今日、残業をして(ああ…、今日も会社でした)9時過ぎに家のドアを開け
ると、息子たちが蜘蛛の子を散らすようにして自分の部屋に消えた。
シャワーから出ると、女房がビールと鳥の唐揚げ、キュウリとマカロニのサ
ラダ、圧力釜で煮たサンマ、胡麻をのせた冷や奴などをテーブルの上に並べて
いた。
「今日さあ、さっきまでUと話していたんだ。いいでしょう。Uに訊いたんだ、
パパがUとKと話したいと思っているんだけど、いつも帰ってくると二人とも
部屋に行っちゃうじゃない。パパ寂しいんだって。やっぱりパパとは話しづら
いのって訊いたら、そうだって。そんなもんなんだね」
うれしそうに、優越感にひたった顔で女房はいう。
「ヒサシ君(なぜか5歳年下の女房は、私をこう呼ぶ)はあんなにUとKの面
倒見たのにね。男親なんてつまらないな。私なんかいつもガミガミ怒っていた
だけなのにね」
そうだそうだ。私は、あいつらが小学校5年まで一緒に寝て、絵本や童話を
読んでやったり、即興の作り話を聞かせたりしていたのだ。
「やっぱり男親って煙たいのかな」
「そりゃそうだよ。おれだって親父とは一緒にいたくなかった」
息子たちが、私を煙たがらずに話せるのはいつのことだろう。自分のことを
振り返ると二十歳過ぎかな。酒など一緒に飲んだりして…。
それまでじっと耐えるしかない…な。
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