ひとりシネマしてきました。
2025年ゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞したフェルナンダ・トッヘス(Fernanda Torres)主演の映画です。
1970年代、軍政下のブラジル社会の様子を描いているとともに、実際に起こった拉致事件を描いています。
主演のフェルナンダ・トッヘスは、これも多くの賞を受賞しているフェルナンダ・モンテネグロの娘として生まれました。
フェルナンダ・モンテネグロはペケママが大好きな女優さん。
「Estação Central do Brasil ブラジル中央駅」の映画で好演しています。
今回の映画では、夫を軍政下の政府に拉致された女性を演じています。
建築家の夫人として、5人の子供とともに何不自由なく暮らしていた主人公エウリッセ。
ある日突然夫が軍政府に連れ去られ、その後自身も娘とともに軍に拘束されます。
その後解放され、様々な苦難を乗り越えて弁護士となりました。
失踪から25年たち、ようやく夫の死亡証明が出ます。
最近夫を亡くした経験から、死亡証明がないと遺族年金が出ないということがわかったペケママ。
ということは彼女は25年間、夫の遺族年金も無しで、一人で頑張って5人の子供を育て上げたんだと思うと、どれだけ苦労したのかと胸が詰まる思いでした。
夫が連れ去られ、銀行の試算もすべて凍結され、その日を暮らすことも難しくなったエウリッセは、家にあるだけのドルを換金し、引き出せるだけのお金を引き出し、メイドに払えるだけのお金を払い暇をだします。
家を売り、子供5人を車に乗せて、サンパウロに向かいます。
そんな彼女の奮闘を見て、本当に胸が痛くなるようでした。
軍政下のブラジルで行方不明になった人たちは、数知れません。
その人たちの人権の回復が行われるようになったのは、本当に最近のことです。
軍政下、政治犯としてとらわれた人たちは、拷問を受け、海の沖合で小舟に乗せられ、漂流させられたとも言われます。
今日の映画では、リオデジャネイロから100㎞ほど離れたところの、海に伸びた「砂嘴」のところに、多くの方の遺体が処分されたと言っていました。
ここは現在でも軍の管轄下にある土地で、一般の人はあまり近寄れなくなっています。
2時間20分という長い映画でしたが、終わった時には「え?もう終わりなの??」という感じでした。
知識としてしか入っていなかった軍政下のブラジル社会の様子を、視覚的にそして身近な家庭の問題として見せつけられました。
最後、子供たちが成長し、それぞれの家族とともに集まったシーンでは、歳をとった母親役としてフェルナンダ・モンテネグロが登場。
半分夢の世界に入ってしまったような彼女が、軍政下の行方不明者のニュースにじっと見入る場面では、タイトルの「Ainda estou aqui. 私はまだここに居る」という言葉が重なって、主人公の女性の思いを深く感じました。
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