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<経産大臣指定伝統的工芸品> 鳥取 弓浜絣

2021-07-12 10:22:39 | 経済産業大臣指定伝統的工芸品

 「弓浜絣」

 Description / 特徴・産地

 弓浜絣とは?
 弓浜絣(ゆみはまがすり)は鳥取県境港市周辺で作られている織物です。「弓浜」の由来は、「弓ヶ浜」という鳥取県米子市から境港市にかけて20kmにも及ぶ弓状に湾曲した沿岸の名称からきています。
 「絣」はあらかじめ染め上げた糸「絣糸」を織って作る織物で、藍色の糸で紡いだものを生地の土台にして、その上に白色の糸でさまざまな模様を編んでいきます。少し藍の色がにじんだ白色の糸に風情があり、古くから地元の人々に親しまれていました。
 弓浜絣の特徴は、ざっくりとした布の風合いと素朴な柄です。当時は農民の自給用衣服のニーズが高く、動きやすくて洗いやすい服が好まれており、弓浜絣が農業を生業とする人々の暮らしに合っていました。
 最近では、巾着袋やコースター、テーブルセンターやコインケースなどの小物も作られ、広く人々の生活に取り入れられやすくなりました。

 History / 歴史
 弓浜絣 - 歴史

 弓浜絣の歴史は江戸時代中期の1751年(宝暦元年)頃まで遡ります。当時から鳥取県と島根県を含む山陰地方は、広瀬絣・弓浜絣・倉吉絣などが絣を織る技術が発達しており、絣の名産地として名を馳せていました。
 中でも、農民などの一般市民の生活に取り入れられてきた弓浜絣は最も親しみやすく重宝された絣です。当時の弓浜絣の先駆者は地元に住む農家の主婦たちで、自分たちが着る仕事着、晴れ着、布団などの生活雑貨を、本業である木綿織りの傍らで弓浜絣を制作していたことが発端でした。
 江戸時代から大正時代にかけて全盛期を迎え、鳥取は全国で3位の絣織物生産地として栄えました。1975年(昭和50年)に無形文化財に指定されてからは、絣を保存する会や絣を制作する工房が各地で設立され、弓浜絣の保存や周知に一役買っています。

*https://kogeijapan.com/locale/ja_JP/yumihamagasuri/ より

 母と娘が夜なべで育んだ素朴な弓浜絣の絵絣模様
 衣類の自給や、副業として藩から奨励され、女たちが農事、家事の合い間や夜なべに糸を紡ぎ、横糸に絣柄を染め「よい絣が織れる女は良縁を得る」と言われたほど。女たちは技術の習得に励み、技法を磨き、弓浜絣を織り上げてきた。

 
 素朴な絵柄とざっくりとした風合いが大きな特徴
 深い藍色の地に、美しい白抜きの絣柄が映える、先染め平織りの綿紬だが、もともとは農民の自給用衣料に端を発している。その弓浜絣一筋に40年以上。伝統工芸士の村上勝芳(むらかみかつよし)さんにお話を伺った。奥様の一枝(かずえ)さんも伝統工芸士で、御夫婦仲良く絣を織っていらっしゃる。

 

 大切な野良仕事を支えた弓浜絣だからこそ誇らしい
 村上さんは弓浜絣の特長をこう語る。「まず第一にここの絣は野良着だったので、丈夫でないと、話にならなかった。だからこそ洗えば洗うほどよい色になったと言われる正藍染めが生きてくる。第二はその風合いと感触ですな。伯州綿固有の特性が、ウールにも似た温かさ、柔らかさを感じさせる。そして第三には、その柄の素朴さでしょう。200年以上も前から受け継がれてきた柄行、愛情の表現を絣に求めた先人の残した柄に、私は強い愛着を持っています。」

 

 必要以上のこだわりを捨ててこそ、生き続ける伝統
 弓浜絣に強い愛情と、自信を持つ村上さんは自己を振り返り「もともと私は、広島の人間で、戦後の綿不足の時に、こっちに綿を買い付けに来とったんですよ。たまたま親戚が米子で絣をやっとって、そんな縁で師匠につくわけでもなく、弟子に入るでもなく、見よう見まねで始めたんです。一人でゼロからやって来ましたが、苦労したという思いは特にありません。いつも一所懸命だったから・・・ですかね。」と言う。明治時代には鳥取県は全国で3位の絣織物の生産高を上げていた。ところが、洋式紡績業の発達に追われ、生活様式の変化にもついていくことができずに、多くの同業者が廃業に追いやられてしまった。
 「不必要に伝統にこだわっていたら、私も仕事をたたんでいたかもしれません。ただ私はこだわりを持たず、常に技術改良、新しい商品開発をやってきました。だから、何とか楽しく仕事をやって来れたんです。」と言いきる村上さんの笑顔は少年のよう。その隣りで奥さんは彼を支えるように笑顔で優しく頷いた。

 木綿は、癒しでもあり、そしてエコロジー
 最近は木綿の風合いを求めて、静かなブームが起こっている。村上さんが作った絣の「こたつカバー」などが雑誌で取り上げられたそう。「日本人は、木綿のもつ素朴さや優しさが一番落ち着くんじゃないかね。これからも日本人の心の拠り所となる作品をしっかりと作っていきます。」と語ってくれた村上さん夫妻の向こうでは、工場の織り機の音が静かに途切れることなく響いていた。

 こぼれ話

 自慢の弓浜絣の織機

 村上さんの工場をおじゃました際、びっくりしたのが、自慢の弓浜絣の織機でした。創業以来40年ずっと愛着を持って使っていらっしゃるとのこと。
 村上さんは、「この機械を修繕する分野でも伝統工芸士やで。」と笑っておられました。いい職人は道具を大切にすると言われますが、まさしくその通りですね。

*https://kougeihin.jp/craft/0121/ より


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