リキデンタルオフィス 医療関係者向けブログ

オリジナルHP: http://rikidental.client.jp/

私の日常臨床 Vol.75-1

2024-12-26 07:45:59 | Weblog

今回提示する症例は受診時45歳の女性。
主訴は、右上がしみて痛く、左側の歯が痛くて全然噛めない。
受診時も他院にて通院中で、その歯科では右上6、左上7、左下6は知覚過敏と診断され
月3回ペースで毎月しみ止めを塗ってもらっているとのこと。
左側の痛みに関しては、左上6は問題ないので、左上7が痛みの原因の疑いがあるため
根管治療(抜髄)をした方がよいといわれたらしい。また痛みに関して、原因究明のため
紹介状先の大学付属病院歯科にかかるも、原因がはっきりしないと言われたらしい。

当院で口腔内の診察検査を行った。2次カリエスが散見され、顎生理機能をみると
開閉口運動は上下に直線的にスムーズで45mm前後の開口量はあるが、
主訴の症状だけでなく左側の偏頭痛の症状も存在することが確認された。そこで、
咬合診察をふくめた徴候と所見から判断すると、主訴の内容は理解できる症状である。
それゆえ冷水痛がおこる部位に沁み止め処置は効果が殆ど無いため、原因除去を行う必要がある。
そこで私の診断と通法の手順によって
まず暫間的な処置を行ったところ2週間ほどで、症状の半分以上は改善された。
その後、当院の“総合的な”基本治療を行い、
当院が判断した『問題点』に対しての処置が終わり、
主訴の悩みは勿論のこと、それ以外の問題も改善された。
ちなみに左上7は抜髄を行う必要はない。
現在最終的な処置を行っている。(患者は保険診療希望なので全てその内容で処置)
もうすぐ治療が終わるので、その後はまたここに提示する。

さて、本症例の患者の悩んでいた主訴は
何が要因だったのか また、
そこから何を考え、どう対処しなければならないか
年末年始の休み期間中にいろいろ考えてみてください。
それでは皆さま 佳いお年をお迎えくださいませ


2024年12月8日 顎内障の勉強会

2024-12-09 08:07:46 | Weblog

先週末は当会で顎内障の勉強会を行った。
本来、師匠の西川洋二先生が講義を行う予定であったが
師匠の急な所用があったため
PGI本会会長の池上先生と私から
顎内障の治療の流れを症例発表形式で提示を行った。
また、PGIのスタンスで行う総合歯科治療についても
幾つかの症例にて解説を行った。
参加された先生方の明日の臨床に少しでも
役に立てれば幸せに思う。

池上先生の長野からわざわざのご参加と発表には
感謝するばかりである。


私の日常臨床 Vol,74

2024-11-22 08:01:25 | Weblog

今回は、左下7の腫れと咬合痛が主訴の症例
歯冠と歯根が破折していたらしいが、
前医では同歯に対して矯正用のバント冠で歯冠を固定して
咬合面からコンポジットレジンで修復していたが
同処置後も痛みは変わらないとのこと。
当院受診時、同歯は動揺1以上あり舌側根尖相当部に腫脹がみられた。
全体的な口腔内診察検査により、要根管治療歯なども多く
問題が多い口腔内であったが、顎機能は正常であった。

主訴の歯に関しては、根破折に対して口腔外で修復して再植を行った。
また反対側7の近心頬側根も口腔外で根切を行い再植を行った。
他部位の歯に関しても基本治療を行い、修復補綴処置を行った。
全て保険診療でカバーできる治療である。

本症例は基本治療による歯の保存が課題である。
また、咬合に関しても慎重な配慮を行っている。
なぜならこの様な事例の偶発症は、口腔内の環境から
曖昧な咬合接触関係では危険ということが一目瞭然と分かる。
このことは左右第二大臼歯の病因が物語っている。
そのため矯正治療が必要な事例と思われがちだが、当院の判断では
矯正治療は患者から審美的要求がないのであれば
まったく必要がないと考える。これにも明確な理由がある。

もし治療プランとして
・下顎両臼歯を抜歯してそれぞれにインプラント
・矯正治療を行い、犬歯ガイドによる臼歯ディスクルージョンを獲得する
といった治療を行うのであれば、オーバートリートメントである。


2024年11月12日 PGI名古屋月例会

2024-11-13 06:30:16 | Weblog

今月のzoom月例会は前岡先生が担当
力のコントロールについて苦慮した症例の10年間を追った内容。
演題の内容よりも驚いたことが、基本治療の質の高さであった。
卒後3年目の時から考えた病因とそれに対する処置の
丁寧さは若手の先生へのお手本だけでなく、
惰性の臨床を行っている歯科医への警鐘になる内容であろう。
討論も非常に盛り上がり、本年度最後の月例会に
ふさわしいプレゼンであったと思う。


2024年11月10日 顎内障の勉強会

2024-11-11 07:37:53 | Weblog

先週末は当会の勉強会
私の師匠、相模大野開業の西川洋二先生による
顎内障がテーマであった

今回は開咬の症例を、矯正治療を考える前に
まず試みるべき処置についてきめ細かい説明が
一番最初にされていた。
この西川式治療法は間違いなく学術の世界、
特に矯正の分野では衝撃的な内容である。

この鮮烈な内容のあと、顎内障の知るべき知見と
対処法についても分かりやすくご解説いただいた。
今回も非常に充実した時間であった。

 


2024年10月20日 矯正治療 勉強会

2024-10-21 07:35:52 | Weblog

先週末は当会の勉強会
銀座で開業されている野寺義典先生による講義。
顎機能と調和をめざした矯正治療をメインに
矯正学的観点からみた歯周組織について
MFTにおける我々が理解するべき舌のメカニズム、
アライナー矯正など、盛りだくさんの内容であった。
昨年もアップデートされた内容が多かったが
今回は昨年以上にアップデートされていて驚いた。

質疑も臨床に即した疑問の解決が多く
密度が濃い勉強会であった。


2024年10月6日 PGI名古屋秋例会

2024-10-07 08:02:09 | Weblog

先週末は当会の秋例会が行われた。
基調講演に大垣市ご開業の田中勝治先生にご登壇いただいた。
顎機能を考えた矯正治療というテーマにて
顎位と咬合を十分に考えた矯正治療について
矯正分野における科学理論とご自身の臨床に対する考え方と
アプローチ法を非常にきめ細やかにご解説くださった。
またアライナー矯正についての問題点と利点も
非常に分かり易くご解説いただけた。
矯正専門医も数人参加されていたが、ベテランの専門医ですら
非常に興味深く勉強になったと喜んでおられた。

会員発表も今回の発表者皆、興味深い症例を提示されており
こちらもディスカッションが非常に充実していた。

また今回はPGI代表の西川洋二先生からも
特別講義があり、さらに内容が盛り上がった。


2024年9月29日 予防歯科勉強会

2024-09-30 07:36:54 | Weblog

先週末は当会の予防歯科の勉強会を行った。
多くの歯科衛生士さんにも集まっていただき
満席の状態であった。
今年の参加者も皆、まったく寝ることなく楽しそうに
当会の予防歯科の考え方についてきいてくれていた。

今回は少しアップデートしてる内容もあるが
巷で触れられていない内容ばかりだったらしく
感動してくれてた人もいた。
休み返上で参加された皆さんが、
翌日の臨床に活かしてくれることを願う。


かどい歯科クリニック

2024-09-26 08:01:03 | Weblog

当院に3年ほど代診できていた門井先生が
来月10月1日に名古屋市中川区で開業される。
昨日、彼の医院にお祝いを持っていきがてら見に行ってきた。
こじんまりとしているが、よく考えられた院内配置と
意気込みが感じられる設備。心地よい空間であった。

彼は非常にまじめな性格であり、勉強熱心な先生である。
そして当院の考え方と治療を熟知されているので
当院の概念を反映した臨床を実直にしてくれると思う。

彼の活躍と多幸を心より願う


私の日常臨床 Vol.73

2024-09-23 07:42:48 | Weblog

症例は初診時76歳女性 主訴は差し歯がとれた。
所見としては左上3の補綴物がコアごと脱離している状態であった。
全体的な口腔内所見から左上3の問題は局所的な問題ではないと判断して
前医では1週間ほど前に治療が終わったとされていたが
全体的な基本治療と咬合治療が必要な状態であった。

本症例の課題としては、パノラマレントゲンからも分かるように
咬合力が強く、力のコントロールに十分に配慮しなければならない事例である。
上顎の欠損補綴治療を計画するとき、補綴設計は色々考えられると思う。
患者は部分義歯は避けたいらしい、しかし、保険治療ではブリッジができない歯式である。
患者側からは自費治療でもいいから最善と思われる方法を というが
インプラントは論外として、コーヌスは着脱を本人や家族ができるかが心配で勧めたくないし、
ブリッジを考えても、ジルコニアBrは私なりの理由があり選択肢としてはない。
結局、担当する技工士さんと討論を重ね、PMFブリッジにて補綴治療を行った。
このブリッジ設計において本来であれば、Key and Wayを付与することが望ましいが
あえてこれを付与しなかったことにも理由がある。
またこのような症例は、上下顎の安定した咬合を獲得するには、非常に難易度が高い。
治療後、患者さんから非常に高い満足を得られたが、
経過を注視しなければならない症例である。

所感としては、安易な思考のもとで咬合高径を挙げることや
強度ばかりに注目した補綴を行うことはリスクを必ず伴う。
この理由は初診時の口腔内をじっくりみれば理解できると思う。


2024年9月10日 PGI名古屋 月例会

2024-09-11 08:47:43 | Weblog

昨日は当会の月例会
今月の担当は鳥居先生
インプラント治療に関して、治療後の咬合を考えた
インプラント補綴の実際と考察について
臨床例を交えて解説されていた。
内容は完全に学会向きであり、学会で行うとしても
かなり質がよい講演内容であろう。
というか、本来学会もこういう内容のものばかりで
固めた方がよいと思うのだが…
彼は今後注目される歯科医師になると確信する。


2024年9月7,8日 ICOIジャパン

2024-09-09 07:51:15 | Weblog

国際インプラント学会に参加するため先週末は博多へ。
九州大学のキャンパスにて行われたが
国立だけあって広大な敷地である。

今回の内容で少し驚いたことが、先だって寄稿した私の論文の中で
AIが診断まで行うようになる時代がくるかも、と記していたが
実際にAIがもう診断できるようになっているみたいであった。
そして、米国では人間の手のブレやミスがないということを掲げ
ロボットアームが患者の口腔内にインプラント手術を行う試みが
進行しているらしい。
なんてこったな時代が到来しているものである。

今回の学会では他に、移植や再植のことをトピックにあげられていた。
インプラントばかり考える前に歯の保存についても考えるべき、という内容。
このブログを古くから閲覧してくれている方々ならご存知の通り
私は10年以上前から、移植や再植については個人的見解や予後などを
色々紹介していたこともあるので
このテーマがインプラント学会で取り上げられることは大いに賛成である。
今後もこの様なトピックスをどんどん取り入れてほしいと願う。


咬み合わせの科学44巻1号

2024-08-31 07:55:59 | Weblog

今月の学会誌に私の寄稿が掲載されている。
これまで多くの学会や講演会で、演者の講演内容を拝聴してきたが
歯学史や原典の引用を提示されていることが結構多い。
しかし、提示されていた原典や歯学史の系譜などの内容に疑問が多かった。
また何年か前からPGI名古屋の勉強会で、メンバーにいろいろ
正しい歯学史などについて話していたこともあり
私が参加していない講演会や研修会で同様のことがあったと
メンバーから聞くことが多かった。
そのため、未だに曖昧に扱われている歯学史というものを
明確にした方がよいと考え、そのきっかけとなれば、という思いで執筆した。
本当はまだまだ記すべき重要な事柄はあったが
投稿文字数の制限があったことが心残りであった。

掲載直後に、数人の諸先輩からご連絡をいただき
感想と高い評価を受けたことは、私自身が驚いた。
しかし大変光栄であり、寄稿してよかったと思う次第。

30代40代の先生方、特に講演をよくされる先生方には
元を正す意味もあり読んでいただきたい。


2024年8月19日 コンポジットレジンと接着

2024-08-19 07:33:39 | Weblog

先週末は当会の勉強会。
友人である須崎明先生から主にコンポジットレジンと接着について
臨床に非常に役立つ話をいただいた。
最新の知見や否定されたことなど、多くの大学と交流のある須崎先生ならではの
そして今年もアップデートされた貴重な内容が多くあった。
CR治療のセミナーにいろいろ参加されてた歯科医も
須崎先生の内容が、見る視点、考えなければならないことが
他とあまりにも違うことで驚いておられたが、あまりに臨床的なので
質疑も非常に盛り上がっていた。


私の日常臨床 Vol.72

2024-08-06 08:22:13 | Weblog

あまりにやることが多すぎてすっかり更新を忘れていた
今回は症例を提示しよう。

症例は初診時33歳男性
主訴は崩壊した左上7の痛みと、右下6の頻繁におこる腫脹と
左下の残根部をなんとかしてほしいということであった。

全体的にハイジーンの状態もよくなく、
他の部もカリエスが散見される口腔内である。
治療計画としては、まず基本治療を行い、ハイジーンの改善と維持を確認後
保存が厳しい左上7と左下6部に関しては埋伏智歯の移植、
右下6に関しては再植を行った。
また左下4のC4も抜歯後、このスペースは小矯正で対応した。
術前術後の口腔内とX線画像を提示する。

この症例の考察は、年齢的にインプラントによる治療は早いと考えた。
そして埋伏しているが智歯を活用した移植治療の方が、欠損補綴治療の
選択肢としては優先順位が高いと考える。
また、問診により分かる患者背景(子供さんがまだ小さいので、教育資金など)も考えると
なおさら費用をかけさす歯科治療を提案するべきでない。
この症例の場合は、保険治療で移植が行えるので、
患者の経済的負担はかなり抑えることができた。

当院の臨床実感では、ハイジーンのコントロールが上手くいけば
充分にこの症例は安定すると考える。(右下6は、数年は持たせたい)

欠損部にインプラントをすぐに考える治療計画は
賛成できない私である。。。