朝方、夫の夢を見ました。
夫と...多分娘かな??
3人で松ぼっくりの落ちている林の中を歩いていました。
何か冗談を言いながらかしら?
楽しそうに笑いながら歩いていました。
そのうちに、一本の松の木の根元に来ると、夫がいきなり倒れました。
後ろに倒れてきました。
私はそれを両手で受け止めて支えました。
それまで元気そうに笑って歩いていた夫は、急にやせ細っていて、それでも抱き留めた身体は以上に重く、私はよろけてしゃがみこんでしまいました。
そこで目が覚めました。
両手で受け止めた夫の身体の重みが、まだ手のひらに残っているようでした。
一年前の今日、夫は緩和ケア病棟に最後の入院をしました。
苦しく、辛かった自宅での闘病生活を良く乗り切ってくれました。
ガンの進行が恐ろしく速く、かなり早い段階で頭蓋骨底部に転移を認めてからは、積極的な治療はせずに、ひたすら痛みを和らげるだけに徹した闘病生活でした。
「奥さんなら大丈夫。きちんと世話ができるよ。」と、主治医の先生や看護師さんたちに言われ、一生懸命に点滴の交換を覚え、薬剤師さんたちとあれこれ考えて何とか夫が飲みこめるように薬を細かく砕いたすりつぶしたりしました。
周りの人たちに助けられ、少しでも二人の時間を過ごせるようにと務めてきました。
そんな努力も限界を迎えたのが、日本の日付で11月9日の事でした。
夫は自ら点滴の針を抜き、空の星を求めてベランダに出たがりました。
「ああ、これはもう、私の力だけでは夫をケアしてあげることはできないのだ
な。」と思い、すぐに病院に連絡をし、翌朝入院することができるかどうかを尋ねました。
夜間のことで入院云々は次の日にならないとわからないということでしたが、朝病院に連れていけば、すぐに対処しますと言ってもらえました。
そのことを夫に伝えると、夫はようやく安堵したように目をつむり、眠りについてくれました。
とても安心した顔で眠りについてくれました。
あれからもう一年が過ぎてしまった、まだ一年しかたっていない、どちらなのでしょう?
私自身もよくわかりません。
時間というのは不思議なもので、面的な記憶は上手にきれいに風化させてくれますが、心の澱にたまった記憶は、時間とともにますます重く厚く堆積していきます。
何かの折に心が揺り動かすようなことがあると、一気に記憶が心の中いっぱいにあふれてきます。
そんな時は悲しくもあり、また嬉しくもあり。
もうすぐ日本に行きます。
夫も一緒に行きたがっているのかな?
一緒に懐かしい場所を回って来たいと思っています。