一昨日の夜、私は春画展に行くことを決めた。
そして昨日の朝、女房と一緒の電車で東京に行くことにした。
途中まで一緒なのです。
女房の朝の出勤がどのような状態か知ることにも興味があった。
家を6時40分に出て、51分のバスに乗った。
地下鉄有楽町線に乗り入れする東武東上線に乗り、8時半頃池袋を過ぎた駅で降りた。
電車に乗りすぐ坐れたので、文庫本を取り出し読んだ。
5分も読んでいるうちに眠くなり、文庫本を閉じて目をつむった。
そうい意味では楽だったが、帰りはこうはいかないと想像した。
おそらく絶対坐れないと思う。
過酷だろう。
なんといっても私の家は東京から遠い。
(私が中古住宅でも、手に入れられたというのは、女房の通勤地獄の犠牲の上に成り立っている)
ドトールでコーヒーを飲み9時20分まで文庫本(漱石の「こころ」)を読んでいた。
東京の街を歩くのは久しぶりだった。
私は18歳で上京し、東京のいろんな場所を様々な心で歩いてきた。
ギターを作る夢に挫折して、トボトボ石神井公園の脇の道を歩きました。
仕事を探して心を強く持って本郷通りを歩いたこともあった。
失恋して泣きたい気持ちで歩いた王子の夜の道。
仕事を辞めて世の中を恨んで歩いた会社からの帰り道。
恋をして有頂天になって歩いた駒込のアパートへの帰り道…。
女房の妊娠を知ったときの喜びと不安を感じた御徒町の雑踏の道。
大通りをちょっと小路に曲がると大きな川があった。
神田川です。
亀・サギ・鯉がいた。
次の橋を右に渡ったら春画展を開催している永青文庫の案内板があった。
この坂の上のほうは工事中だった。
警備員がいて注意するように声をかけていた。
その先に、ひょいと永青文庫があった。
こんなところで春画展はやるのか、と素朴に私は思った。