完全に周回遅れの読書なのだけれど、久しぶりに読後評アップしたい気分に。
(当ブログは、かなり量の本を読み倒している)
さて、タイトルにもあるように、
・喜劇王 チャップリン
そして
・20世紀中で最も憎まれた男 ヒトラー
この2人は実は誕生日が、わずかに4日違い。
2人の人生が大きく交錯した瞬間が、映画「独裁者」制作の前後。
ご存知の通り、「独裁者」は残忍極まりないヒトラーをパロディしまくった一作。
この時代に、アメリカが、ドイツが、日本が、そして世界が動いたか。
それは「メディア戦争」と言っていいような闘い。
これを、様々な資料から読み解く一冊なのだ!
著者は、大野 裕之 氏。
映画プロデューサー、劇団代表、そして日本チャップリン協会会長。
読んでいくうちに次々と秘話が明かされていく。
そもそも、チャップリンとヒトラーの組合せを考えたのは...
チャップリンの伝記にその表記があり、ある映画プロデューサーが提案したそう。
「チョビヒゲ同士だから、ヒトラーとソックリさんが入れ替わる企画はどうだ?」
その時チャップリンはあまり深く気に止めなかったそう。
だが実はナポレオン=独裁者をテーマにした映画企画を検討していたが、今ひとつまとまらなかった状況にあった。
である時、はたと気づく。
「ヒトラーに扮した私が、大衆相手に訳の分からぬ長広告を思う存分に喋りまくる
そして浮浪者の私はサイレントの自分でいられる
風刺とパントマイムを両立させる絶好のチャンスだ!』
映画制作のトーキーへの移行、にチャーリーの芸風がマッチした瞬間だった。
次に制作に移るが、何とタイミングで第二次世界大戦が開戦、撮影も同時に開始。
この制作過程と暗黒の時代が、同時シンクロしていたことに驚く!
有名な地球儀のダンス、そして当初のプランとは違う、感動のエンディングまでを苦闘しながら仕上げていった。
ドイツは制作過程の情報を聞きつけ、激しく妨害工作を国内外で行う。
チャーリーをユダヤ人と決めつけ攻撃。
そこはまだ理解できるところだが、アメリカ国内でさえ批判的論調が…
その風潮は公開後まで続いたが、空襲に苦しんでいたイングランドでは大絶賛。
するとアメリカのマスコミも打って変わって大絶賛へ(笑)
「笑い」を武器にして、ナチズムに闘いを挑んだチャップリン。
映画「独裁者」の誕生にこんなに色々秘話があったことが興味深い。
その点で一読の価値は間違いなく、ある。
そして、そこから浮かび上がるチャーリーの「静かな闘い」に大いに勇気をもらった。