、他品種・系統のカキ果実と区別することが可能である。
2) 干柿の特徴
能登志賀ころ柿に対する主要市場の担当者の評価は、他産地の干柿と比べ、「外観が鮮やかな飴色である」、「果肉が羊羹状で緻密である」、「果肉が柔らかい」となっており、「外観の色目」と「果肉の緻密さ、柔らかさ」が、他産地の干柿と異なっていて特徴的である」との評価を得ている。
(2) 加工方法に由来する特徴
能登志賀ころ柿は、鮮やかな飴色の外観で、果肉が羊羹状で緻密であり、柔らかい特徴を出すために、以下の加工方法を取っている。この加工方法が、他産地の干柿と異なっており、特徴的である。
1) 徹底した手もみ作業
14~17日程度じっくりと自然乾燥(干し上げ)を行った後に、果肉をしっかりとほぐす「手もみ作業」を行う。手もみ作業は、果実の芯を切りながら、果肉が均一に耳たぶの柔らかさになるまで徹底して行う。
果肉が液状(果肉が完全に潰れた状態)になるまで、手もみ作業を繰り返し行うことで、仕上がり時に羊羹状の柔らかい食感が生まれる。
2) 細かな温度管理によるゆっくりとした干し上げ
手もみを行うと同時に、果肉内の水分が果実表面に出てくるので、乾燥室内にて加温機を用いて乾燥を行う。この際、暖房機による加熱を細かく調整(加熱を点けたり、消したりする)しながら、果実内の水分をゆっくりと干しあげることで鮮やかな飴色で、果肉は緻密で柔らかい独特のころ柿が生み出される。
他産地とは、この細かな温度管理によるゆっくりとした干し上げの乾燥工程が大きく異なる。
(3) ブランド農産物としての高い知名度
能登志賀ころ柿は、石川県に古くから伝わる伝統技法を用いて製造された加工食品であり、その品質や表示について一定基準に適合していることから、平成12年3月31日に石川県から「ふるさと認証食品」に認証されている。
能登志賀ころ柿は、「世界農業遺産未来につなげる能登の一品」として、平成27年3月18日に「「能登の里山里海」世界農業遺産活用実行委員会」から認定され、世界農業遺産「能登の里山里海」で育まれた選りすぐりの商品として認知されている。
地域との結び付き -
*https://www.maff.go.jp/j/shokusan/gi_act/register/20.html より
「能登志賀ころ柿」は、石川県能登地域において、「西条柿」を原種とした系統から選抜された地場のカキ品種「最勝」を原料柿として、この地域に古くから伝わる伝統技法を用いて製造された干柿です。他産地の干柿と比べ、外観が鮮やかな飴色であり、果肉が羊羹状で緻密で柔らかいことが特徴です。「最勝」は、果実重200g前後、糖度は平均20%程度で、国内における渋柿の主力品種「平核無」よりも甘味が強く、果汁は同程度に多い品種です。
作り方を他産地と比較すると、細かな温度管理によるゆっくりとした乾燥を行うのが大きなポイントです。そのことにより、果肉が緻密で軟らかく、色あがりも飴色に近くなります。
まず、原料柿のへたとり・皮むきなどの全処理を行い、14~17日程度じっくりと自然乾燥を行います。自然乾燥時における風の強さや温度、湿度、光条件など、この地域の環境条件が、飴色の干柿に仕上げるのに非常に適していると考えられています。
自然乾燥を終えたら、果肉をしっかりとほぐす「手もみ作業」に移ります。手もみ作業は、果実の芯を切りながら、果肉が均一に耳たぶの柔らかさになるまで徹底して行います。果肉が液状(果肉が完全に潰れた状態)になるまで、手もみ作業を繰り返し行うことで、仕上がり時に羊羹状の柔らかい食感が生まれます。
手もみを行うと同時に、果肉内の水分が果実表面に出てくるので、乾燥室内にて暖房機を用いて乾燥を行います。この際、暖房機による加熱を細かく調整(加熱を点けたり、消したりする)しながら、果実内の水分をゆっくりと干しあげます。加熱を止めても果実表面が濡れてこなくなったことを確認して、吊した果実を乾燥室から仕上げ室に運び出します。その後、冷暗所に移して、果実表面に白い粉(果糖)が出てくる直前まで寝かせます。
この地域の気候は、日中温暖で朝夕は夏でも涼しいくらいに気温が下がるため、昼間はでんぷんが十分に生成され、夜間は呼吸量が下がることから、でんぷんの消耗が少なくなり、高糖度の原料柿が育ちます。11月以降の平均気温は10℃程度(乾燥適温は10~15℃)と、カキ果実を干すのに適度な外気温であるほか、生産地が能登半島の海岸部に位置しているため、海陸風が適度に吹くことで、乾燥時の果実にカビが生えにくく、黒変しにくいなど、この品種の干柿加工に適した環境と言えます。
干柿生産は藩政時代から、現在の志賀町倉垣、安津見、矢駄、福井、舘、穴口、大坂、二所宮、上棚、米浜で多くの農家が自家用に干柿を生産しており、現在に至るまでおよそ400年間、続けられています。干柿生産が開始された当初も、品種は「日本柿」「紋平柿」「西条柿」などでしたが、1889年に生産農家が「西条柿」を原種とした品種の中から、より干柿の原料として優れた系統「最勝」を選抜したことが、今日の生産様式の起源となりました。
元々農家の冬期間の副業であった「能登志賀ころ柿」の生産は、昭和7年頃から販売用として徐々に本格化され、昭和40年代の高度経済成長による贈答需要の増加を背景に徐々に増加し、地元市場や関西市場、関東市場を中心に約7万箱(1箱は1kg)規模になりました。最近では、海外(台湾、香港、シンガポール)への輸出も行われています。
*https://gi-act.maff.go.jp/register/entry/20.html より