らいちゃんの家庭菜園日記

家庭菜園、家庭果樹栽培及び雑学日記

山の神

2017-05-07 | 雑学

『古事記』上巻の「天(あま)の岩戸」の段には「八百万神、天(あめ)の安(やす)の河原に神集(かむつど)ひ集ひて」と記されています。
八百万の神は、神道(しんとう)では数多くの神々の存在を総称して言われているものですが、「山の神」もそのなかの一神です。

その「山の神」と言えば、箱根駅伝の往路5区の山登りを担当する選手の尊称として知られているところですが、この区間を走る選手全員が「山の神」と呼ばれるのではありません。優秀な成績を残し、見る人の脳裏に強く印象に残った選手だけに「山の神」の尊称が付けられます。

伝統ある箱根駅伝でも「山の神」と呼ばれた選手は今までに3人だけだそうです。
・最初に「山の神」と呼ばれた選手は順天堂大学の今井正人選手で、2005年から2007年まで5区を走り、2005年には史上最多となる11人抜きを達成して、「山の神」となりまし
  た。
・二人目は2008年から5区を担当した東洋大学の柏原竜二選手です。
  2008年の1年の時には、5区で8人抜きをし、東洋大学が往路で優勝、更に今井正人選手の記録を47秒も縮め記録を更新しました。
・そして3人目は青山学院大学の神野大地選手です。
  2015年の3年生で初めて第5区を任されたにも関わらず、トップと46秒差の第2位でタスキを受け取り、優勝候補で期待の選手と言われていた駒澤大学の選手を追い越し、
 更に4分59秒の大差をつけてゴールしたのです。

山登りコースの5区は、高低差が激しく、厳しい上り坂や下り坂が延々と続き、この区間内での標高差は約860mにもなるのです。
3人ともこの難コースを、他を圧倒する走力で登り切ったのです。正に「山の神」の尊称に値する素晴らしい選手たちです。

ところで、この「山の神」、皆さまのお宅にもいらっしゃいますよね。
奥様方にお叱りを受けるかも知れませんが、ご家庭における「山の神」とは、一般に口うるさくなった女房殿を称して使われる言葉なのです。
前置きが長くなりましたが、今日は「山の神」の由来についてご紹介します。

「山の神」は山を領する神として農・山・漁民などに広く信仰されてきた神で、ところにより男神又は夫婦神とされていますが、一般には女神であると考えられています。
この女神様は非常に恐ろしい神様で、機嫌をとるのが難しく、嫉妬深くて醜いなどと伝えられていることから、家庭における「山の神」は、これを自分の女房に当てはめたのだそうです。
言語学者で民俗学者の金田一京助博士も、古代の田楽舞に出る「里の神」は美人で、「山の神」は醜いので、自分の奥さんを卑下して言っている、としています。

室町時代から江戸時代にかけての民話を集めた『御伽草子』(おとぎぞうし)には、山の神がオコゼ姫に求愛する話があるそうです。
また『本朝食鑑』にも、もし海が連日の時化で漁の出来ない時には、漁師がオコゼを山の神に供えて「風が穏やかに波が静かで、釣網の便あらしめたまえ」と祈ると、翌日、海上の風波は必ず収まり、漁の獲物が多くなると記されています。

 古川柳に、 「山の神 オコゼばかりを 食につけ」 があります。

信仰されている「山の神」はオコゼと言う醜い魚を好むと言われ、それを供えて神の恩恵を受けようとする風習が山民の間には広く見られるようですが、ご家庭の「山の神」様は如何でしょうか?
年輪を重ねるにつれて色香も優しさもどこへやらと変貌しないように、いつまでも美しく優しい「山の神」さまでいて欲しいですね。