ふるさとの音楽

1999年11月22日 | 会社・仕事関係

    こたつで寝てしまった  
 もうこんな時間だ。
 明日も仕事だ。祝日だというのに…。

 今日の残業は、6時まで日本人(若いコ)がいたが風邪気味だというので帰
った。残るはペルーの女性2人だ。
 おれは、ちょっと気をきかせて、有線放送のチャンネルを変えた。
 いつもは「Jーポップス」になっているのを、「ラテン音楽」にした。
 ロウルデスに、
「ユウセンのチャンネル変えたよ」
 というまでもなく、彼女の顔は嬉しそうだった。
 この前、いつも流れているBGMが変わっているのでどうしてかな?と思っ
ていたら、ロウルデスがちゃっかり変えていたのだ。
 「ラテン音楽」は彼女たちの故郷の音楽なんだ。フォルクローレのチャンネ
ルがあればおれが聴きたいくらいだが、それはない。
 アナが、ハミングしながら、ガラスに成形された樹脂のバリをとっている。
「ラテンミュージック、ペルーの人、みんな聴くの?」
 おれは、バカな質問をした。なんか、ペルーの人は、誰もフォルクローレ
(ペルー、ボリビアの民族音楽)を聴いているという思いがある。
 アナは、おれのいってることが分からない。ラテンミュージックということ
が分からないようだ。
「ペルー…、キク…、マンボ。ペレスプラード」
 といっている。彼女は、日本語がほとんど喋れない。ずっと前、歯が痛くて
もクビになることをおそれて我慢して仕事をしていた女性だ。
 ああ…、「ラテン音楽」というのは日本人が勝手につけた名前で、あっちの
人は、そういわないんだとおれは思った。
「ペルー…、マンボ、ダンシング、ダンシング」
 アナは、英語はペラペラだ。
 ペルーの人たちは、ラテン音楽を聴いて踊るんだと、理解した。
「ハポン(日本)のヒト、オドラナイ」
 といいながら、女房は踊るんだろうな、と思った。
 アナは、見るからにラテンアメリカンの女性という感じです。いつも陽気だ。
 今朝、アナの娘の写真を見せてもらった。小学1年だという。すてきな家の
前で、可愛い女の子が写っていた。ちょっとこんな家は、日本にはない。金持
ちの家、という雰囲気だった。そこの奥さんが旦那と、日本に出稼ぎに来てい
る。
「こんな写真見ると、おれ悲しくなるな」
 というと、杉森さん(50いくつか過ぎたおばさん)が、今にも涙を流しそ
うになった。
 なんで、こんな可愛い子どもと離れて暮らさなくてはならないのか。ペルー
は、貧しいんだな、と実感した。ウチモ、マズシイ。
 曲が、「ベサメ・ムチョ」になった。
「『ベサメ・ムチョ』っていうんだよね。ベサメ・ムチョってどういう意味?」
 けっこう日本語の分かるロウルデスに訊くと、
「タクサン、キスシテ」
 という。「ムチョ」はNHKのスペイン語講座を聴いてるから、「沢山」と
か「とても」というのは知っていた。「ベサメ」が「キスして」とは知らなか
った。おれは、「ベサメ・ムチョ」って、「たくさん愛して」というふうに覚
えていた。しかし、おれより若い女性と話すには、ちょっと照れくさい話題だ
な、と一人テレた。
 残業が終わる7時頃、「キェンセラ」という曲になった。おれが子どもの頃
から聴いてる曲だ。「キェンセララケメキェンセラ」と、なぜかおれは覚えて
いる。
「『キェンセラ』ってどういう意味?」
 とロウルデスに訊くと、
「ダレデスカ?」
 という。
 こういう会話が出来たこと、今日の残業はよかった。こんなことでもなかっ
たら、残業なんてやってられない。
 祭日なのに明日も残業だ。
 ああ…、3時20分を過ぎている。明日は地獄だ。

コメント
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