「奇跡の人」(原田マハ 著 双葉社刊)を早朝に読み終えた。
去場安(さりばあん)は25歳、生まれつき視力が弱くやがて失明するだろうと言われていた。
明治4年、9歳のときに岩倉使節団の留学生として渡米、最高の教育を受けた後、20歳をすぎて帰国した。
安は、日本の女子教育の普及と発展のために、アメリカで学んできたことを生かしたいと思っていた。
しかし、彼女の望んだような、女子教育のための活躍の場は、その頃の日本では皆無に等しかった。
願いがかなわず消沈していた矢先、青森県弘前町の男爵家から伊藤博文経由で
「娘の教育係になってほしい」という依頼が来る。
令嬢の名は介良(けら)れん。6歳になるれんは、普通の人とだいぶ違った。
見ることも聞くことも話すこともできなかった……。
ここまで読んで私は、この小説はヘレン・ケラーとアン・サリバンを描いた「奇跡の人」の日本版だと気づいた。
舞台は青森になっている。
とはいうものの、何も名前を「去場安」と「介良れん」にしなくてもいいのじゃないか、と心で突っ込んだ。
読み進んでいくうちに名前のことは気にならなくなった。
読んでいて私は何度も涙を流した。
れんを素晴らしい知性ある女性にしたい、という安の気持ちが嬉しかった。
小説を読んでいてこんなになることは少ない。
三味線を弾いて門付けをして暮らしていた、女ボサマの狼野キワとれんとの関係もよかった。
私は、映画の「奇跡の人」を20代のときに銀座の映画館で観て、感動した。
しかし、この小説「奇跡の人」は、映画以上に心を動かされた。
この小説を、私の知っているすべての人に読んでもらいたいと思った。
私は先週の水曜日に埼玉の家からウォーキングに出た。
私はウォーキングをすると途中にある図書館に必ず寄る。
そして棚にあった「奇跡の人」を軽い気持ちで借りた。
先日NHKの「ラジオ文学館」で聴いた「無用の人」を借りたつもりでいた。
しかし、あれは短編だ。
この「奇跡の人」は、347ページある長編小説です。
ちょぴり後悔した。
つまらなかったら読まずに返せばいいと思って読み始めたら、これがどんどん物語に引き込まれていった。
時間がきて本を閉じることが惜しまれた。
すばらしい小説でした。
あなたもぜひ読んで下さい。